知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「ご近所の神様」

2010年09月23日 21時32分16秒 | 神社・神道
久能木紀子著、マイコミ新書(2008年発行)

著者は「神社ライター」という肩書きの持ち主。東京中の神社参拝をクリアした強者です。
有名神社だけではなく、身近にある神社の解説も試みた内容です。

残念ながら、目からウロコが落ちるような情報はあまりありませんでした。
既に何冊か神社に関する本で読んでいるためかもしれません。

そんな私におぼろげに見えてきた「神社」像。

古来、日本の神社に祀られる神様は「自然の驚異」の類でした。
災禍をもたらす自然力を祭り祈ることで人間の益にもなり得ると信じたのです。
そこから派生して、大きな力を持った人物の怨念を鎮めるために神として祀るパターンも登場しました。菅原道真や平将門がその例ですね。

古事記・日本書紀に登場する神様達も祀られていますが、これは、天皇家がその正当性を説明するために神社を政治利用した結果と捉えることもできます。
時の権力が宗教を利用することはよくあることです。
明治・大正・昭和時代は「国家神道」として政治家が天皇を現人神に祭り上げ、「天皇のために命を捧げる」というカラクリを作り出して戦争を正当化したことは記憶に新しい。
というわけで、神話上の神様や実在の人物を祀った神社はどうも私にはしっくりきません。

神社の始まりの頃、社はなく場所だけ決まってましたらしい。
そこに社が造られるようになったのはインパクトのある伽藍を有する仏教の影響も指摘されています。
日本最古の神社と云われる大神(おおみわ)神社には本殿(神様が鎮座する場所)がないそうです。
では神様がいないか、というとそうではなく、後ろに控える三輪山そのものが御神体なのです。

最近気づいたのですが、里山には「山神社」という社が点在します。
「山」という自然を神様として祀った最も原始的な神社です。
その素朴さが好ましい。
1000年前からこの地で畑仕事・山仕事に汗を流した日本人が、この神社へ祈りを捧げてきたのですね。

先日訪れた栃木県佐野市の「丸嶽-山神社」。
こぶケヤキと呼ばれる巨樹の勇姿が見事ですが、本殿周囲の薄暗い鎮守の森の中で、翁顔をした神様達が談笑しているようでした。

「千と千尋の神隠し」の世界ですね。


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