巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

「”タヌキ”の目線で考えよう」(NHK-BS)

2014-02-24 08:46:20 | 
副題:~福島・安達太良山 鳥獣保護センターの日々~
解説:
 福島県のほぼ中央、安達太良山の中腹にある福島県鳥獣保護センター。このセンターを支えるただ一人の獣医師・溝口俊夫さんは、20年以上に渡って野生動物の命と向き合ってきた。傷つく野生動物を何とか減らしたいと溝口さんが続けてきたのが、動物の交通事故の原因を探るユニークな活動だ。そのノウハウは今、道路のデザインにまで生かされようとしている。番組では、野生動物との共生を目指し奮闘する獣医師の日々を追う。

 随分昔に録画していた番組を整理するつもりで視聴しました。
 タヌキやハクビシンなど、なかなかお目にかかれない野生動物が現実に出てきて驚かされたのが一つ。
 また、保護して治療して元気になったものの、畑を荒らす害獣と見なされて自然に帰すことができず、保護センターで一生を終える動物が少なくないことを知り、やりきれない思いを抱きました。

 私の住んでいる地域で、最近新たな道が造られて便利になりました。
 ところが、そこに野生動物が車にはねられて死亡している姿に遭遇する機会がが明らかに増えました。
 「きっと獣道を道路が寸断したんだろう」と気になっていた私。
 番組に登場する溝口先生は、交通事故を分析して獣道を再開通させるトンネルを造ることにより交通事故を減らす努力をし、実績を残してきたことが紹介され、こちらも新鮮な驚きでした。

 番組は東日本大震災前の収録です。
 原発近くの地域の映像も修められていましたが、今、保護センターの動物たちはどうしているのかなあ。
 野生動物は人がいなくなり、車が走らなくなったので昔のように野山を駆け巡っていることでしょう。
 チェルノブイリの周辺は野生動物の楽園になっていると聞いたことがあります。

「森の聞き書き甲子園」by NHK

2013-01-10 22:57:23 | 
~番組紹介より~

森の賢者 海の哲人 ~高校生が出会った魔法の言葉~」(2013年1月3日)
全国の高校生たち100人が山や海で仕事をする「名人」を訪ねる

 「これから何を手がかりに生きていけばいいのか」「自分らしい仕事って何なのか」といった答えの見つからない問いを抱えた高校生たちが、大自然に向き合って生きてきた古老たちを訪ね、その言葉と人生にふれることで成長していく姿を追います。
 全国の高校生たち100人が、山や海で仕事をする「森の名人」「海の名人」を訪ね、その知恵や生き方を一対一で聞き取り、文章にまとめる活動が10年前から行われています。この「聞き書き甲子園」には、これまでに高校生1000人が参加しました。人生の横綱ともいえる名人たちは、高校生の心の底にある言葉にならない複雑な思いに対し、経験に基づく地に足のついた言葉で応じ、世代を超えた対話が行われます。古老の言葉は、高校生のその柔らかい心に、時にしみいり、時に摩擦を生みます。「五十年やっていても分からないことばかり、いまだに一年生よ」「仕事は好ききらいではない。そこにあるから、やることをやる。」
 今年も、富山県で合掌造りの屋根をふく80歳の名人や、新島の追込漁の老漁師、木曽のおけ作り名人を、東京や福島など各地の高校生が訪ねました。心温まる出会いの時間、珠玉の言葉の数々を、これまで「聞き書き甲子園」に参加した高校生たち1000人が作文につづった感動を織り込みながら、お届けします。


 以前から気になっていた番組ですが、今回録画してようやく視聴できました。
 いろんな達人が登場しますが、今回一番印象が強かったのは北海道の木こりのおじいさん。80歳を過ぎても現役で元気に山に登り木々と対峙しています。
 迷いの最中の高校生が気持ちをぶつけると、それを受け止めつつ淡々と話し始めます。その話し方が味わい深く、古老から昔話の語りを聞いているイメージなのです。一言一言に人生を重ねた重みを感じました。ああ、こんな人が本当にいるんだなあ。
 おじいさんはその翌年に亡くなり、本当の昔話になってしまいました。
 映画「タイマグラばあちゃん」に出てきたおじいさんを思い出しました。


参考
 「聞き書き電子図書館」が解説されています。あとでじっくりゆっくり読んでみたいですね。

ねらわれる各地の「ご神木」

2012-12-30 08:13:30 | 
 四国で許しがたい行為が行われています。
 黒幕は金に目がくらんだ木材業者でしょうか・・・?

