9月20日。
「SCHOOL OF LOCK! LIVE TOUR "YOUNG FLAG 09"」
に参戦してきた。
Perfumeの対バンは以下の通り。
・間々田優
・9mm Parabellum Bullet
・Dragon Ash
会場はZepp東京。
オールスタンディングだ。
整理番号2300番台なので、のんびりと開場時間に到着。
すでに行列が数百メートルを越えていたが、自分には関係の無い話なので、ゆっくりと物販などを冷やかしつつ、カオスな参戦者たちを眺めていた。
やはり対バンがアレなので、ライヴ慣れしてそうな猛者ふうの若者が目立つ。
というか、ここにいるおっさんは確実にPerfumeファンだ。
相も変わらず、ファンクラブ会員限定の「青Tシャツ」で目立っていた。
↑他のバンドのファンのほとんどが「黒Tシャツ」なので、とても目立つ。
私は、Perfumeへの忠誠を示すために、最新のツアーTシャツ白を着込み、ツアータオルで参戦した。
当日は見事な快晴で、気温も上がったが、夜になれば寒くなるとの予測を立て、しっかりと防寒着を用意した。
その予測は見事に的中したのだが、着替えを持ってくるのを忘れていたことに気づき、仕方なくヤンフラのTシャツを購入。
共に参戦するAさん(今回のチケットを用意してくれた)と「2300番なんてまだまだ先だよアハハ」などといいながら小便をしたり散歩したりして過ごしていたら、すでに1階席の入場は終わっていて、2階の指定席入場が始まっていた。
完全に乗り遅れたorz…。
まあ、今回は番号も番号なので、後方でじっくり観戦するかと思っていたので、焦らずに入場した。
そして、何を思ったのか、私は最前列近くの扉から会場内に侵入した。
何度も何度も書いているが、私の身長は163センチです。
体重は50キロを割っています。
戦闘力は1200前後です。
「最前 or Die」
の道を突然に選択してみた。
やはり、頭のどこかで、「これがPerfume最後の『圧縮経験』になるかもしれない」という思いがあったのだろうか。
前回のツアーを最後に、Perfumeは単独ではオールスタンディングでの会場ではライヴを開催していない。
そして、それは今後も開催されるのかは分からない(色々な意味で)。
もう一つ。
Perfume First Tour 『GAME』
に収録されている会場の映像は、そのほとんどが今回の会場、Zepp東京だ。
あの映像で見られる、凄まじい圧縮っぷりを一度この身で体験してみたい、という思いもあったのかもしれない。
ちなみに私が経験した圧縮は、ZAZEN BOYSの最前列と、自慢だがフジロックの第一回目だ。
フジロックのことは、いつか別に書こうと思う。
あれに参加して生きて帰ってこれたのは今でも奇跡だったと思う。
死者が出ていないということが、未だに信じられない。
ぬるりぬるりとかしゆかサイド(ステージに向かって左側)壁際を伝って、ステージ前方10メートルほどに陣取る。
首に巻かれたタオルから判別するに、相当数のパフュオタが確認される。
後ろにいた他アーティストファンの若者は「俺はあのバーに乗って飛び上がるわ」などと話している。
なんて凶暴な若者だろうか。
15分ほど落ち着かない時間を過ごし、会場が暗転した。
と、そのときに民族大移動が始まった。
流れに乗り、凄まじいスピードで最前3列目を確保。
幸いにもそこはステージに向かって前方がすべて女性だったので、視界は良好だ。
最前列ではないが、死ななくても良さそうだった。
まったく覚えていないが、なんだか泣きそうになる映像がスクリーンに流れ(今になって書くが、これは「SCHOOL OF LOCK!」というラジオ番組のイベントだ)、DJであるやましげ校長とやしろ教頭が現れる。
