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欧州金融危機

2012-03-01 06:23:55 | 経済学
 欧州金融危機というものが取りざたされています。翻って債務のGDP比率ではギリシャに匹敵すると言われる日本国債も将来的にデォルトするという説といや条件が違うからしないという説が錯綜しています。ここで少し歯がゆいのが、GDP比率での比較1)はあっても金額の比較がなかなかないことです。確かに破綻の可能性を探るにはGDP比率が評価指標になるのでしょうが、いざ破綻した場合の影響や被害、救助に要する資金規模は金額によるはずです。ということで、いくつかの数値を集めてみました。当然と言えば当然ですが、国の債務額はその国の経済規模と相関して多額になっています。多額であっても「元金返せ」という人が少なければ、正確にはその金額が少なければ、債務総額がそのまま維持される状態が何事もなく続いていくわけです。

 ところがギリシャのように粉飾が明らかになるなどのきっかけで信用がなくなると、「元金返せ」となるわけです。正確には国債は期限が来たときに返す約束なので、信用があれば返済された資金を再び貸してくれて結局は債務が維持されることになるのですが、信用がなくなると「もう貸せない」となるわけです。もっと正確には、債権者すなわち国債を持っている人の多くが「危なそうだから他人に押しつけよう(^_^)」というわけで市場で売ろうとして、結果は国債価格の低下(利率上昇)となるわけです。

 そこで危機を救うには「もしものことがあっても代わりに返済します」という者が現れて、十分な資金があることを見せつけます。すると債権者も安心して貸し続けてくれて、うまくすればこのときの十分な資金も使わずに済む、となれば出来過ぎということでしょうね。実際にギリシャの場合は、債権者の一部は借金の半分は踏み倒される、もとい自主的に免除することが決まってしまったわけで、危機を救ったことになるのかどうかよくわかりません。ともかく表3でもわかるように、債務に匹敵するくらいの十分な資金の出し手の存在だけが危機を救えるわけです。まあ身も蓋もない原理です。

 さてそうなると、日本や米国のような経済規模の国が破綻したら世界中の誰も救えないのではないでしょうか? 中国やインドが成長してくれるまで待たないとおちおち破綻もできない?! そもそも国の破綻とはどんな状態かというのがなかなか実感しにくいものがあります。日本国内だと夕張市の破綻のような例はありますが、国民から見れば基本的には公共サービスの質が低下したり最悪なくなったりということでしょう。それがどれだけ耐え難いものか、しばらく耐えることで未来は良くなる希望があるのか、といったところがポイントではないでしょうか。

 なおギリシャ危機についてはウィキペディアのギリシャ経済危機 (2010年-)でも記事作成が進行中のようです。

表1. 各国債務(2010年末)1,2)、 数値はグラフからの読みとり
 兆円10億EU10億USD
ギリシャ30300375
イタリア1531,5301,919
スペイン54540675
フランス1221,2201,525
ドイツ1081,0801,350
日本6366,3607,950
米国1,08210,82313,529


表2. 各国GDP(2010年末)3)
 兆円10億EU10億USD
ギリシャ26262327
イタリア1671,6722,090
スペイン1161,1601,450
フランス2142,1362,670
ドイツ2652,6483,310
日本4044,0405,050
米国1,12911,28814,110


表3. 色々
 兆円10億EU10億USD
ギリシャ支援5,6)11109136
ポルトガル支援7)87898
ギリシャ国債償還(2012/1-3)22430
イタリア国債償還(2012/1-3)11113141
ECBオペ(2011/12/22)8)49489611
IMF融資可能額(2012/02時点)9)31312390
IMF強化,G20(2012/02/27)9)40400500


 なお、世界全体のGDPは表2と同じソースから58,069[10億USD](4,646兆円46,455[10億EU])ですが、2010年末の世界全体の金融資産212,000[10億USD](16,960兆円169,600[10億EU])と言われています10)おお、世界は既に破綻している!?。いや、金融資産の中には預金・証券・株式など企業の債務が多く含まれていますからそうはなりません(^^)ホッ。政府の債務である国債だけだと41,000[10億USD]ということなので、その中の33%が米国債ということになります。ものすごいシェアですね。

 さて金融危機を理解するには債務というものを理解する必要があり、債務というものを理解するには国民経済計算というものを理解する必要があると考えましたので、次回からはGDPなどの国民経済計算のデータを基礎から理解してゆこうという試みをしてみます。


----参考文献----
1) 財務省 トップページ > 税制 > わが国の税制の概要 > わが国税制・財政の現状全般 > 債務残高の国際比較
2) 各国債務額。みずほ総合研究所・リサーチTODAY(2011/11/15)[PDF]
3) 米国債務額。AFP-BB-News(2011/07/26)
4) 各国GDP 総務省統計局[統計データ > 世界の統計 > 第3章 国民経済計算](2011/01データ)
5) 第二次ギリシャ支援決定(2011/07/21) [大和総研海外情報(2011/07/22)]
6) 第二次ギリシャ支援決定(2011/07/21) [AFPニュース(2012/02/23)金 地金 ゴールドの世界(2012/02/25, AFPニュースのまとめ)日興アセットマネジメント作成(2011/07/21)日興アセットマネジメント作成(2011/07/21)PDF]
7) ポルトガル金融支援決定(2011/04/16)、要請(2011/04/06) [三井住友アセットマネジメント【デイリー No.914】(2011/05/17)日本国財政破綻Safety Net(2011/04/10)]

8) 「ドラギ・マジック」?市場安定に予想以上の効果を発揮したECBのLTRO[大阪証券取引所・コラム・インタビュー・レポート(2012/02/14 ?)]
9) nifty.finance、フィスコ(2012/02/24)
  朝日新聞(2012/01/19)
10) 日根野健の株ブログ(2011/08/16)   マッキンゼーのレポートによれば、(以下略)
  1次ソースへのリンクは既に切れていて出典としては不十分だが、「世界の金融資産」といったワードで単に検索しても数年前以前のデータしか探せなかった。知る人ぞ知る所にはデータがあるのだろうが。

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