ねらわれる各地の「ご神木」(2012.11.26:NHK)
神社の境内に立つ、「ご神木」。地域の信仰の対象として大切にされ、中には樹齢数百年というものも珍しくありませんが、今、そのご神木が各地で不自然な枯れ方をするケースが、四国を中心に相次いでいます。
ご神木に何が起きているのか、松山放送局の大西由夏記者と田畑佑典記者が取材しました。

“ご神木が枯れた”
ことし7月に愛媛県東温市で、ご神木が枯れているのが見つかりました。
約1300年の歴史を持つ神社「総河内大明神社」の境内で2本のヒノキだけが枯れていたのです。
いずれも樹齢500年を超え、幹周りは4メートル前後の大木で、地元では当初、老木なので寿命で枯れてしまったのではないかと考えられていました。
ところが約1か月後、神社の管理を任されている地域住民のもとに、ある木材業者が訪ねてきました。
業者は「枯れた木は危ないから早く切ったほうがいい。自分たちが伐採して買い取ろう」と話したといいます。
ご神木を見守ってきた地域の人たちは慌てました。
“ご神木が倒れるかも”という懸念や“何とかしてあげたい”という思いに加えて、“自分たちには木を切リ倒す費用を出せるのだろうか”という不安もあったそうです。
地域で話し合った末に、2本のご神木を550万円で業者に売却する契約を結びました。

問題発覚“木に複数の穴”
しかし木の伐採直前に大きな問題が発覚しました。
木の根元に、直径5ミリほどの穴が複数見つかったのです。
不審に思った神社側が警察に相談すると、穴は人がドリルのようなもので開けたものだと分かりました。
さらに警察の捜査で、穴の中から除草剤に含まれる成分の一種、「グリホサート」が検出されたのです。
総河内大明神社の綿崎祥子宮司は、「そんな事をする人がいるとは、ことばにならなかった」と話します。

誰が?何のために?
ご神木は、誰が何のために枯らしたのか。
現場を独自に調査した愛媛県林業研究センターの豊田信行さんは、木材に詳しい人物が関わっていると推測しました。
根拠は木に彫られた穴の深さが4センチほどだったことです。
木は表面から4センチほどの部分に、根が吸った水分を運ぶ管が通っています。
穴はその管まで的確に掘られ、そこから入れられた除草剤が枝へと行き渡り、枯れたとみています。
このような方法をとると、枯れるのは葉や枝だけで幹の中心部に影響はなく、木材としての質は下がらないといいます。
県林業研究センターの豊田信行さんは、「効率的に薬を入れようとすれば、4センチ前後入れる。木を扱っている人々には常識的に知っている話です」と指摘しています。

広がるご神木被害
取材を進めていくと、ご神木が枯らされる被害は愛媛県内の別の神社でも起きていたことが分かりました。
この神社には以前からご神木を売ってほしいと複数の業者が訪ね、去年はご神木4本が枯れて2つの業者に売却されました。
これらの木でも同じような穴が見つかっていたということです。
さらにこうした被害は愛媛県だけにとどまらないことも分かってきました。
NHKの取材では、不自然な枯れ方をしたご神木は四国を中心にここ10年で、少なくとも25本に上っています。

業界の内幕“かつては九州でも”
相次ぐご神木の被害。
木材業界の事情に詳しい人物に話を聞くことができました。
この人物によると薬剤で木を枯らす手法は持ち主に木を手放させるためのもので、かつては九州などでも見られたということです。

