そっと
そっと、なにかを、みる
なにを、そんなに、そっと、みる
かくれている、真実を
そっと、みる
すてられた、真実を
そっと、みる
そっと、そっとって
精力がひつよう
生命線のはてるところまで
そっと、そっと、そっと
そっとが
ひょっと
ひょっとが
もっと
もっとが
ちょっと
ちょっとが
なめすぎた飴玉のように
きえかかる
はきだしてみたら
そっとが
そっと
きえていた
おまけに
真実も
きえていた
そっと
そっと、なにかを、みる
なにを、そんなに、そっと、みる
かくれている、真実を
そっと、みる
すてられた、真実を
そっと、みる
そっと、そっとって
精力がひつよう
生命線のはてるところまで
そっと、そっと、そっと
そっとが
ひょっと
ひょっとが
もっと
もっとが
ちょっと
ちょっとが
なめすぎた飴玉のように
きえかかる
はきだしてみたら
そっとが
そっと
きえていた
おまけに
真実も
きえていた
心まで、病むのか?
ひとは、珈琲をのむように
いつの間にか
病んでいる
囲われた中で
次々とスケジュールがたくまれて
進行していくから
自分を多面体にしてはだめ
大人しい飼い犬になり
すこしも吼えてはならない
集中豪雨はそのうちに
きっと、晴れる
飼い犬からは解放されて
ほんとに、美味しい、水をのめる
これは、希望ではない
分厚い評論よりも
素晴らしい、リアリズム
心まで病む前に
収穫されて、ほぐした綿花のように
気持ちを解放しよう
シュールレアリスムが
ここで、世界を広げてくれるから
注意、自分を見失う事もあるよ
しかし
それは、自分が、変わることでもある
踊る銀鱗
JAZZをきいていて
ふと眼にうかんだ
網にかかった鱗族
シルバーが踊る
しかも
捕われの身にしてでさえ
嬉々として危機を迎えているのだ
人もまた
ときには
重荷の理性とやらを
かなぐり捨てて
鱗族のごとく
シルバー踊りをおどりたまえ
その時見る世界の光は
どのように眼を射るのだろうか
クレージーな世界が
もっと鮮明にみえそうだ
とはいえども
もともとクレージーな世界ゆえ
ただ揺れ動くだけの話かもしれない
だったら
そのまま揺れていればいい
セフィティーネットとやらが
破れるまでのお話だけれど
ジプシーの球はそれでもまわるのだから
渇くのど
のどがかわいたので
セットしておいたレモンのジュースを少し飲んだら
ずいぶんとあかるいふんべつがついて
ある日きっと返事がくる手紙のことを
おもいだした
人文学の論文の下書きにつかえるとおもった
ガキのころ
おやじにしかられて
そのまま家出したという経験もないが
ハートウォーミングして運転している僧侶のドライヴ
ダチのいえにいつづけしたことはある
燃えるシーズンのファッションだ
アシガルはなんでも言いつけられる
それがアシタの正体だ
時には夢幻の下絵にウツツをぬかす
春 街なかのちいさな産院の窓を見た
夏 遠浅で透明な湖で水遊びした
秋 枳愨の生け垣にもたれた
冬 継貼りの靴下をはかされた
ナースがかたずをのんで見送る
ササヤキがきこえるときもあった
誕生日にならない日もあるのだろうか
間断なく生まれ間断なく死ぬ
30分で生と死をすます昆虫もいるだろう
30分、餌だけたべるとサヨナラをする
猛烈に短い映画は30分でおわる
遠雷が鳴り黒雲がスピードをあげる
自然は無鉄砲な人のようだ
いつもの海辺か?
点々とした足跡がある
愛のゆくえ
ざっとふるような雨
傘をさしかけてくれる
まばゆいクロスオーバー
きっとかるく顔みあわせて
驚きとはにかみと照れくささとが
傘の下で火花のように
激震をまねくだろう
それから雨はすぐやんで
愛の傘はとじられる
どちらまで?
