追いかけてみたら
そいつは
すきまかぜのように
すりぬけてゆく
物や人びとのあいだを
一足お先に!
とかなんとかいって
するすると追いこしてゆく
追いかけていってみると
そこは時間の海だった
たくさんの難破船と
すこしの豪華客船と
港をうしなった船の群れ
水平線あたりだろうか
もうもうとして
海が蒸発していく
水蒸気が
ぼう ぼう ぼうと
天上へ 天上へと
水温は異常に高く
摂氏100度にちかい
夢が朝方蒸発するのも
こんな温度の上昇が
脳中枢でおこっているのだ
そして ひからびたちいさな丘たちは
夜明けの日にさらされて
ゆっくりとおぼろげに
世界の屋根から
気もそぞろに わくわくとして
それぞれの舗道へと降り立つ
朝一番の短い影を飼い犬のようにつれて