大木は高値で取り引き
ご神木にいったいどれほどの価値があるのでしょうか。
取材班は、奈良県にある大木を専門に扱う木材市場を訪ねました。
国内では木材価格が低迷していますが、直径1メートルを超えるような大木はほとんど出回らず、高値での取り引きが続いていました。
奈良県銘木協同組合の林秀樹課長は「去年売れた中には一本単価で600万、700万という木もあった。もっと太いものになればさらに価値がある」と話しています。
質のいい大木は、歴史的建造物の再建や文化財の修復などで常に一定の需要があります。しかし国産の大木はすでに多くが伐採され、もはや神社や寺の境内にしか残っていないといいます。

難航する捜査
警察の捜査は難航しています。
枯れた木から検出された成分を含む除草剤は市販のもので誰でも手に入れられることから、枯らした人物の特定は容易ではないとしています。
また目撃証言などもありません。
私たち取材班も多くの関係者に重ねて取材しましたが、最初にご神木の伐採と買い取りを持ちかけた木材業者を含め、いずれも不正への関与を明確に否定しました。
何者かの手によって枯らされた愛媛県東温市のご神木。
契約では年内に伐採されることになっていますが、神社側は一連の経緯が不透明だとして、伐採に「待った」をかけています。

足りない木材・どう守る日本建築
一方で、社寺仏閣の大修理や再建に使う大木が国内にはほとんど残っていないという悩ましい問題もあります。
国宝の阿修羅像で知られる奈良県の興福寺では現在、江戸時代に焼失した「中金堂」という建物の再建工事が進められていますが、国産ではなくカメルーン産の木材を輸入して使っています。
今回のご神木を巡る騒動は、世界に誇る日本の木造建築を今後も守っていくことができるのかという、大きな問題も投げかけています。


□ 樹齢300年のご神木が枯らされる(YouTube)(NNN)

■ この罰当たりめ!ご神木に除草剤注入して「枯れた樹危ない。買い取る」と業者(2012/12/26:J-CAST)
 樹齢数百年の神社のご神木を次々と狙う罰当たりな事件が四国を中心に多発している。愛媛県東温市の総河内大明神社の境内にある樹齢500年以上というご神木2本が、枯木と診断され26日(2012年12月)伐採される。綿崎祥子宮司によると、2本のご神木の根元にドリルようのもので5、6か所の穴が開けられていたので調べたところ、直径5ミリ深さ4センチの穴から除草剤が検出されたという。
 宮司は「悲しいを通り越して、悔しいとか空しいとか言葉にならない」と憤る。近隣住民も「このお宮さんは、あの2本のご神木で持っているようなもの。ご神木がなくなるなんて考えもしなかった」と嘆く。

愛媛、高知など四国各地で頻発
 罰当たりの犯行は総河内大明神社だけではなかった。やはり愛媛県の西条市にある大宮神社でも昨年4本のご神木が枯れて伐採された。十亀博行宮司は「葉っぱだけ見ると寿命なのかなと思ったが、木の根っ子に穴が開いていることが分かり、なんと罰当たりなことをするものだと思いましたね」という。
 2つの神社に共通していたのは、ご神木が枯れるタイミングを見計らって木材業者が現れ、「枯れた樹は危ない。自分たちが伐採し買い取る」とご神木を引き取っていったことだった。事件は高知県でも頻発しており、ここ数年でご神木以外の木を含めて14件が確認されている。
 枯れたご神木を調査している日本樹木医会高知県支部の藤本浩平博士は、「養分を木の中へ送るのは縁の部分4センチのところで、そこに除草剤を注入されると2~3か月で枯れる」という。

樹齢数百年の大木―希少価値で高値取引
 背景には樹齢数百年の大木は木材として非常に貴重で、とくに信仰の対象であるご神木となると、台風で倒れでもしない限り伐採されることはない。希少価値のため、寺や一般建築で根強い人気があるという。
 コメンテーターの萩谷順(法政大教授)は「養分を送る樹皮の裏側に除草剤を入れれば、樹の真ん中はしっかりした状態が残る。それを知っているプロの計画的犯罪で、罰が当たるといいなと思う」と顔を曇らせる。
 神社は樹齢数百年のご神木も含め、日本人の心のふるさとである。ここまで落ちたかと残念でならない。


