野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

高原の雰囲気が似つかわしいマツムシソウ(入笠山シリーズ04)

2019年10月15日 09時00分15秒 | 

マツムシソウはいかにも高原の雰囲気が似つかわしい花だ。探すときにはみつからないのも、あるところにはあふれるほどに咲いている。名前も典雅だ。高原ではヒョウモンチョウが好んでこの花に集まっていた。虫たちが上に乗りやすい構造になっているので、多くの昆虫をみかける花だ。

(2019-09 長野県 入笠山) 

マツムシソウ(松虫草、Scabiosa japonica)は、マツムシソウ科マツムシソウ属の越年草・多年草。北海道、本州、四国、九州に分布する日本の固有種で、山地の草原に生育する。

特徴
草丈はおよそ60-90 cmで、葉は対生し、羽状に裂ける。夏から秋にかけて紫色の花をつける。花は頭状花序で、花の大きさは径4 cmほどである。開花時期は、8~10月。

葉を出して冬を越し、花を付けてから枯れる冬型一年草(越年草)だが、高地では枯れずに2年目の葉を出す多年草である。

マツムシ(スズムシ)が鳴くころに咲くことが和名の由来であるとする説がある。薬草として皮膚病などに用いられることもある。日本の31の各都道府県で減少傾向にあり、各々のレッドリストに指定されている。

属名の「スカビオサ」という名前で園芸品種として栽培されるのは、近縁種のセイヨウマツムシソウ(Scabiosa atropurpurea)であることが多い。


ユーモラスな名前をもらったタヌキマメ

2019年10月15日 07時12分06秒 | 

タヌキマメという命名はユーモラスだ。写真にみられるように果実を包む萼がタヌキの体毛のようだという説もあるし、もっと別のことを考える人もいるだろう。花はマメ科の植物らしく、小さいけれどもきれいな形と色をしている。調布の野草園で育てられていたもので、ふだんはあまり見かけたことがない花だ。

(2019-10 東京都 調布野草園) 

 

 

 

タヌキマメ

科名:マメ科
学名:Crotalaria sessiliflora
原産地:日本 朝鮮半島 台湾 中国 熱帯アジア
草丈:20cm-70cm
主な開花期:8月-9月

タヌキマメとは

小さいけど、キレイな色をした花 全面が毛で被われている萼
東は日本から西はインドまで広く分布するマメ科タヌキマメ属の植物で、花後に枯れる一年草です。日本では本州(宮城より南)、四国、九州、南西諸島まで分布します。土手や池の周りのような湿り気のある場所によく自生しますが、平地や丘の日当たりのよい草地や道端でも見ることができます。

細長い笹のような葉っぱを出して、草丈70cmほどに生長します。夏の終わり~秋にかけて、茎の先端にいくつものつぼみを付けて1~数輪ずつ、下から順に開花します。花は蝶型で径1cmほど、色は濁りのない青紫色です。花後に萼が生長して大きくなり、果実をすっぽりと包みます。萼には粗めの茶色い毛がふさふさに生えます。果実は長さ1.5cmほどの長だ円形で、エンドウマメやエダマメの莢(豆果と言います)をごく小さくしてぱんぱんにふくらましたような姿です。熟すと表面は焦げ茶から黒っぽくなり、縦に裂けてタネをとばします。

漢字を当てると「狸豆」で、果実を包む萼がタヌキの体毛のようだから、花を正面から見るとタヌキの顔のように見えるから、など諸説あります。


小さな紫の花を密につけるキツネノマゴ

2019年10月14日 10時02分57秒 | 

キツネノマゴは小さな紫の花を密につけるが、目立たないので、足元で踏んづけられそうである。よく見ると可憐な花なのだが、人々の眼にはあまりとまらないようだ。夏の終わりころには珍しかったが、秋になると道端でふつうにみかけるようになった。

(2019-9 川崎市 道端) 

キツネノマゴ(Justicia procumbens L.)は、キツネノマゴ科キツネノマゴ属の一年草である。

特徴
道端に生える小柄な雑草である。やや湿ったところを好む。夏に赤紫の小さな花をつける。本州から九州、朝鮮、中国からインドシナ、マレーシア、インドなどに分布する。