帰宅します
あなたは?
おなじです
有難うございましたといって
ステーションにむかう
しばらくは薄暮のなかで
能面のようになる
愛なんかしらない電車は
いつものように
怪鳥みたいにとんでゆく
閉じられた愛の傘は
ポタポタ雫をおとして
地下鉄のなかで直立している
雨に 濡れた 愛 が
明日 乾く だろう
それは 愛 ではなく
ひろげたり、とじたりできる
あの落書きにもつかわれる
傘だったのか
それとも
ぬれたりかわいたりする
脇の下のくすぐったい感触?
何かがそこに
そこにあるのは
何かと
といただしたら
にんげんと戀と愛とが
ふるえていた
まはだかの
おさない幼児ににて
かすかにみぶるいする
路傍のほそい茎のさきの
ちいさな花だ
それから木々のかげで
いたわるふたり
木漏れ日のかぜ
ゆらぐせいしんのようなものが
手でおれなくて
草むらにねそべる
いきもののにおいといきれ
ああ薫風か
そらのいろはとうめいで
むしろ夜のようだが
それよりもちかい
かんじる
みる
さわる
が
てからはじまる
たびのさなかの
宇宙の絶壁から
地底のほのぼのした地層が
せりあがってきた
もう行かなくっちゃ
たたくもの
あたまのなかを
コンコン叩く奴がいる
あさからなにをそんなに
水ちゅうを泳ぐタコのように
けったりして、グルグル、ブクブク、かきまわして
少しの知識の切れはしを餌にするきか?
そんな切れ端のものは役にたたないといつているではないか
風のなかの風の切れ端みたいにくべつのつけようもないもの
三角錐は切削のようにキリキリする
球体のほうがまろやかに叩いてくれる
そいつはまあゆるす
あたまのなかを
コンコン叩く奴がいる
もう数時間も、叩きつづけている
記憶力のお化け
思い出コンテストで
受賞に輝いた
三角錐よ
どんなに叩いても
もうみんな
かなたにおいてきたよ
それは
忘却となづけた
一人歩きもできない
メモリーさ
つかつか
鶴と亀が
つかつかと
僕の部屋にはいってきて
あした
決闘するから
たちあえという
そんなもの勝負はつかない
亀が攻撃したら
鶴はまいあがり
鶴が攻撃したら
亀は甲羅のなかへ引っ込むから
鶴は千年
亀は万年
といえば
亀のほうが
ながいきする
亀の勝ち
これは学問ではない
これは知識でもない
これは想像でもない
だれかが
ふとくちからでたものを
いつのまにか信仰した
言葉はしんじられるのだ
そして
いかにおおくの言葉が
しんじられて しんじられなくて
どうしたの こうしたの そうしたの
とつつきまわされる
鶴と亀の決闘のように
いつもいつも
しんじられるまで
言葉は言葉と決闘している
言葉と人間は共存している
故に
言葉と人間は決闘できない
鶴と亀のように
Holiday
林檎の實をもった男の子
蛇を手首にまきつけた女の子
男の子は熟れきった真っ赤な林檎の實を
女の子の美しい蛇ととりかえっこしようと
女の子のあとを追っているのだ
女の子はながい間飼育した
レオナという名の南国の
瑠璃色の肌をしたその蛇は
だれにも渡したりすることはできない宝物なのだ
男の子の手にした林檎の實は
これも玲瓏とした美しい球体なのだ
爛熟した林檎の實にふさわしい
深く沈んだ、それでいて透きとおるような赤色だ
そのうち女の子の瑠璃色の蛇は
するすると女の子の胸の中へ
眠るためにかくれ
女の子は胸を両腕で抱えながら走った
男の子は手にした林檎の實を
思いあまって女の子に投げつけた
そんなことはわかっていた
林檎の實は走る女の子のずっと手前の石にあたって
ぽっかりわれた
芳しい薫がその場のヒロインになった
女の子は瑠璃色の体積を林檎の破片の上に
そっとのせた
艶やかなフィーリングと
