ボレロ(*)
つまさきを
刃物のように
研いでとがらせて
時速1メートルで
まえに身を乗り出して
堅固な壁のような
なにか重いしきたりの配下にある
邪悪をおしのけてゆく
微妙なその速度
それ以上でも以下でも成り立たない
慎重なチカラの球が
手足と顔立ちを
夕日のなかで
燃えたたせながら
いくたびも耐えながら
次々とクラヤミを
ほうりなげながら
何処までもそのチカラ
リズムのチカラを
バルコンの蔭と夕日と
やきつくような視線の束と
いくつもの意志をしたがえて
希望や理想など問わないで
飛び立つ赤々とした
燃え立つ羽の痕をのこす
鳥影となって
灼熱の茜空へとけてゆく
(*)モーリス・ラヴェル作曲のバレーのための曲