茎は根元がやや横に這い、分枝してやや立ち上がる。高さは10-40cm程度、茎は下向きの短い毛が生えている。 茎には節があり、節ごとに葉を対生する。葉は長さが2-4cm短い柄があって卵形で柔らかく、先端は少しとがる。両面に毛が生えている。

花は8-10月ころ。茎の先端から穂状花序を出す。花序には花が密につき、それぞれの花は基部に苞があるので、外見ではその苞が並んだ棒状の姿に見える。萼は深く5裂。花はいわゆる唇花型で、上唇は小さく三角形で、先端は2裂、下唇は丸く広がって反り、先端は3裂、全体は白だが、下唇が広く赤紫なので、赤紫の花との印象が強い。

名前の由来はよく分かっていない。花序が花の咲いたあとに伸びるのがキツネの尾のようだとか、花の形がキツネの顔を思わせるからなどの説も見かけるが、根拠に乏しい。腰痛、風邪ひきに薬効があるともいうが、あまり用いられない。よく見れば可憐な花をつけるが、小さくありふれていることから注目度は低い。


クリスマスの飾りつけのようなクサボタンの花(入笠山シリーズ03)

2019年10月14日 09時09分38秒 | 

薄紫の花をつけるクサボタンも、あまり目立たない植物だが、鐘の形をした花がたわわについているのをみると、感動する。ともかく豪奢な花なのだ。なんだか一人でクリスマスの飾りつけをしているような植物だ。

(2019-09 長野県 入笠山) 

クサボタン(草牡丹、学名:Clematis stans )は、キンポウゲ科センニンソウ属の半低木。有毒植物。

特徴
つる性が多いセンニンソウ属の仲間であるが、茎は直立し、高さは1mになる。冬には大部分が枯れるが、茎の基部が木質化するため、茎の下部は残る。葉は1回3出複葉で、長い葉柄をもち茎に対生する。小葉は長さ4-13cmの卵形で3浅裂し、先端は鋭くとがり、縁は不ぞろいなあらい鋸歯がつく。

花期は8-9月。茎の先端や葉腋から集散状の花序を出し、淡紫色の花を多数つけ、しばしば円錐状になる。細い鐘状になる4枚の花弁に見えるのは萼片で、花弁はない。萼片は長さ1.2-2cmで、基部は筒状になり、先端は反り返る。萼片の外面は白い短毛が密生する。花には雄蕊、雌蕊ともにあるが、その両方に機能があるとは限らず、雄花と雌花に分化している。果実は倒卵形の痩果で、花後、花柱が長さ15-20mmに伸び、羽毛状になる。

和名は、葉がボタン(牡丹)に似ることからついた。


ここよりは山坂けはし駒つなぎ

2019年10月14日 07時27分56秒 | 

マメ科のコマツナギは、赤い蝶型の花をつける同じ仲間の植物のうちでも、すっくと立ち上がるので見分けやすい。これは分類では草ではなく木であり、茎は馬をつなげるほど強いというが、あまりそんな感じはしない。それでもアレチヌスビトハギなどと比べると、小さな木としての貫禄があるようだ。名前に面白みのある花なので、俳句の世界でもそれなりに歌われている。「ここよりは山坂けはし駒つなぎ 増田宇一」。

(2019-9 川崎市 道端) 

コナツナギ(学名 : Indigofera pseudotinctoria)は、マメ科の被子植物である。日本の本州から九州、朝鮮半島、中国に分布する。

概要
コマツナギは、日当たりの良い、原野、道端などに生える草本状の小型の低木である。根は、硬くて丈夫である。幹は高さ60 - 90cmで、径1.5cmぐらいになる。枝は細長く緑色であり、多数分岐する。葉は互生で、短い葉柄を持った奇数羽状複葉である。小葉は、4 - 5対につき、長楕円形あるいは、倒卵形である。先は円形で細い微凸起があり、基部も円形でごく短い柄がある。長さ10 - 15mm、幅5 - 12mmで、全縁である。葉の両面には、柔らかい伏毛が多い。夏から秋にかけて葉腋から花柄を出し、長さ3cmばかりの総状花序をつけ、紅紫色の美しいチョウ状の花を開く。花は長さ5mm、小花柄は萼よりも短い。萼は筒状で、5裂し、有毛である。開花後、長さ3cmばかりの円柱形の豆果を生じ、中に3 - 8個の種子を含む。和名は「駒繋ぎ」という意味で、茎が丈夫で、馬をつなぎとめることができることから名付けられた。