正直に告白すると、私はこのラジオ番組をラジオで聴いたことがない。
意味が分からないやり取りを経て、やましろ校長が客席にダイブしやがった。
美しくクラウドサーフしてステージに帰着する校長。
嫌な予感がする…。
そして、会場を盛り上げに盛り上げて、トップを切る間々田優が登場。
今回の対バンは、大変に申し訳ないが、そのすべてが聴いたことも見たことも無い。
すべて初見だ。予習もしていない。
盛り上がった会場のボルテージを最低限にまで引き下げる間々田優の1曲目。
緊張感が漂って素晴らしかった。
2曲目以降は
「Perfume姉さん!先にダンスさせていただきやす!」
の奇声と共に、どう捉えればいいのか分からないパフォーマンスを披露。
目指す方向が本人のキャラクターと若干ずれているようなところに好感が持てた。
もう一度どこかで見ることがあれば、注目してみたいと感じた。
間々田優のステージが終了し、次のセッティングに入るスタッフたち。
見ているだけで楽しくなるほど、素早い動作で機材を片付けて行く。
そして機材は片付けられ続け、新しい機材はステージには運び込まれない。
この、何もない平面のステージ。これはPerfumeのステージだ。
俄然、心拍数は跳ね上がり血中酸素濃度が低下していく。
「3人以外に何もない」
なんて素敵なステージだろうか。
「畳2畳で再現可能なステージング」
なんて経費を削減するユニットだろうか。
SET LIST
1.edgeイントロ
2.ワンルーム・ディスコ(ショートVer)
3.I Still Love U(ショートVer)
4.Night Flight
5.Love The World
6.Dream Fighter
7.ポリリズム
8.チョコレイト・ディスコ
ステージ前面に垂れ下がるスクリーンに
「Perfume」の文字。
雄叫びと共に背後から強力な圧力がかかり、周辺の酸素が一気に少なくなった。
これを機に前方に割り込もうとする男たちが、必死に引き剥がそうと肩に手を回してくる。
その手を払いのける。
私の前にいた女の子の頭部は、私の胸部に凄まじい圧力をかける固形物と化した。
edgeのイントロが流れ、うねるように上下運動が始まる。
さらに少なくなる酸素。
その代わりに立ちこめる生臭いにおい。
そして、ステージに3人が現れ、ワンルーム・ディスコで幕を開ける。
1曲目にして全力で臨んだので、体力を大幅に消費。
それからはあまり覚えていない。
ただ、ひたすらに踊り狂った。
威勢の良かった隣のおっさんが、「のっち。のっち。のっち」とつぶやいてから、後半に行くにしたがって、死んでしまったかのように無言で揺れていたのが印象的だった。
彼が「のっち」とつぶやいたのは、MCのときだった。
3人がバラけてステージに広がったとき、我々のほうにはのっちが来たのだ。
なんと言いましょうか。
手を伸ばせば届きそうなほどに近くに感じた。
もちろん、こんな至近距離でのっちを見たのは初めてだ。
陳腐な表現しか思いつかないが、凄まじい美しさだった。
どうでもいい情報だが、前回参戦した仙台公演はのっちサイドほぼ最前列。次に参戦する名古屋公演はのっちサイド。今日はかしゆかサイドなのにのっちサイド。
神はなんと気まぐれなのだろうか。
そして、注目のかしゆかだが、仙台に引き続き至近距離でダンスパフォーマンスを凝視した。
やや確信に近づいた感があるが、私はかしゆかのダンスパフォーマンスを至近距離で見ると、ほのかな「恐怖心」が沸き立つようだ。
なぜ「恐怖心」などが発生するのかは目下研究中だが、大まかに言えば、かしゆかがダンスをしている動作が、あまりにも人間離れして見えていることが原因だと思われる。
それと、ダンスしているときと喋っているときのギャップも埋められない。