 ・・・折しも南海トラフが話題になる昨今・・・天罰(地震/津波)が下らなければいいけど。

「緑の防潮堤」始動

2012-06-09 05:57:22 | 
 前回紹介した宮脇昭先生の「緑の防潮堤構想」が現実のものとなりました;

東日本大震災:森の防潮堤へ第一歩 岩沼で植樹祭、市民1000人が苗木植える /宮城
 毎日新聞 2012年05月27日 地方版
 東日本大震災の津波被害を受けた岩沼市が26日、がれきを混ぜて人工的に造った丘に木を植えて「森の防潮堤」を造るため、市空港南公園(同市空港南4)で植樹祭を開き、参加した市民ら約1000人がタブノキやカシ、ヤマザクラなど16種約6000本の苗木を次々植えていった。
 森の防潮堤実現に向けた実証実験で、岩手県大槌町に次いで2例目。植樹祭には防潮堤構想を提唱する植物生態学者の宮脇昭20+件・横浜国立大名誉教授のほか、構想推進を目的とした財団法人を設立した細川護熙元首相も参加した。沿岸約1キロの公園に市が築いた盛り土の丘は広さ約2000平方メートル、高さ約4メートル。土台の一部には市内で出た流木やコンクリート片などのがれきを使用している。
 政府はがれきのうち木質系については、メタンガスが発生するなどして廃棄物処理法に抵触する可能性があるとして、活用に難色を示している。同市は苗木が成長しても土台には十分な強度があることを検証したうえで、復興計画で「千年希望の丘」と名付けた構想を実現させたい考え。井口経明(つねあき)市長は「がれき活用を特例で認めてほしい」と話す。


 まだ特例の試験段階ですが、この活動が広がることを願ってやみません。
 ニュース番組で特集された宮脇先生の紹介動画がYouTubeで閲覧できることを知りました;
 「がれきで森を再生 84歳学者の闘い 森の力で被災地を救え!

クスノキが根付きました。

2012-06-06 21:23:39 | 
 小さなクスノキを移動させ植え替えてから数ヶ月・・・まわりの雑草を処理したり時々水を与えたりしながら見守ってきた苗木に新芽を見つけました。

 やった~。

 葉が広がると、はじめは黄色。
 さらに広がると黄緑色。
 そして緑色へ育っていきます。

 君は純粋にこの庭で育ったクスノキ第一号だよ。
 たっぷり太陽の光を浴びて、たくさん水を吸って、すくすく大きくなってください。

(2012.5.19)


(2012.6.8)

「鎮守の森」による防災林を

2012-02-26 10:02:30 | 
 東日本大震災で、沿岸の「防災林」としてのマツ林が根こそぎ倒れたことは皆さんご存じのことと思います。
 1本だけ生き残ったマツも枯れてしまいました。

 その際、生き残った樹木が注目されています。
 もともとその地域に自生する広葉樹(タブノキなど)です。
 特に「鎮守の森」として神社境内に植えられていたものは強く、神様を守りました。

 広葉樹は地中に深く根を伸ばすので、倒れにくい。
 一方、針葉樹は根の張り方が浅いので倒れやすい。
 砂浜のマツ林は景観は美しいけれど、実は津波対策にはなり得なかったのです。

 最近、自分の庭に植えたクスノキから落ちた種が芽吹いて苗木になったものを植え替えました。
 ほんの30cmの木ですが、根っこはゆうに50cm以上伸びていてビックリ。「大地に根を張る」ことを実感した次第です。



 うまく根付いてくれるといいのですが・・・。

 「鎮守の森」の著書で有名な宮脇昭さんが立ち上がりました。
瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る: 植樹による復興・防災の緊急提言
 がれきを埋め立てて土手を作り、そこに土地固有の広葉樹を植えるべしと指南しています。
 すると、根っこが伸びて土手を自然の強固な防波堤にしてくれる、がれき処理もできると一石二鳥。

 すばらしい!

