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アヴェッツァーノをスタートし、3日振りにティレニア海を臨むナポリにフィニッシュするジロ第9ステージはコースレイアウト的に逃げが決まるのではと思っていたのですが、予想に反して逃げたのはポルティ・コメタのイタリア人2名だけでした。ポルティ・コメタはイヴァン・バッソとアルベルト・コンタドールがマネージャーを務めるイタリア籍のチームです。昨年まではエオーロ・コメタと呼ばれ、2021年にプロチーム昇格を果たし、2021年から3年連続ジロ・デ・イタリアに出場し、区間通算2勝を挙げています。
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長い個人TTや前日の山岳ステージでの疲れがあるのか、前半からのアタック合戦にはなりませんでした。逃げたミルコ・マエストリとアンドレア・ピエトロボンも最大で3分ほどの差でメイン集団がコントロールしていました。後半に4級の丘(距離4.1km/平均3.8%/最大9%)がありピュアスプリンターにはちょっと厳しいステージで、この日もファビオ・ヤコブセン(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が遅れ始めました。
この時点で逃げの2人とプロトンの差は1分。そのまま4級の丘を越え。アップダウンのある終盤でスプリント勝利の可能性が無くなったスーダル・クイックステップからジュリアン・アラフィリップがアタック。ただ、ゴールスプリントを狙うアルペシン・ドゥクーニンクのニコラ・コンチが抑えにかかります。
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遅れてルイス・アスキー(グルパマFDJ)とケヴィン・ヴェルマーク(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)、エウェン・コステュー(アルケアB&Bホテルズ)等がが追いつき、残り22kmで先頭は7名となりました。アラフィリップが奮闘を見せるも、スプリンターを擁するチームがペースを上げるも、残り8kmの丘でジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ)が単独でアタック。
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第1ステージでポガチャルをゴールスプリントで下したエクアドルチャンピオンはナポリ市街地の複雑なコースを逃げ続けます。そして最大12秒差を得たナルバエスは最終ストレートに突入。一方、プロトンはミランを擁するリドル・トレックが主導権を握るも、なかなかペースUPが出来ず、たまらんという感じでフアン・モラノ(UAEチームエミレーツ)を引き連れたマリアローザのポガチャルが先頭に立つ。ポガチャルがリードアウト???
後ろを振り返ったポガチャルはチームメイトの姿を確認すると脚を緩め、シモーネ・コンソンニのリードアウトから、ゴール前100mでミランがスプリント。ミランは残り10mでナルバエスを抜きますが、その右側から上がって来たオラフ・コーイ(ヴィスマ・リアースバイク)に差されて2着。勝利したコーイが雄叫びを上げる決着となりました。
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これまで32勝を挙げながらグランツール初勝利となったオラフ・コーイは若干22歳のスプリンター。オランダ人としては1999年以来というジロのステージ優勝を初参加で成し遂げてみせました。新人賞ジャージを着るアイデブルックスといい、ヴィスマの選手層は非常に厚い。
今季は昨年のジロの覇者ログリッジがボーラへ移籍し、ジロ出場予定だったファンアールトもツール・ド・フランス3連覇がかかるヴィンケゴーも落車による骨折と厄年のようで、このジロでも既にロベルト・ヘーシンクとエースのクリストフ・ラポルトがリタイヤしているのです。それでもこうした若手がチャンスを確実にモノにするチームは強い。昨年のグランツール総なめも当然といえるのかもしれません。
この強敵をツール・ド・フランスで迎え撃つのがポガチャル。しかも、Wツールをかけての戦いになりそうなのです。それなのに、この日はチームメイトのアシストをし、フアン・モラノの3位に貢献しているのです。翌日が休養日とはいえ、Wツールを目指しマリア・ローザを着る選手がここまでする必要は無いはずなのですが…
彼の言葉を信じるなら、第8ステージは仲間のおかげで勝てたので、この日は仲間のために尽くしたということなのですが、これまでこんなエースは見たことがありません。本当に今年は調子が良いのだろうと思います。この日も彼があのタイミングでリードアウトしていなければ、ナルバエフがギリギリ逃げ残っていたかもしれないのです。初日に早仕掛けで差されてしまったナルバエフを本能で捉えに動いたと思うのは私だけでしょうか?
これでジロの最初の長い1週間目が終わりました。ポガチャルの3勝にこの日のコーイを加え、ジロ初出場初勝利という選手が大半を占めていたのが印象に残りました。大きく世代交代を迎えているジロの今後が楽しみです。
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