自分の中で正確な評価が下せない。これが「恐怖心」のポイントだと思う。
やはり人間は、「理解できない」ものに恐怖を感じる。
簡単に言うと、意味が分からんほどに可愛かった。
そしてあ~ちゃん。
ワンマンではないのに、相変わらずの天才的MCを惜しげもなく披露してくれた。
勢いに乗って「セイホー!」のコール&レスポンスを始めたときに、のっちが「うへえ。それやんの?」という表情をしたので、MCはあ~ちゃんのアドリブ部分が多いのだと分かった。
それに、前方で圧縮の波に揉まれていると、あ~ちゃんの長いMCがとてつもなく効く。
本人たちも息を整える時間に使うのだろうが、最前列のおっさんたちも酸素が必要だ。
ライヴ後のオフ会でも意見が出ていたが、今回のセットリストには不満の声が多かった。
あ~ちゃん「今日はアウェイという気持ちで来ました!ところで、アウェイって意味知っとる?」
かしゆか「『居心地悪い』って意味じゃろ」
というやり取りがあったが、アウェイに殴りこみをかけるには、もっと最適な楽曲があったはずだ。
「エレクトロ・ワールド」や「GAME」や「シークレットシークレット」や、それこそ「edge」のフルバージョンなどを披露していただきたかった。
Perfumeを初めて見る人が多かっただろうが、行儀のいい連中ではない。
あまりにも無難にまとめられたセットリストだった。
が、ポリリズムで終わると読んで最後に思い切りはっちゃけた直後に来たチョコレイト・ディスコにはやられた。
そして、やっと最後にかしゆかがこちらに煽りに来てくれた(涙)。
最後に、校長と教頭が出てきて、のっちの21歳の誕生日をみんなでお祝いした。
のっち21歳の誕生日おめでとう!
お風呂からざばっと出た直後のように汗だくになってライヴ終了。
最後まで最前で見ようなどという気は粉みじんに砕け散って、一気に離脱の波に乗った。
次々に離脱していくパフュオタを、鼻をつまんで見送る他アーティストのファンの女の子が印象的だった。
そして、初めて最前列付近でPerfumeの圧縮を経験したが、今後は機会があっても後方でまったりと見ることにすると決めた。
そうやってじっくりとステージを見るほうが、自分には向いているようだ。
そのことが確認できただけでも大きな成果だった。
一気に会場の外まで出て、通路にへたり込む。
肉体労働をしているくせに、我ながら情けない体力だ。
放心状態でタバコを吸っていると、隣のおっさんに声をかけられ、しばらく話し込んだ。
お互いに、仕事の合間をぬってライヴに参戦している。
ちょっとの間だったが、楽しい会話が出来て、嬉しかった。
「次のライヴが始まりますよ~」
というアナウンスがあったが、腰が重く、中々動き出せなかった。
おっさん頑張れ。
9mm Parabellum Bulletの演奏途中で会場に戻る。
もちろん最前に行く気は無く、次は一番後ろの扉から入った。
「音が悪い」と評判のZepp東京だが、最後方は音が悪いというか、届いていない。
数メートル先に、見えない壁でもあるかのような印象だった。
すべての曲が初見の9mmだったが、がっつり頭を振れた。
というか、頭を振りやすく作ってあるように感じた。
最前列付近では人間が飛び上がったり、ごろごろと転がっているのが見える。
「もしもPerfumeがトリだったら…」と考えると恐ろしい。
しかし、最近の若い人は演奏が上手いなあ。
汗が引かない内に冷房直下だったので凍える。
再び外に出て、汗だくのシャツを着替える。
さて。
今宵のトリであるDragon Ashの登場だ。
次はスタート前から会場に入って、開演を待った。
同じ場所で見ようと思ったのだが、先ほどよりも人が増えている。
やはり、Dragon Ashの客が一番多かったのだろうか。
会場が暗転し、メンバーが登場する。
