美術
蜘蛛の巣のすみで
金色に輝く蜘蛛の糸とミックスして
巣の広さとぴったりの
淡いグリーンの
小さな葉が微風にひらひら
かれにとっては
餌ではないが
しばしの休息には
ふさわしいのではないだろうか
それとも
もがく昆虫のほうが
食欲を口のなかで
モグモグするほうが
さしずめ至福の時間なのだろうか
逆光でキラキラする額縁
そのなかで透明にちかい
ちいさな薄緑色の美術品
三歳児の指さす世界で
揺れて光っている
美術
蜘蛛の巣のすみで
金色に輝く蜘蛛の糸とミックスして
巣の広さとぴったりの
淡いグリーンの
小さな葉が微風にひらひら
かれにとっては
餌ではないが
しばしの休息には
ふさわしいのではないだろうか
それとも
もがく昆虫のほうが
食欲を口のなかで
モグモグするほうが
さしずめ至福の時間なのだろうか
逆光でキラキラする額縁
そのなかで透明にちかい
ちいさな薄緑色の美術品
三歳児の指さす世界で
揺れて光っている
言葉
言葉がずらっと
ならんでいる
知っている言葉も
知らない言葉も
いっしょに
ならんでいる
言葉には
たくさんの情報がこめられている
100%知っているのと
70%しか知らないのとでは
「詩」の場合
理解されたり
理解されなかったりする
「詩」は
だから難しいといわれる
言葉のもつ感覚を
それぞれのもちぶんだけでいいから
たとえば
蒲公英を薔薇にしてみてほしい
花弁
はなびらは
はなのいのち
はなびらのないはなは
ないのだろうか
そうだろうか
あるかもしれない
人間がしらないような
はなびらのないはなが
どこかで
さいている
さいているということができないように
おもってしまうけれど
はなはさいている
というほかに
いいかたをしらない
そこにいる
とでもいうのだろうか
それはどんなはななのだろう
はっぱにそっくりな
はなびらかもしれない
区別がつかないので
はなびらがないようにおもうからだ
植物学 生命学 進化学
美醜 善悪 古典 化石 液晶
枚挙不能
それでも
花というのにちがいない
Fran醇Moise Hardy : Vouyou Vouyou フランソワーズ・アルディ: いけない子
Fran醇Moise Hardy, Ma jeunesse fout l' camp, stereo
空白
白鳥の
めのなかに
うつっている
きょうの
みずのいろと
白鳥のひとみのいろと
おなじだろうか
器官を
しんじて
そのまま
およぐように
ぼくも
湖畔の屈折をたどる
白鳥はとっくにきえていなくなった
ぼくのてあしは
水におかされて
とけてゆく雲のようだ
むねの空白だろうか
虚木のような
林の中へ
身体が彷徨ってゆく
前後がつながっていない
意識と感情も
風に侵されて
目の前の事象たちは
白鳥のように
きえた
空白は
残るものだろうか
それも
おぼろげに
再生の場所として
そのうちに
ぼくは
とんだ思いを
ある日のみしらぬ街角の
ショーウィンドウのなかの
うつくしい言葉のかたちの
ハンドバッグのなかえ
こっそりとかくした
しばらくは
ぼくは未熟な心象風景をスケッチし
その風景をどうしたら輝かせられるかを
こころみたが
あのみしらぬ街角のショーウィンドウのなかの
あのハンドバッグのなかえかくしたとんだ思いが
筆先を混乱させるのに抵抗できず
突風のように
吹き乱れてしまった
それからというものは
もう毎日あのみしらぬ街角にたって
ショーウィンドウをみながら
うつくしい言葉のかたちの
ハンドバッグばかりが
めについてはなれなくなって
日がな一日通行人を
映しこむ
一枚のこわれやすい
ショーウィンドウのガラスと化した
ぼくなりの
これが
あたらしい
セイカツに
なったんだ
そして
今日はおおぞらはれて
太陽が
ぼくを
かがやかせてくれたかもしれないような
まぶしさをかんじていた
きっと
あの
とんだ思いが
結露したんだ