 がれき処理は日本全国の市町村がその受け入れを躊躇している難題です。
 環境省には、そもそもがれきをその土地で活用するという視点がありません。
 凝り固まった認識を新たにして、対応していただきたいと思います。

 東北地方ではカキ養殖家の畠山重篤さんも活動しています。
 彼も「森は海の恋人」としてカキを育てるのは豊かな森であることに着目して植林を続け、東日本大震災で大打撃を受けた養殖業が、森の力で見事に蘇った自然の力を実感していると見聞きしました。

 「日本固有の広葉樹林による森の再生
 これは震災復興のみならず、日本再生のキーワードでもあると思います。
 「花粉が飛ばないスギ」を研究している場合じゃない。


※ 後日談(2012.3.20追加)
 上記内容が記事になりました。実際に行う方針のようですね。

がれきを防災林の土台に 仙台平野で6月にも着手(2012年03月19日:河北新報)

 細野豪志環境相は18日、宮城県庁で村井嘉浩知事と会談し、東日本大震災で発生したがれきを、仙台平野沿岸部に整備する防災林の土台として活用する方針を明らかにした。村井知事は「非常に有効な方法だ。自治体の負担も軽くなる」と協力する考えを示した。
 林野庁が仙台平野の海岸線数十キロで実施する海岸防災林復旧事業として、6月にも着手する。放射性物質や有害物質の安全性を確認できたがれきだけを活用し、盛り土に混ぜて土台を造る。細野氏は「従来の発想を超えた迅速な処理ができるのではないか」と述べた。
 細野氏は県内の廃棄物最終処分場についても、がれきや焼却灰を埋め立てて耐用年数が短くなり、自治体が処分場を拡充する場合、国が財政支援する意向を伝えた。環境省は広域処理の受け入れ自治体に対し、同様の財政支援策を打ち出している。
 会談終了後、村井知事は「(財政支援により)県内処理も相当進むのではないか」と評価し、「県としてもしっかりと責任を果たしたい」と語った。



原発事故により樹木も被曝

2012-02-06 07:18:58 | 
 福島原発事故の影響ははかり知れません。
 樹木達も被曝し汚染されているというニュースを目にしました;

福島の森林、樹木内部にも放射性物質 東京農大が発表
(2012年2月2日:新建ハウジングWEB)
 東京農業大学の林隆久教授(バイオサイエンス学科)は2月1日、福島県相馬地方の樹木の放射能汚染の状況について記者会見を行い、サンプル採取した樹木の内部から放射性セシウムが検出されたと発表した。サンプル調査のうち最も高い数値を示したのは、9月に南相馬市で採取したスギで、放射性セシウム濃度は1キロあたり2300ベクレルだった。
 同調査は、東農大の復興支援プロジェクトの一環として実施したもので、昨年9月から12月にかけ、南相馬市と相馬市、新地町の7地区で実施。スギやヒノキなど約30本からサンプルを採取した。各サンプルを年輪ごとに削り、それぞれの放射性セシウム濃度を測定した。
 放射性セシウムの濃度は、年輪ごとにばらつきがあり、9月に南相馬市で採取したスギの2011年の年輪からは、1キロあたり5430ベクレルの放射性セシウムが検出された。
 一方、サンプルのなかには、放射性セシウムが検出されなかったものもあったという。
 林教授は引き続き、樹木木部の放射性セシウムの動態解析や汚染された樹木の安全性の実験などを行っていくとしている。

 
 山の神様に申し訳が立たない・・・。

「鎮守の森」by 宮脇 昭

2010-12-31 10:14:10 | 
2007年、新潮文庫(単行本は2000年発行)。

”鎮守の森” のイメージは、近所の神社のイメージに重なります。
子どもの頃の風景は一変しているけど、神社と鎮守の森だけはずっと同じ姿を保ったまま。
そこは神様が鎮座する聖なる場所です。

著者は植物生態学者で宗教研究家ではありません。
そして、この本の内容も植物生態学から見た ”鎮守の森” となっています。
信仰という要素はほとんどなし(後半の曹洞宗住職との対談では出てきますが)。