中央で華麗に赤い旗を振り回す男性が確認された。
「お。降谷さん、ダンス上手いんだなあ」
などと思っていたら、降谷さんは中央のギターを持った小柄な人で、赤い旗を振っていた男性は、ダンサーだった。
まず始めに衝撃を受けたのは、この「ダンサー(アジテーター?)がいる」ということだった。
パフュオタのくせに、悪い言い方で恐縮だが、「踊っているだけの人がいる」ということが衝撃だ。
私は終始右側のダンサーさんのダンスに目を奪われ続けた。
うーん。
わざわざアジテートしなくてもいいような気がするのだけど…。
それともう一つびっくりしたのは、もの凄くラテン寄りな楽曲だったことだ。
後に聞いた話では、2000年以降に音楽性に変化があったようだ。
かつてCDが擦り切れるほどに聴いたSublimeが脳裏に思い起こされる。
馬場育三さん発光しているのも気になった。
しかし、生まれて初めてのDragon Ashは、とても楽しめた。
飛んだり跳ねたり、コールは分からなかったが、熱というか、エネルギーは感じられた。
Dragon Ashの演奏中に、今日の4組のパフォーマンスをどれも楽しめた(一つは突出しているが)自分が嬉しくなった。
やっぱり音楽は楽しいね。
その後、アンコールがあったのかどうかは分からないが、オフ会の時間が迫っていたので、本編が終了した後に会場を出た。
後悔しても仕方ないことだが、体力を消耗しすぎて、歩き方がおかしくなっていた。
新橋にてオフ会に参加させていただき、こちらも存分に楽しめた。
私は翌日に仕事を控えていたので、きっかり終電を逃した時間にオフ会を退散し、タクシーに乗車して1万円を消費した。
そして、今度の日曜日は再びPerfumeの名古屋公演が待っている…。
これは、往復600キロ以上の、人生初のロングツーリングとセットで楽しむ予定だ。
人間は、楽しすぎて死ぬことはないと思うが、こんなにも楽しいことが連続すると、どこか知らないところで不幸の種が大きく大きく育って、突然に目の前で発芽しそうで恐ろしい。
もしも不幸の種が存在するのであれば、できれば小出しでお願いします。
「SCHOOL OF LOCK! LIVE TOUR "YOUNG FLAG 09"」
に参戦してきた。
Perfumeの対バンは以下の通り。
・間々田優
・9mm Parabellum Bullet
・Dragon Ash
会場はZepp東京。
オールスタンディングだ。
整理番号2300番台なので、のんびりと開場時間に到着。
すでに行列が数百メートルを越えていたが、自分には関係の無い話なので、ゆっくりと物販などを冷やかしつつ、カオスな参戦者たちを眺めていた。
やはり対バンがアレなので、ライヴ慣れしてそうな猛者ふうの若者が目立つ。
というか、ここにいるおっさんは確実にPerfumeファンだ。
相も変わらず、ファンクラブ会員限定の「青Tシャツ」で目立っていた。
↑他のバンドのファンのほとんどが「黒Tシャツ」なので、とても目立つ。
私は、Perfumeへの忠誠を示すために、最新のツアーTシャツ白を着込み、ツアータオルで参戦した。
当日は見事な快晴で、気温も上がったが、夜になれば寒くなるとの予測を立て、しっかりと防寒着を用意した。
その予測は見事に的中したのだが、着替えを持ってくるのを忘れていたことに気づき、仕方なくヤンフラのTシャツを購入。
共に参戦するAさん(今回のチケットを用意してくれた)と「2300番なんてまだまだ先だよアハハ」などといいながら小便をしたり散歩したりして過ごしていたら、すでに1階席の入場は終わっていて、2階の指定席入場が始まっていた。
完全に乗り遅れたorz…。
まあ、今回は番号も番号なので、後方でじっくり観戦するかと思っていたので、焦らずに入場した。
