39歳で夭折した津軽の写真家、小島一郎氏の写真集です。
発行はなんと「青森県立美術館」。
津軽の風景をモノクロ写真中心に収めています。
なんといっても暗雲垂れ込めるような空の表現が特徴的で、暗室での現像の際「覆い焼き」という技法を使っているそうです。
自然の厳しさを演出するその表現は、絵画的ですらあります。
もう一つの特徴は、写真の中の人物がほとんど背中を向けていること。
当然、喜怒哀楽の表情は読めません。
しかし、影となった人物は、特定の個人ではなく「その時代にその場所で生きた人々」という普遍性を帯びる効果を醸し出しています。
厳しい雪国で黙々と農作業を続ける人々。
生きることの辛さを物語る背中。
日本の歴史を底辺で支えてきたのは、間違いなくこのような名も無き人たちです。
祖先であり、私であり、あなたであり、未来の子ども達でもあります。
私自身、その昔学生時代を津軽で過ごし、自分のルーツを探すべくもがいていました。
小島氏はその答えを写真で示してくれたような気がします。
私にとっての「原風景」。