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国民経済計算の基礎(3-1) -政府の取り分-

2012-03-19 06:13:17 | 経済学
 さて紹介してきました内閣府公表の国民経済計算データの国民総生産(生産側)には営業余剰・混合所得雇用者報酬とがありますが政府の収入となるはずの費目は純間接税(生産・輸入品に課される税)しか見あたりません。それは営業余剰・混合所得とされるものが法人税を差し引かれる前の利潤、いわゆる税引き前利益であるために、政府の取り分も含まれているからです。同様に雇用者報酬も所得税を差し引かれる前の値なので、やはり政府の取り分も含まれています。しかし間接税はこのような利潤や報酬には含まれず費用として計上されているために、特に国民総生産(生産側)の費目となっているのです。

 似たことですが、企業利潤から配当として家計に分配された分も国民経済計算では特に切り分けてはいません。これも営業余剰・混合所得に含めておいて、その先にどう配分されるかは考慮していません。まさしく(生産側)から見た金額であり分配面ではないのです。

 余談ですが、雇用者報酬という名称はよく考えると少し変です。これは雇われている人がもらう報酬なのですが、雇用者というのは普通は雇い主(employer)を指します。雇われている人(employee)がもらう報酬なら被雇用者報酬と呼ぶのが日本語的には正しいはずですが、慣例としてこうよばれているとのことです1)。まあ雇用者が支払う報酬と思えばよいのかも知れませんが雇用者所得ともなると、雇用者が支払う所得という解釈もなかなかつらいですね。おそらくは雇用者という言葉を雇われ者という風にも捉えてしまう人が多いと言うことではないでしょうか。雇用主とでも言えば明確なのでしょうが。

 さてまた別の話ですが、内閣府のサイトのSNAの見方の図などを見ると、市場価格表示要素価格表示要素費用表示という用語が出てきます。前者は間接税を含めた価格で後者は間接税を除いた価格です。間接税は付加価値から政府に分配された分であって付加価値には間違いないのですから、要素価格表示要素費用表示というものに意義は見出しにくいように、私には思えます。

----参考文献----
1) 鴇田忠彦;藪下史郎;足立 英之『初級・マクロ経済学 (有斐閣ブックス)』有斐閣 (1998/06) p3
  サラリーマンなどの賃金である雇用者所得(正確には被雇用者所得であるが、慣例としてこうよばれている)

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