彼が定義する ”鎮守の森” とは「ふるさとに木によるふるさとの森」。
これを「潜在自然植生」と呼んでいます。

単純ですが奥深い表現。
「ふるさとの木」とは戦後植林されたスギやヒノキではありません。
その土地の気候・土壌に合った樹木を指します。

私が知っている樹木はせいぜいスギ、ケヤキ、クスノキ、マツ、カヤくらいで、この本の出てくる樹木は名前こそ知っていますが実物のイメージが沸かないものばかり・・・自分って日本の樹木をほとんど知らないことに気づかされて愕然とした次第です。

さて、ドイツ留学から帰国後の彼のキャリアは、それを探すことからはじめました。しかし、日本の現状は・・・

国土の60%強が樹林で覆われているにもかかわらず、現地調査をすればするほど、自然の森・本物の森が少ないことを知り愕然とした。

そこで注目したのが ”神社境内にある木々” 。
昔からある森には「ふるさとの木」のヒントが隠されていたのでした。

膨大な調査の後、著者は日本の「ふるさとの木」を探し当てました。
鎮守の森には植生サイクルを大切にしてきた日本人祖先の精神が宿り、防災にも役立つ要素があることも指摘しています。

森の特徴は多様性。高木・亜高木・低木・下草の四層構造で、競争・共生の微妙なバランスの元、生態系を維持しています。山間部をドライブすると、よくモノトーンの木々を見かけますが、あれは戦後植林したスギです。それについては・・・

木材資源としての経済的な価値の追求も必要であるが、多様なふるさとの森にかわって高く売れると予測した針葉樹のスギ、マツ、ヒノキ、カラマツを背負うわ0年代から一斉拡大造林し続けた結果はどうであったか。ようやく伐採期に達したときには、外在に価格的に負けて切り出すこともできない。しかもスギは花粉を飛散させて春先に人々を悩ませている、また、マツは増えすぎたことに対する自然の揺り戻しのように、いわゆる松食い虫の被害を受け赤茶けた異様な姿、さらには葉が落ちた白骨状の無残な姿を全国土的にさらしている。

そして、彼は「ふるさとの森」を再生する行動に出たのでした。
神社仏閣の鎮守の森にとどまらず、新日鐵の工場周囲の森、大手スーパー「イオン」グループの店舗周囲の森造り・・・果ては日本から飛び出し、中国の万里の長城周囲に植樹と、とどまるところを知りません。

非常に興味深く読ませていただいた箇所を抜粋しておきます;

植物社会では生理的な最適域と生態的な最適域が違う。森林においては、好きな植物が好きなところに自生しているわけではない。ほとんどの植物は本来の生理的な最適域から少しずれた、少し厳しい条件下で、ガマンしながら、嫌なヤツとも共生している。これが最も健全な状態であることを地球上の植物社会は具体的に示している。

幼苗を上手に育てるコツは水をやりすぎないこと。やらなければ枯死するが、少し足りないぐらいにする。肥料もやり過ぎない。生物社会ではやや足りない状態が健全である。

・・・まさに人間社会でも通じることですね。


 メモ書き ★ 

潜在自然植生
北海道:落葉広葉樹樹林:ミズナラ(低地・丘陵・山麓)~エゾイタヤ・ハリギリ(=センノキ)~ハルニレ・ヤチダモ(少し湿ったところ)~ハンノキ(湿原・川沿い)~カシワ(沿岸)

本州・四国・九州:照葉樹林:タブノキ・ヤブツバキ・シロダモ・シイ
 海岸沿いはタブノキ、尾根筋はシイ、内陸部ではシラカシ
 西日本では+イチイガシ、内陸部では+カシ類(アラカシ、シラカシ、ツクバネガシなど)

また、別の箇所ではこんな記載も・・・

照葉樹林域;
・高木:シイ、タブノキ、カシ類
・亜高木:シロダモ、ヤブツバキ、モチノキ、ヤマモモ、ネズミモチ、カクレミノなど
・低木:アオキ、ヤツデ、ヒサカキなど

