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量とは-8- 長さの次元

2010-05-04 06:42:35 | 数学/数理科学
 前回の続きです。

 自然単位系と呼ばれるいくつかの単位系があります。これはいくつかの物理定数を単位とすることで、つまり1とすることで物理法則の式を単純化して扱いやすくできる単位系を使おうという発想です。確かに計算は楽になりますが、定数を1とすることは時に定数の存在を見えなくして式の構造を見えにくくすることにもつながります。4/11の記事で述べた価格と生産量の例で示したようなことです。

 しかし中には本当に定数を消してしまい、量の次元を削減する単位系もあります。幾何学単位系がいい例ですが、ここでは時間と長さの次元を同一視してしまいます。相対性理論では時間軸と空間軸を同じ4次元時空の座標軸と考えますから、時間軸の長さも空間軸の長さも同じ量と考えるのは自然なことなのです。当然ながら、多くの単位系では速度の次元を持つ光速度は、幾何学単位系では無次元量になります。

 さて4次元時空で同じ次元を持つ4方向の長さのうちで時間軸の長さは普通の単位系では残り3方向の長さとは異なる時間の次元を持つ量とされます。すると3次元空間の3方向の長さも異なる量に分けられないかという発想も出てきそうです。実際、地球表面上では高さは水平方向の距離とは別の量と考えることもできます。

 さらに、量同士の積や商を考えると、同じ長さの次元を持っていても方向が異なれば異なる種類の量となりうることがわかります。同じ方向の長さ同士の比は単なる数、分母の長さの何個分かという値です。が、垂直方向の長さ同士の比はアスペクト比と呼ばれる形状を表す指数です。また、同じ方向の長さと力の積は仕事量ですが、垂直方向の長さと力の積は回転モーメントであり全く別の量です。数学的には仕事量はスカラー量ですが、回転モーメントは外積(ベクトル積)の結果であるベクトル量として定義できるのです。

 そう言えば、角度の単位であるラジアンもまさに垂直方向の長さ同士の比です。角度というのは分類が難しかったらしく1995年までは国際単位系でも補助単位という扱いでした。が、それ以降は明確に無次元量とされています。ただ他の無次元量と区別するためにラジアンという単位名を付けることとされています。


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