タイムラグ

手紙しか連絡手段のなかった時代は、時間の幅があったんだろう。

モンゴルの遊牧民の間ではいまでも「ちょっと遅れます」という「ちょっと」が一ヶ月くらいのことだと聞いた。

わたしは携帯をもっているけれど、ほとんど使っていない。だからあまり連絡のスピードについてはせっかちではないーーーーそう思っていたのだが、そんなことは全然なかった。
半日も連絡がつかないとソワソワ。
かかってきた電話には絶対でないといけないと思い込み、風呂に入る時も風呂場のすぐ外に携帯電話をおいておいた。

「公衆電話まで4キロ」という不便。
「どっこいともだちは携帯電話をもっている」という便利。
「車で４キロおくってもらえちゃう」という便利。
「郵便は翌々日に配達される」という不便。
「どっこい予約変更すれば航空券を送らずとも飛行機に乗れる」という便利。

不便と便利とが入り乱れて、それぞれがそれぞれの便利と不便を使っての今回の結果だったが、「連絡がとりにくい」という不便は悪くない。
まったく悪くない。
便利は便利でそれも悪くないが、しかし「即座に連絡がとれさえすれば上手く行く」というのは誤りだ。
連絡がとれなくて、その間に考えたりまとめたりシュミレーションしたり他の人に話をしたりしたことは、今回とてもよかった。子もたぶんそうだと思う（もしかしたら彼女はさっさと連絡をとってさっさと帰って来たかったかもしれないけれど）。

ひと呼吸おくこと。
時差をあえて作ること。

忘れがちな大事なことだ。
メールとか電話とか、やめちゃったらいいような気がしている。
いや、やめないけどね。
だけどそう思ったことは覚えておいて、少なくとも「連絡が取れない！キー！！」ってなるのだけは今後やめようと思う。