夏緑広葉樹林帯;
・高木:ブナ、ミズナラ、カエデ類

マツやスギ】本来岩場などの厳しい条件下で自生する樹木。

カモガヤ
 日本では北海道、あるいは侵襲の高冷地帯の牧場に播種、栽培されている。たしかに非常に好窒息性で、適湿で恵まれた立地では競争力が強い。しかしカモガヤは種を蒔いて2-3年は生長量が高いが、5-6年経てばだんだんと生産量が落ちて、7-8年でもう一度耕してまき直さねばならない。
 すなわち植物社会では、競争力の強い植物はしばしば環境の劣化に対して敏感で抵抗力が低い場合が多い。

カラマツ
 本来フォッサマグナ地域と云われる、せいぜい富士山、八ヶ岳から付近の中部山岳の尾根筋、急斜面、水際など極端な立地に局地的に自生していた。
 戦後、そのカラマツを、生育が早いので木材として利用できるという見込みで、日本中の乾きすぎず湿りすぎず土壌条件も安定したブナやミズナラ林を伐採し、時に火入れして、吸収の産地から北海道までほとんど全域に造林した。
 現在伐採期に達しているが、価格的に外材に勝てず、深刻な問題になっている。

北関東の屋敷林
 埼玉・栃木・茨城県などの古い屋敷には、北/西側はシラカシが帯状に植えられている。北風と西日を防ぐためである(西日はカイコの飼育によくなかった)。また、古い集落や家の南/東側には夏の木陰・冬の日差しを求めて落葉広葉樹でやや湿った渓谷や川沿いの斜面に自生するケヤキが屋敷林として大きく聳えているところも多い。その場合でも、シラカシを主にしさらにアラカシ、ウラジロガシ、モチノキ、シロダモ、ヤブツバキ、マサキ、ヒサカキ、サンゴジュなどを高生垣に使っている。

里山の雑木林
 関東地方の里山の雑木林は、かつては一般に自然林と考えられていた。しかし、実はそこの土地本来の潜在自然植生は常緑のシラカシ林である。クヌギ、コナラの雑木林は、ほぼ20年に1回の感覚で、その林を定期的に薪炭材として伐採することによりできた二次林である。
 スギ、ヒノキ、マツ、カラマツなどの針葉樹は、地上部を伐採すると根まで全部枯死してしまうが、広葉樹はよほど老木にならない限り再生能力が強い。雑木林を15~25年感覚で伐採するとその切り株から萌芽する。一本の切り株から数本の芽が出てくる。農家の人たちはこの芽生えをひと株に2~3本残して、あとは切って燃料などに使ってきた。このような森の俚謡が何百年も続いて、再生可能な樹林として持続的に人間と共生してきたのが、いわゆる里山の雑木林である。

帰化植物 vs 鎮守の森
 セイタカアワダチソウ(=アキノキリンソウ)、ブタクサ、偽アカシアなどの帰化植物は、荒れ地では一気に増えるが鎮守の森には侵入できない。例え入れたとしても育ちにくく、長持ちしないのです。土地本来の森のシステムが機能している限り、外来植物は排除されてしまうのです。


・・・これはヒトの常在菌である腸内細菌叢の機能と同じですね。腸内細菌が元気であれば、病原体が侵入しても排除してくれるのです。病原性大腸菌による食中毒が話題になったとき、ふだんから快便のヒト(=腸内細菌が元気)はお腹の弱いヒト(=腸内細菌バランスがよくない)の比べて軽症で済んだという報告を読んだことがあります。

「写真画集」(丹地保堯)

2010-10-25 22:32:17 | 
2001年発行、求龍堂

<キャッチコピー>
「棋界初の試み、写真が絵を凌駕する、写真集の刊行」

私は大きな樹木が好きで、いつの間にか巨樹を求めてあちこち出歩き、写真に収めることが趣味になりつつあります。
そんなとき、この写真集に出会いました。

「!」
言葉を失うほど、感動しました。
とともに、プロの仕事とはこうもレベルが高いものかと思い知らされました。

日本の自然を穴の開くまで見つめて、その造形、幾何学模様、バランス、配色などが飽和状態となった一瞬の芸術を写真に収める技術と執念は、一枚の絵を描くことに匹敵するエネルギーが必要であることが、少々写真をかじる私にはわかります。

