文庫本
夕方
買い物をするときに
ちいさな本屋さんの前を通る
入ると
おくの方で
犬がちいさく
吠える
この本屋さんには
時々再刊の文庫本が
数冊ならぶことがある
再刊でも新刊だから
テカテカそこだけ
かがやいている
どんな本でも
なかみにかんけいなくだが
照り映えているその輝きに
ついひかれて買う
面白そうなのを
一冊えらんで誰もいないレジへ
大声あげてよびだしてその文庫本を買う
かえって直ぐに三頁ほど読む
そしてそれからてきとうに
隙間をうめるように置く
ジ-ドの横にリルケがならんでいる
そのうしろにはディドロや青木繁がいる
各種辞典が寝そべっているかと思えば
重なる様に誰かがいて
呻いている
「おまえだれ」
「ぼくボオドレール」
「上にいる奴重い奴」
「永遠の・・・と言う奴」
「そいつをのけてくれ」