そして、何を思ったのか、私は最前列近くの扉から会場内に侵入した。
何度も何度も書いているが、私の身長は163センチです。
体重は50キロを割っています。
戦闘力は1200前後です。
「最前 or Die」
の道を突然に選択してみた。
やはり、頭のどこかで、「これがPerfume最後の『圧縮経験』になるかもしれない」という思いがあったのだろうか。
前回のツアーを最後に、Perfumeは単独ではオールスタンディングでの会場ではライヴを開催していない。
そして、それは今後も開催されるのかは分からない(色々な意味で)。
もう一つ。
Perfume First Tour 『GAME』
に収録されている会場の映像は、そのほとんどが今回の会場、Zepp東京だ。
あの映像で見られる、凄まじい圧縮っぷりを一度この身で体験してみたい、という思いもあったのかもしれない。
ちなみに私が経験した圧縮は、ZAZEN BOYSの最前列と、自慢だがフジロックの第一回目だ。
フジロックのことは、いつか別に書こうと思う。
あれに参加して生きて帰ってこれたのは今でも奇跡だったと思う。
死者が出ていないということが、未だに信じられない。
ぬるりぬるりとかしゆかサイド(ステージに向かって左側)壁際を伝って、ステージ前方10メートルほどに陣取る。
首に巻かれたタオルから判別するに、相当数のパフュオタが確認される。
後ろにいた他アーティストファンの若者は「俺はあのバーに乗って飛び上がるわ」などと話している。
なんて凶暴な若者だろうか。
15分ほど落ち着かない時間を過ごし、会場が暗転した。
と、そのときに民族大移動が始まった。
流れに乗り、凄まじいスピードで最前3列目を確保。
幸いにもそこはステージに向かって前方がすべて女性だったので、視界は良好だ。
最前列ではないが、死ななくても良さそうだった。
まったく覚えていないが、なんだか泣きそうになる映像がスクリーンに流れ(今になって書くが、これは「SCHOOL OF LOCK!」というラジオ番組のイベントだ)、DJであるやましげ校長とやしろ教頭が現れる。
正直に告白すると、私はこのラジオ番組をラジオで聴いたことがない。
意味が分からないやり取りを経て、やましろ校長が客席にダイブしやがった。
美しくクラウドサーフしてステージに帰着する校長。
嫌な予感がする…。
そして、会場を盛り上げに盛り上げて、トップを切る間々田優が登場。
今回の対バンは、大変に申し訳ないが、そのすべてが聴いたことも見たことも無い。
すべて初見だ。予習もしていない。
盛り上がった会場のボルテージを最低限にまで引き下げる間々田優の1曲目。
緊張感が漂って素晴らしかった。
2曲目以降は
「Perfume姉さん!先にダンスさせていただきやす!」
の奇声と共に、どう捉えればいいのか分からないパフォーマンスを披露。
目指す方向が本人のキャラクターと若干ずれているようなところに好感が持てた。
もう一度どこかで見ることがあれば、注目してみたいと感じた。
間々田優のステージが終了し、次のセッティングに入るスタッフたち。
見ているだけで楽しくなるほど、素早い動作で機材を片付けて行く。
そして機材は片付けられ続け、新しい機材はステージには運び込まれない。
この、何もない平面のステージ。これはPerfumeのステージだ。
俄然、心拍数は跳ね上がり血中酸素濃度が低下していく。
「3人以外に何もない」
なんて素敵なステージだろうか。
「畳2畳で再現可能なステージング」
なんて経費を削減するユニットだろうか。
SET LIST
1.edgeイントロ
2.ワンルーム・ディスコ(ショートVer)
3.I Still Love U(ショートVer)
4.Night Flight
5.Love The World
6.Dream Fighter
