デジブック 『薔薇のしずく』
物語
こころのなかにすむ物語
人口よりもおおいよ
ひとり、また、ひとりは
いくつもの物語、物語、で
もちきれないくらいにあるはずだ
ダンボール いくはこ?
こころのなかにある物語は
空中のほこりみたいにみえないし
かたまって
場所をとらない
だからって だからって
一歩あるくと
そのぶんの
物語が
ついてくるよ
でも、場所をとったりしないけれど
突然
みえない場所で
とりあいになっている事もあるよ
座ったら
直ぐ
立ち上がれないよ
尻もちついたような
格好になって
いくらあがいても
椅子にとらわれてゆく
ボディー
ハロー
ハロー
そこで何時までも座っていてね
私
そのあいだに
おおきなタイコを叩きに行ってくるからね
メランコリー
大正、昭和、といきていた
平成になって死んじゃった
得体のしれない
霧笛の遠赤外線のようなもの
メランコリー
それは何語?
色彩でいえば
重いブルー
あ、
ブルーだ
メランコリーにとってかわった
ブルースか
メランコリーはいまいずこ
卒塔婆に棲家をかえてしまったのか
ああ
メランコリー
そなたは
どうしてきえたのやら
スパイのように
身を隠して
どこかで
霧笛が聞こえている
象牙の塔かもしれない
メランコリー研究所
この星を
バックアップしている
おおきな燃える星を
壺の中にいれて
つかうのはいいけれど
バックアップを
しっかりしないと
バックアップの真似ごとは
あぶない
ちいさな坩堝
その壺のなかで
べんりであるけれど
きけんがいっぱいの
アトムの競技場で
オーバーヒートをおこしたら
不幸がはじまる
幸せが不幸せにかわる
みんなが
できるかぎりの
知恵をしぼって
バックアップ
わすれずに
赤い
新種の羽
来いと
緑の葉が
手招き
すっかりと
全身真っ赤になり
鳥の真似がしたい緑の夜
夜陰のさいちゅうに
色が判る 眼 芽 女
みんな メ とよめるけれど
光らないと
色はみえない
あらわれない
そのうち
光速で
赤い羽根が
飛び去った
赤が恋しいのか
危険な部屋は真っ赤だ
夢に
描く絵
ツジツマはあわない
わけわからない
でもなにかが
そこに
すんでいる
ように見えてくると
描いた甲斐があったと思える
ひとりだけの自由が
はばたいている
でも
観念の世界での話
観念のページには
何を描いても
かまわない
地上から
雨がふっても
空から木がはえてきても
かまわない
でも
真実がないこともない
無意識
みんな
気がつかない場所
なんとなくだだっ広い
壁もなく底もない
妖しいクオリアが
しずかに しずかに
横たわっているところ
タクラミは
透明な衣装を着て
潜ってくる
そして
いつのまにか
ほんとうにいつのまにか だ
ひどいことをして
正義や公正や希望を
飴のように捻じ曲げて
そっとおいてゆく
それは
おいしそうな香りまでしこんである
それは
気付かぬように据えられる
それは
ある日どたばたとあばれだすようにしこんである
だから毎日毎晩
われわれは無意識を監視しなければならない
グリーンピース
グリーンとピースにわける
緑と平和
いかにも安らかな世界が
髣髴と目前にみえてくる
グリーンピースを
スーパーで買ってきて
きょうは豆ごはん
子供のころ
お手伝いでサヤをしごいて
豆をとりだすという仕事を
縁側でやらされた
それは
ピースが知らず知らずの間に
侵されていった時代だった
抵抗した人達は
囚われていった
やがてピースはグリーンピースのように
美しくて美味しい食べ物として
ゴッドがくれた
ほんのスコシだけれど
平和酔いとか平和呆けとか
あたかも平和にあきたような言葉が
つい最近まで
風にのってきこえていたが・・・
アクション
ハクションも
アクションだ
オークションも
アクションだ
なんでもいいから
壁にぶちあたるのも
アクションだ
ぎりぎりの
危険のてまえで
絶妙に調節する
それこそが
究極のアクション
それは
まるで
光についてくる
影のようなものだ
あしたの雨
なにしろ
葉っぱの少ない
木の枝に
ぶらさがってしまった
蓑傘つけてはいるものの
雨の神は容赦しない
突然一天にわかにかき曇り
というあの豪雨
たちまち
満足な皮膚をもたない
ぼくの胸ぐらひっつかんで
べとべとに
冷たい液体を
ていねいにぬりつける
ふと、よこをみると
お隣の枝の葉が大きいので
その下へゆきつけたら
こんどこそ
蓑虫といえども
エリートだよ ね