前回の続きです。
さて私流の説明は、「負×負=正」が成立するモデルを例示するというもので、数学的論証ではありません。実は「負×負=正」を納得するのに数学的論証はあまり意味がないのです。論証だけなら「負×負=負」が成立する公理系を作ればそこでは「負×負≠正」が論証されてしまいます。大切なことは現実世界に「負×負=正」が成立するモデルが多く存在して、それゆえ現実世界の多くの問題解決にはこの演算規則が有用だということなのです。小学生に教えるにも、そういうモデルをたくさん示してやることが大切ではないかと思います。
演算規則が絶対に正しいわけではないということは、八起数学塾では「(ただしそれは絶対的なものではなく、また、絶対的な根拠はあり得ないという点には注意して下さい。)」と述べていますが、桜井進『感動する!数学』では何も述べていません。とはいえ、多くの人が納得しやすいような「負×負=負」が成立するモデルを作って見せるのはちょっと難しいです。
また青空学園数学科では次のような記載があります。
「速度と時間の場合には確かに負数と負数の積は正数だが,それでなぜすべての量で成立することが示せたのかという問題もある.量を数化すると同じ計算法則を満たす.だから計算法則の方から証明しておけば,すべての量で成り立つ.この道を通らないと,個別の量を超えた量一般での証明は難しい.」
http://aozoragakuen.sakura.ne.jp/taiwa/taiwaNch01/ryou/node4.html
これは少し論理が甘いでしょう。「量を数化すると同じ計算法則を満たす」ということが全ての量で成り立つことが示されないと、上記の論理は完全ではないからです。でもそれは個別の量で個別にしか確認できないことです。そもそも負値を取らない量だってあるのですから。
もっとも演算規則を並べて見せる以下のような方法は結構納得しやすいものだと思います。
・・・・
-1×(+3)=-3
-1×(+2)=-2
-1×(+1)=-1
-1×( 0)= 0
-1×(-1)=+1
-1×(-2)=+2
・・・・
ゼロを境に逆転するのかなるほどー、というわけですが、逆転する必然性があるのかと言われると、そう決めたんだとしか言えませんね(^_^)。実は(-1)を掛けるという操作は、逆転、反転、裏返し、鏡映、といった操作と構造的には全く同じなのです。数学の言葉で言うと、[1,-1]という2つの元だけを持つ積についての群の構造です。そして2つの元だけを持つ群の構造は一種類しかなく、これを2元群とも呼びます。
有理数全体の集合を積についての群(乗法群)と考えたとき、部分群としてこの2元群が含まれているのはちょっと注目して良いでしょう。和についての群(加法群)と考えたときは、このような有限部分群は存在せず、例えば偶数の集合のような無限部分群のみになります。要するに有理数全体の集合での加法群と乗法群では構造が違っていて、乗法群は加法群と2元群との積になっています。そしてゼロは乗法群の元ではありません。
はい、03/27の記事で「和も積も群としての数学的な構造は区別がつきません」と書いたのは間違いでしたm(_ _)m。区別がつかないのは、有理数全体の加法群と正の有理数全体での乗法群との間でした。
ということで次回は初等数学を越える話をします。
さて私流の説明は、「負×負=正」が成立するモデルを例示するというもので、数学的論証ではありません。実は「負×負=正」を納得するのに数学的論証はあまり意味がないのです。論証だけなら「負×負=負」が成立する公理系を作ればそこでは「負×負≠正」が論証されてしまいます。大切なことは現実世界に「負×負=正」が成立するモデルが多く存在して、それゆえ現実世界の多くの問題解決にはこの演算規則が有用だということなのです。小学生に教えるにも、そういうモデルをたくさん示してやることが大切ではないかと思います。
演算規則が絶対に正しいわけではないということは、八起数学塾では「(ただしそれは絶対的なものではなく、また、絶対的な根拠はあり得ないという点には注意して下さい。)」と述べていますが、桜井進『感動する!数学』では何も述べていません。とはいえ、多くの人が納得しやすいような「負×負=負」が成立するモデルを作って見せるのはちょっと難しいです。
また青空学園数学科では次のような記載があります。
「速度と時間の場合には確かに負数と負数の積は正数だが,それでなぜすべての量で成立することが示せたのかという問題もある.量を数化すると同じ計算法則を満たす.だから計算法則の方から証明しておけば,すべての量で成り立つ.この道を通らないと,個別の量を超えた量一般での証明は難しい.」
http://aozoragakuen.sakura.ne.jp/taiwa/taiwaNch01/ryou/node4.html
これは少し論理が甘いでしょう。「量を数化すると同じ計算法則を満たす」ということが全ての量で成り立つことが示されないと、上記の論理は完全ではないからです。でもそれは個別の量で個別にしか確認できないことです。そもそも負値を取らない量だってあるのですから。
もっとも演算規則を並べて見せる以下のような方法は結構納得しやすいものだと思います。
・・・・
-1×(+3)=-3
-1×(+2)=-2
-1×(+1)=-1
-1×( 0)= 0
-1×(-1)=+1
-1×(-2)=+2
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ゼロを境に逆転するのかなるほどー、というわけですが、逆転する必然性があるのかと言われると、そう決めたんだとしか言えませんね(^_^)。実は(-1)を掛けるという操作は、逆転、反転、裏返し、鏡映、といった操作と構造的には全く同じなのです。数学の言葉で言うと、[1,-1]という2つの元だけを持つ積についての群の構造です。そして2つの元だけを持つ群の構造は一種類しかなく、これを2元群とも呼びます。
有理数全体の集合を積についての群(乗法群)と考えたとき、部分群としてこの2元群が含まれているのはちょっと注目して良いでしょう。和についての群(加法群)と考えたときは、このような有限部分群は存在せず、例えば偶数の集合のような無限部分群のみになります。要するに有理数全体の集合での加法群と乗法群では構造が違っていて、乗法群は加法群と2元群との積になっています。そしてゼロは乗法群の元ではありません。
はい、03/27の記事で「和も積も群としての数学的な構造は区別がつきません」と書いたのは間違いでしたm(_ _)m。区別がつかないのは、有理数全体の加法群と正の有理数全体での乗法群との間でした。
ということで次回は初等数学を越える話をします。
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