7.ポリリズム
8.チョコレイト・ディスコ
ステージ前面に垂れ下がるスクリーンに
「Perfume」の文字。
雄叫びと共に背後から強力な圧力がかかり、周辺の酸素が一気に少なくなった。
これを機に前方に割り込もうとする男たちが、必死に引き剥がそうと肩に手を回してくる。
その手を払いのける。
私の前にいた女の子の頭部は、私の胸部に凄まじい圧力をかける固形物と化した。
edgeのイントロが流れ、うねるように上下運動が始まる。
さらに少なくなる酸素。
その代わりに立ちこめる生臭いにおい。
そして、ステージに3人が現れ、ワンルーム・ディスコで幕を開ける。
1曲目にして全力で臨んだので、体力を大幅に消費。
それからはあまり覚えていない。
ただ、ひたすらに踊り狂った。
威勢の良かった隣のおっさんが、「のっち。のっち。のっち」とつぶやいてから、後半に行くにしたがって、死んでしまったかのように無言で揺れていたのが印象的だった。
彼が「のっち」とつぶやいたのは、MCのときだった。
3人がバラけてステージに広がったとき、我々のほうにはのっちが来たのだ。
なんと言いましょうか。
手を伸ばせば届きそうなほどに近くに感じた。
もちろん、こんな至近距離でのっちを見たのは初めてだ。
陳腐な表現しか思いつかないが、凄まじい美しさだった。
どうでもいい情報だが、前回参戦した仙台公演はのっちサイドほぼ最前列。次に参戦する名古屋公演はのっちサイド。今日はかしゆかサイドなのにのっちサイド。
神はなんと気まぐれなのだろうか。
そして、注目のかしゆかだが、仙台に引き続き至近距離でダンスパフォーマンスを凝視した。
やや確信に近づいた感があるが、私はかしゆかのダンスパフォーマンスを至近距離で見ると、ほのかな「恐怖心」が沸き立つようだ。
なぜ「恐怖心」などが発生するのかは目下研究中だが、大まかに言えば、かしゆかがダンスをしている動作が、あまりにも人間離れして見えていることが原因だと思われる。
それと、ダンスしているときと喋っているときのギャップも埋められない。
自分の中で正確な評価が下せない。これが「恐怖心」のポイントだと思う。
やはり人間は、「理解できない」ものに恐怖を感じる。
簡単に言うと、意味が分からんほどに可愛かった。
そしてあ~ちゃん。
ワンマンではないのに、相変わらずの天才的MCを惜しげもなく披露してくれた。
勢いに乗って「セイホー!」のコール&レスポンスを始めたときに、のっちが「うへえ。それやんの?」という表情をしたので、MCはあ~ちゃんのアドリブ部分が多いのだと分かった。
それに、前方で圧縮の波に揉まれていると、あ~ちゃんの長いMCがとてつもなく効く。
本人たちも息を整える時間に使うのだろうが、最前列のおっさんたちも酸素が必要だ。
ライヴ後のオフ会でも意見が出ていたが、今回のセットリストには不満の声が多かった。
あ~ちゃん「今日はアウェイという気持ちで来ました!ところで、アウェイって意味知っとる?」
かしゆか「『居心地悪い』って意味じゃろ」
というやり取りがあったが、アウェイに殴りこみをかけるには、もっと最適な楽曲があったはずだ。
「エレクトロ・ワールド」や「GAME」や「シークレットシークレット」や、それこそ「edge」のフルバージョンなどを披露していただきたかった。
Perfumeを初めて見る人が多かっただろうが、行儀のいい連中ではない。
あまりにも無難にまとめられたセットリストだった。
が、ポリリズムで終わると読んで最後に思い切りはっちゃけた直後に来たチョコレイト・ディスコにはやられた。
そして、やっと最後にかしゆかがこちらに煽りに来てくれた(涙)。
最後に、校長と教頭が出てきて、のっちの21歳の誕生日をみんなでお祝いした。
のっち21歳の誕生日おめでとう!
