知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「律令祭祀制」と「平安祭祀制」と「一宮制」

2018年01月10日 06時46分20秒 | 神社・神道
氏神さまと鎮守さま〜神社の民俗史〜」(新谷尚紀著、講談社選書、2017年発行)第二章より。

 古代日本における神祇祭祀には国が定めたルールがありました。

律令祭祀制)7世紀末〜8世紀初頭の天武朝〜大宝年間にかけて形成され、神祇令を中心とした。
平安祭祀制)9世紀〜10精機にかけて新たに形成された。

 この二つは時代的な推移の中でしばらくは共存・並行しながらも、やがて前者から後者へと移行したとのこと。
 他の本でも、昔々の地方の大きな神社は「官社」として中央からもの(幣帛)をもらうとともに支配を受けていたと読んだことがあります。時代とともにそれが少しずつ崩れ、地方では「一宮制」が広がっていったのです。

 群馬県では「群馬総社」という地名がありますが、これは平安時代に成立した神拝制度の名称が残っているのですねえ。

「律令祭祀制」の特徴
①神祇官による運営
②年中4度の祭祀、つまり祈年祭・月次(つきなみ)祭・新嘗祭が中心
③全国の官社を対象としてその祝部(はふりべ)が朝廷に幣帛(※)を受け取りに来る幣帛班給制度があった。

※ 幣帛(へいはく):
 神道の祭祀において神に奉献する、神饌以外のものの総称である。広義には神饌をも含む。みてぐら、幣物(へいもつ)とも言う。「帛」は布を意味し、古代では貴重だった布帛が神への捧げ物の中心だったことを示すものである。
『延喜式』の祝詞の条に記される幣帛の品目としては、布帛、衣服、武具、神酒、神饌などがある。
幣帛は捧げ物であると同時に神の依り代とも考えられていたため、串の先に紙垂を挟んだ依り代や祓具としての幣束・御幣、大麻なども「幣帛」と呼ぶ。
Wikipedia


「平安祭祀制」の特徴
・国家祭祀と天皇祭祀とが重なり合い、やがて天皇祭祀の性格が濃厚となる。
・律令祭祀制のもとでの全国の官社を対象とする幣帛班給制度から、新たな平安祭祀制のもとで京畿を中心とする十六社やのちに二十二社など特定の有力大社を対象とする奉幣制度へと転換した。
・旧来の祈年祭や新嘗祭とは別の臨時祭が重視されるようになった。
・二十二社の中の有力神社である賀茂社や石清水八幡宮などへの天皇の神社行幸が盛んに行われるようになった。
・天皇祭祀の対象となった中央の二十二社が「王城鎮守」と位置づけられるようになった。

「一宮制」の成立
 奈良〜平安時代に地方諸国の神社で成立していった制度。
 古くは律令祭祀制のもとで地方の官社への幣帛班給制度(班幣制度)が行われていたが、遠隔地の神社の中には幣帛を受け取りに来ないところもあった。そこで798年に全国の官社を二系統に分けて、神祇官から幣帛を直接受け取る官幣社と、諸国の国司を通して幣帛を受け取る国幣社とに区別することとした。国司は朝廷から任命されて痴呆の任地へ赴くと、その国内の有力神社への巡拝と班幣を行うこととなり、それが「国司神拝」と呼ばれるものであった。
 その後、平安中後期になると、国司の巡拝は任国内の有力な神社から順番に行われるようになり、その国司が巡拝する順番によって一宮、二宮、三宮と呼ばれるようになった。
 それがやがて、巡拝を煩わしく思う国司の場合、国内の有力な祭神を一つの神社に勧請して集めて祀り、その神社に参拝することで神拝を済ませることとして、そのような神社が惣社(総社)と呼ばれた。
 このような祭祀形態は一方で、任国に下向しなくなった国司に代わって地方行政の中心的な存在となった在庁官人たちにとって、その自らの神社祭祀の対象であり権威の象徴としての意味を持つこととなった。

平安朝の神祇祭祀・神社制度のまとめ
 以上より、平安京の天皇と摂関貴族にとっての中央の二十二社制と、地方国司と在庁官人にとっての一宮制という、国内神祇祭祀の上での相互補完の体制ができあがり、二十二社が「王城鎮守」、一宮が「国鎮守」と呼ばれた。
 鎮守や鎮守神とは、中世日本の神祇体系の中で成立していった神々の呼称であり、その意味での国家鎮護の思想の元での位置づけを表す呼称なのであった。

「鎮守」の意味の変遷・拡大
 鎮守とは、中世社会で生み出された呼称と概念であったが、その後、近世社会では意味を広げながら流通していった。江戸時代の記録によると、郷村で祀られている神社のことを意味する呼称となり、郷村の氏神とほぼ同じ意味の呼称となっていった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 村の神社における「氏神」と... | トップ | 神社の歴史的変遷と多様性 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

神社・神道」カテゴリの最新記事