カメラマンの森山大道が柳田国男の「遠野物語」に触発されて撮り下ろした写真集です。
森山氏は幼少期、父親の仕事の都合で転居・転校を繰り返し、お盆に帰るような田舎がありません。
自分の「原風景」とは何ぞや?
その問いへの答えとして、半分シンボリックな感覚で漠然と「遠野」に憧れていることを彼自身が書いています。
訪れた遠野は観光崩れしておらず、人々が黙々と生活を続ける日本の田舎町でした。
ひたすらシャッターを切り続けた写真は、その生活を切り取った断片です。
・・・残念ながら、写真にあまり魅力は感じませんでした。
文庫本を出張中の電車の中で斜め読みしたので、写真が小さくて迫力が十分に伝わらないのかなあ。
この本は「フォト・エッセイ」の形をとっています。
写真で勝負するプロが文章で自分の作品を解説するのはタブーじゃないんだろうか、と思ってしまう私です。
大好きな村上春樹氏でさえ、彼が自分の作品を語るインタビューは見たくも聞きたくもない人間なので(苦笑)。
実は私もシンボリックな「遠野」に憧れる一人で、その点では森山氏と同じ穴のムジナです。
学生時代は「民俗研究部」というサークルに属し、日本の辺境に生活する名も無き人々に自分のルーツを探そうともがいていました。
だから、それ以上のモノ、その先にあるモノを求めてしまうのかもしれません。