お風呂からざばっと出た直後のように汗だくになってライヴ終了。
最後まで最前で見ようなどという気は粉みじんに砕け散って、一気に離脱の波に乗った。
次々に離脱していくパフュオタを、鼻をつまんで見送る他アーティストのファンの女の子が印象的だった。
そして、初めて最前列付近でPerfumeの圧縮を経験したが、今後は機会があっても後方でまったりと見ることにすると決めた。
そうやってじっくりとステージを見るほうが、自分には向いているようだ。
そのことが確認できただけでも大きな成果だった。
一気に会場の外まで出て、通路にへたり込む。
肉体労働をしているくせに、我ながら情けない体力だ。
放心状態でタバコを吸っていると、隣のおっさんに声をかけられ、しばらく話し込んだ。
お互いに、仕事の合間をぬってライヴに参戦している。
ちょっとの間だったが、楽しい会話が出来て、嬉しかった。
「次のライヴが始まりますよ~」
というアナウンスがあったが、腰が重く、中々動き出せなかった。
おっさん頑張れ。
9mm Parabellum Bulletの演奏途中で会場に戻る。
もちろん最前に行く気は無く、次は一番後ろの扉から入った。
「音が悪い」と評判のZepp東京だが、最後方は音が悪いというか、届いていない。
数メートル先に、見えない壁でもあるかのような印象だった。
すべての曲が初見の9mmだったが、がっつり頭を振れた。
というか、頭を振りやすく作ってあるように感じた。
最前列付近では人間が飛び上がったり、ごろごろと転がっているのが見える。
「もしもPerfumeがトリだったら…」と考えると恐ろしい。
しかし、最近の若い人は演奏が上手いなあ。
汗が引かない内に冷房直下だったので凍える。
再び外に出て、汗だくのシャツを着替える。
さて。
今宵のトリであるDragon Ashの登場だ。
次はスタート前から会場に入って、開演を待った。
同じ場所で見ようと思ったのだが、先ほどよりも人が増えている。
やはり、Dragon Ashの客が一番多かったのだろうか。
会場が暗転し、メンバーが登場する。
中央で華麗に赤い旗を振り回す男性が確認された。
「お。降谷さん、ダンス上手いんだなあ」
などと思っていたら、降谷さんは中央のギターを持った小柄な人で、赤い旗を振っていた男性は、ダンサーだった。
まず始めに衝撃を受けたのは、この「ダンサー(アジテーター?)がいる」ということだった。
パフュオタのくせに、悪い言い方で恐縮だが、「踊っているだけの人がいる」ということが衝撃だ。
私は終始右側のダンサーさんのダンスに目を奪われ続けた。
うーん。
わざわざアジテートしなくてもいいような気がするのだけど…。
それともう一つびっくりしたのは、もの凄くラテン寄りな楽曲だったことだ。
後に聞いた話では、2000年以降に音楽性に変化があったようだ。
かつてCDが擦り切れるほどに聴いたSublimeが脳裏に思い起こされる。
馬場育三さん発光しているのも気になった。
しかし、生まれて初めてのDragon Ashは、とても楽しめた。
飛んだり跳ねたり、コールは分からなかったが、熱というか、エネルギーは感じられた。
Dragon Ashの演奏中に、今日の4組のパフォーマンスをどれも楽しめた(一つは突出しているが)自分が嬉しくなった。
やっぱり音楽は楽しいね。
その後、アンコールがあったのかどうかは分からないが、オフ会の時間が迫っていたので、本編が終了した後に会場を出た。
後悔しても仕方ないことだが、体力を消耗しすぎて、歩き方がおかしくなっていた。
新橋にてオフ会に参加させていただき、こちらも存分に楽しめた。
私は翌日に仕事を控えていたので、きっかり終電を逃した時間にオフ会を退散し、タクシーに乗車して1万円を消費した。
そして、今度の日曜日は再びPerfumeの名古屋公演が待っている…。
これは、往復600キロ以上の、人生初のロングツーリングとセットで楽しむ予定だ。
人間は、楽しすぎて死ぬことはないと思うが、こんなにも楽しいことが連続すると、どこか知らないところで不幸の種が大きく大きく育って、突然に目の前で発芽しそうで恐ろしい。
もしも不幸の種が存在するのであれば、できれば小出しでお願いします。