密やかなワイルドが
男の子と女の子の間を
しばらく行き来した
それから
風景はフェニックスのように
濃い夕闇のなかへとびさった
キラッともえながら
ヨ-コ
ヨ-コは
深い溝を
とびこえて
ふりむいて
大口あけて笑った
さながら笑う般若だ
ヨ-コは
そのまま荒野の方向に走った
向かい風のなかに
草いきれと
蒲公英の種が翻る
生温い日差しをこえて
ヨ-コは
画きかけのデッサンのはいった
バッグをふりまわしながら
ドシラ ドシラ とうたいながら
これからみる夢の本がまちどうしくて
夜明けの鳥のような足踏みをした
ヨ-コは
白い額縁のなかの
最前列のシートにすわって
こちらをみはじめた
額縁のそとの風景は
現実の物事であふれていた
ヨ-コは
ステージのほうへ向きなおり
開かれて行くページを
何一つみおとすまいと
夢の本を写し取った
カイトにして飛ばすために
ヨ-コは
こちら向きになって
額縁からはいだした
シュールなデザインのカイトが
荒廃した黒い空を水平線までおしやって
金襴緞子の布にした
ヨ-コは
花嫁になったのだろうか
風の便りがくるのを待とう
150人のうちの13人
少年たちは
いろいろの世界で
ちがっているようでちがっていない
時代をいきてきて
全員150人のうちの13人があつまった
杖をつき眼鏡をかけ足下は ヨロヨロ
大きな声で話しをちいさなへやにまきちらす
まいた話は
ほんとうにあったこと
13人が同意できる迫力があるものばかりだ
あの戦争が150人にかぶさってきて
闘った話だが
被害者意識はまったくない
アッケラカンとしている
平和になってからの話は
殆どしない
150人がそろっていきていたころ
そのころがひたすらになつかしいのだ
あまりかわってないな
青春と老春が
となりあわせで
つまんだ昔をたべていた
羽根
鳥の羽根に気分をのせて
クルクル回る
かぜをたよりにとんでゆく
流れに浮かんでみてもよい
水のクッションではずみながら
中の島の橋を通過
今日の水のいろは
フカミドリ
ときどきコガネイロ
サンシャイン
ムーンライト
ネオンのかけら
夜の羽根が
さっきとおりすぎた
つめたい風にのって
きょうは羽根の記念日
みんなふんわりと
とんでいった
それから
白鳥を乗せた観光船が
ゆっくりと通っていった
川面が真っ白になった
あきちゃん
あきちゃんは
ほそいからだの子だった
おしゃべりする時は
すこし顔をうつむけて
かんがえながらしゃべった
結婚しておみせをやめるとき
はずかしそうにおわかれをいった
横浜からハガキがきた
ふたりではじまった生活のほうこくだった
それからよくねん
またハガキがきた
赤ちゃんできたと
それっきり
ハガキはこない
いまは
お婆ちゃんしてるのだろう
しゃべるとき
すこし顔をうつむけて
まだちいさいまごだろうから
ちょうどいい
ねえ あきちゃん
手毬
あざやかな金糸や銀糸
赤と黒や黄と緑の糸
まきあげてながめるための
カタチとシキサイの毬
弾力性がないから
はねたり踊ったりしない
棚の上でちいさな座布団にすわって
ひとびとの視線の集中打にたえる
部屋の明るさで
幽かに頬をあからめたりする
少女
いつからそこにすわっているのか
だれがそこへおいたのか
記録も名前もないが
作った人は
女人だ
それが長い間
一人住まいの男の居間の片隅に
寄り添っているでもなく
さりとて
無視するでもなく
お互いが
日々顔をあわす
一瞥もない日や
睨めっこの日もあるが
ジャズではないが
琴線にくうきがふれて
かすかに糸が震える音がすることもある
糸は文字どおり一糸みだれず
球を生んだ
宇宙のしわざのように
意味があったりなかったりして
少女よ
あなたはいつまでそこにいる