写真とは、光という刀による彫刻。

ここに収められている一枚一枚の写真は、日本人の琴線に触れる郷愁とともに、自然への畏敬を包含する芸術でもあります。
キャッチコピーの如く、絵画より美しい(美しすぎる)写真が何枚もあります。

ああ、いくら賛美してもしきれない・・・。

この写真集の約20年前に出版された、丹地保堯氏の「50本の木」という写真集も手に入れました。
谷川俊太郎さんの素敵なことばが添えられています。
こちらも素晴らしい。

「日本の歴史を作った森」

2010-08-04 06:03:36 | 
立松和平 著、ちくまプリマー新書、2006年発行。

皆さんご存じのように、立松さんは2010年2月に亡くなった、栃木県出身の作家です。
自然保護活動にも熱心だった彼が、木曽のヒノキを都市への材木供給という歴史的視点で紐解いた内容です。

一番印象に残った箇所は、なんと「あとがき」でした。
「日本は森の国である。なにしろ国土の70%が森林なのである。たとえばアフリカのサハラ砂漠やナミブ砂漠に行って帰ってくると、この国はなんと恵まれた風土の中にあるのだろうと思う。・・・それなのに、例えば世界最古の法隆寺を造るほどの木材がないということは、またなんとしたことだろう。見かけはよいのだが、森の力は根底的に落ちている。」

本文にはちょっとガッカリしました。
扱われているのは木曽のヒノキのみ。
話は細切れで、同じことの反復も多く、ストーリー性が今ひとつ。
何のことはない、書き下ろしではなく新聞の連載記事を本にまとめただけなのですね。

さて、これはと感じ入った箇所をメモしておきます;

■ 伊勢神宮の式年遷宮
 伊勢神宮は創建された西暦600年代から20年ごとに全てを造り直すことを延々と繰り返してきた(戦国時代のみ100年強途絶えた時期があります)。これは「新しいもの、新鮮なものが尊い」という稲作に基づく浸透の蘇りの思想に基づいている。20年というのは意味がある。今から約1300年前の日本人の平均寿命は30歳代後半だと推定されており、技術を次世代に渡すためには20年間隔が適当だったのではないか。

・・・別の説も聞いたこともあります。出雲大社は数十年ごとに木柱が劣化して自然自壊を繰り返したので、巨大木造建築の寿命として設定されたと。

■ 仏教の「声明」(しょうみょう)とは土や森への祈りである。
 声明とはみんなで声を合わせて仏菩薩をたたえ、この場に来ていただき、こちらの祈りを聞き届けてもらうこと。その根底の願いは、「地味増長」である。土に力をくださいという誓願である。次は「五穀豊穣」だが、土が米や麦を実らせてくれ、森の木を育ててくれる。こうして食べるものが豊富にあれば、万民富楽となる。人々が幸せになるなら、国は安泰であるから鎮護国家に繋がる。

■ スギは500年、ヒノキは1000年
 耐久性が望まれる社寺を造るには、ヒノキ材が最良である。日本に最も多く植林されたスギは、早く育って60年も経てば伐採適齢期になるのだが、建築したら400~800年しかもたないとされる。

■ 木曽五木と「ヒノキ一本首一つ」
 木曽五木とはヒノキ、サワラ、アスナロ(ヒバ)、コウヤマキ、ネズコを指し、宝永5年(1708年)に尾張藩の林政改革によって指定された。この五木は停止木(ちょうじぼく)と云い、御用材以外には伐採が厳禁とされた。それまでの激しい伐採のため荒廃した山を保護するためである。これがかの有名な「ヒノキ一本首一つ」であり、盗伐したものは容赦なく処刑されたのであった。

・・・続きは後ほど・・・