居間塵(imagine)

居間塵、と書いて、イマジン。その日その時、流れゆく時の川から、思いつくままに掬いあげる。絵図とポエムの棚

音楽

2012-03-31 00:28:17 | ポエム

音楽

 

典雅の森というところで
もう二度とないと思ってしまいそうな
美しい音楽を聞かせて貰った
空も木々も晴れてさわやかで
ウッドコーンの音色はみごとに澄んでいた

典雅の森からかえってみると
わが部屋でも眼にみえぬ音の粒子が
乱雑な居所を
そっとはねまわったらしく
真っ青な深いエアーと
真っ赤な透きとおるモードで
何度目かの
夢見のランドがしつらえてあった

音楽は
いつも
ふんわりとうかぶ
雲のベッドで
人守唄をうたってくれる
ミミからできてくる
不思議の国のコラージュだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 


わからないはなし

2012-03-30 01:05:11 | ポエム

わからないはなし

 

鏡の国は
逆転の国
だから
いつも
取り合いになる国

ひょっとして
今の世界が
鏡の世界になったので
取り合いになっているのかもしれない

とすると
もうすっかり
鏡の中

ほんとなら
ひどいはなしだ

 

 


文庫本

2012-03-29 01:01:10 | ポエム

文庫本

 

夕方
買い物をするときに
ちいさな本屋さんの前を通る
入ると
おくの方で
犬がちいさく
吠える

この本屋さんには
時々再刊の文庫本が
数冊ならぶことがある
再刊でも新刊だから
テカテカそこだけ
かがやいている
どんな本でも
なかみにかんけいなくだが

照り映えているその輝きに
ついひかれて買う
面白そうなのを
一冊えらんで誰もいないレジへ

大声あげてよびだしてその文庫本を買う
かえって直ぐに三頁ほど読む
そしてそれからてきとうに
隙間をうめるように置く
ジ-ドの横にリルケがならんでいる
そのうしろにはディドロや青木繁がいる
各種辞典が寝そべっているかと思えば
重なる様に誰かがいて
呻いている

「おまえだれ」
「ぼくボオドレール」
「上にいる奴重い奴」
「永遠の・・・と言う奴」
「そいつをのけてくれ」

 


交差

2012-03-27 00:32:00 | 

「交差」

交差は成立の素因だろうか

あるいは分裂の循環の出発点か

脱構築とは

崩壊なのか

 


ゴッホ

2012-03-26 18:07:45 | ポエム

ゴッホ

 

ものすべて
ねじって
ひきのばして
とぐろをまいて
テンクウにむかっていく

とちゅう
ふっと
たちどまり
ぺちゃんこにひしがせて
エノグをぬりかさねると
すべてのものが
もえあがるホノオのように
ふたたびテンクウにむかって
たちのぼってゆく

あれは
ゴッホの
ココロが
カンバスをつきやぶって
ワンダーランドへ
とつにゅうするすがただ


出会いがしら

2012-03-26 13:23:05 | ポエム

出会いがしら

 

スーパーで
昔の知り合いに
顔つきあわせた
ほんとうにまったくの
出会いがしらというタイミング
ふたりで顔見合わせて
ノドのあたりで
コトバ つまっているらしい
面影
雰囲気
不明瞭なスケッチ

そのうち
眼から崩れてゆく
やっと
 
「お元気?」
 
「うん」
最小の挨拶的コトバ

別れる時にそのひとは
 
「また逢う日まで」
ぼくは
 
「唄の文句や」
と返したが
レジがつかえていたので
それっきり
右と左にはなれていって

そのひととぼくは
天日にさらされてひからびたように
乾燥しきって
パリパリになったが
それを入れる箱もない

 


価値

2012-03-26 00:10:31 | ポエム

価値

 

或る人が
徒歩で会社へ出勤し
或る人が
車で会社へ出勤する
どちらが価値のある出勤かというと
そんな事でどちらに価値があるかを
決められっこないのである

出勤手段だけで決められない事なのである
価値を問うのなら
何故徒歩出勤するのか
何故車出勤するのかを
きいてみないとわからないのである

しかし現代は考え方がいくとおりもあって
そんなに単純には決められないのである

一つの観点というものをさだめないと
どちらも価値があるし
どちらも価値がないということになってしまう
それが現代という世界の状態であるからだ

普遍的で完全無欠な価値というものは
現代では人間が手を出さない自然のみにあり
人間社会には無数の過程的価値があるのみである
その価値たるや
よくよく考察してみれば
たいへん惨憺たるものなのである

現代社会における価値とは
幾らでも在り
少しも無い
というものなのだ


2012-03-25 01:00:27 | ポエム

 

ゆれる
きえそう
でも
きえない
芯が強い
火炎に抵抗する
だから
きえないで
もえる

もえあがるものが
なくなるまで
もえる

もえながら
ほんとうにもえているのか
などとうたがわないで

もえつづけよ

 

 


春寒

2012-03-25 00:29:51 | ポエム

春寒

 

奥山の熊も
春かまだ冬か
目覚めるごとに
迷っているだろう

街や村では
人はコートを脱いだり着たりして
迷っている

春は冬と別れることが
たいへんなのだろう
人も別れるときは
たいへんだ

春は手続しなくても
冬と別れられるけれども
人はそう簡単にはいかない
沢山の書類に印鑑をおしたり
手紙やメールを一杯書いたり

季節によっては
人の別れもちがってくる

寒い別れと冷たい別れ
暑い別れと温い別れ
いろいろの温度差があるものだ

別れるのは
どんな温度がいいのだろう

汗かいて別れるのが
いちばんだとおもうけれど

 

 


春雨

2012-03-24 00:06:45 | ポエム

春雨

 

しとしとと
桜の花に
うるおいを
ひとつずつ
おいてゆく

しとしとと
ひとびとの
きのうのうれいと
きょうのまよいを
クリーンアップしてゆく

しとしとと
あしたのことを
やわらかにして
こわばらないように
湿度をおいてゆく

しとしとと
はなびらに
みず化粧して
花としての
かぐわしさを
のこしてゆく

 

 

 

 


夢見

2012-03-23 12:42:41 | ポエム

夢見

いろんなことを
いろんなことばで
いろんなイントネ-ショオンで
話をしたり
唄をうたったり
感情の喜怒哀楽をリズミカルに
やってのける

そのひとは
白砂が敷き詰められた
演出された一隅の
すこやかな飾りの部屋で
ポット上気していた

近くの葭原で葦切りが
しきりに鳴く
湿り気のある風に
こころをなげだして
そのひとは
かすかにほほえんだ

すると空気がしずかにゆれて
ある夜のなかの白っぽい昼間の光景は
痕跡を残さずにきえた

夢いきれでむんむんする
これはきえたとおもっていても
ひとりだちするきえない夢だ

 

 

 

 

 


対称性

2012-03-22 23:56:23 | ポエム

対称性

 

ゆっくりと天から煌めく
雷光があったら
煌めく線形のはしばしは
淡彩画のように暈かされるだろう
ギザギザがなくなり
単純な棒みたいになって
美しくない
雷光はすばやくて
ギザギザのあるほうが
美しいだろう

虹はどうだろう
あれは淡彩画に似て
かすれているほうが
美しいだろう
七色がきっちりと
夫々自分の色彩を主張すると
虹は悪魔の形相になって
みはなされるだろう

鮮明と不鮮明が
美しさで一致する

プラスマイナスで
けっしてゼロにならないもの