インディゴに使われるのはこの品種ではなく、タイワンコマツナギ、ナンバンコマツナギ等である。

駒繋

ここよりは山坂けはし駒つなぎ 増田宇一
女人の香満たして香舗駒つなぎ 田中水桜
片陰や壁に錆びゆく駒つなぎ 嶋田麻紀
登り来て帽子掛けゐる駒繋 小野元夫(あざみ)
葉に垂るる短き莢や駒繋 丹羽玄子
踏んでゐしやさしき花が駒繋 中村若沙
金剛の駒繋草よぢのぼる 本田一杉「逞n!」
駒つなぎ咲きゐて鮠も釣れゐたり 川島彷徨子
駒つなぎ机の上に別れ惜し 土田初枝
駒繋咲いてゐるなり*かがいの地 町田しげき
夏らしき日のまれなりし駒つなぎ 右城暮石 散歩圏
安曇野は川音さやぎ駒繋 飴山實 句集外
日高く吉野に入るや駒繋 森澄雄
校倉のかげに少年駒つなぎ 岡井省二 有時
駒繋咲いて青松白砂あり 後藤比奈夫


水辺で小さな黄緑色の花をつけるゴキヅル

2019年10月13日 09時36分45秒 | 

水辺で小さな黄緑色の花をつけるゴキヅル。うっかりすると見逃してしまう。ゴキとは合器(碁石を入れる器)のことらしい。果実がその形に似ているのだという。面白い名前をもらったものだ。この時期にまだ果実は実っていなかったが。

(2019-09 東京都 神代植物公園) 

 

 

ゴキヅル(合器蔓)
つる性1年草
北海道-九州の水辺に生える。葉は長さ5-10cm、幅2.5-7cmの三角状披針形で、先端は尖る。葉腋から花序をだし、小さな黄緑色の花をつける。雌雄同株。花序の上部に雄花が総状につき、基部に雌花が1個つく。花は5全裂し、裂片は細長い。萼も同じ形なので、花びらが10個あるように見える。雄花の中心部には5個の雄しべがある。雌花は雌しべのまわりには退化した雄しべがある。果実は長さ約1.5cmの蓋果(がいか)で、熟すと横に割れる。なかには黒褐色の種子が縦に2個並んでいる。花期は8-11月。(野に咲く花)
学名は、Actinostemma tenerum
ウリ科ゴキヅル属


目立たない花だけに、みつけるとうれしくなるハナイカリ(入笠山シリーズ02)

2019年10月13日 08時59分24秒 | 

ハナイカリは目立たない花だ。花が黄色から緑色だからだろう。それでもよく見ると、碇の形をした花がたくさんついていて、うれしくなる。目立たない花だけに、みつけると愛着がわく。

(2019-09 長野県 入笠山) 

 

ハナイカリ  花碇、花錨
[学名] Halenia corniculata (L.) Cornaz
リンドウ科 Gentianaceae  ハナイカリ属
 茎の断面は綾のある四角形。葉は対生し、長さ2~6㎝の長楕状卵円形、3~5脈があり、全縁。葉先が尖り、葉の基部は楔形になり葉柄に続く。茎上部の葉腋の集散花序に長い花柄のある淡黄色花を上向き~横向きにつける。花冠の先は4裂して尖る。花冠の基部には淡黄色~白色の4個の距があり、錨形に見える。距は長さ3~7㎜。萼は4深裂し、線形の裂片が距の間から尖って見える。蒴果は長さ6~10㎜。種子は長さ約1㎜。2n=22
[花期] 8~10月
[草丈] 10~60㎝
[生活型] 越年草
[生育場所] 山地の草原
[分布] 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア


きれいな花をつけるニラ

2019年10月13日 07時37分38秒 | 

ニラは野菜としては馴染みだが、きれいな花をつけることはあまり知られていないようだ。万葉の頃はミラと呼ばれていたらしい。それが中世の頃にニラとかわり、女房言葉では文字数からきたフタモジという名前で呼ばれたらしい。面白い由来である。歴史の古い植物だけに俳句でも好まれた季題である。「つれづれにとればあつき手韮の花  飯田龍太」はうまいかも。

(2019-9 川崎市 道端) 

 

 

 

ニラ(韮、韭、Allium tuberosum)はネギ属に属する多年草。緑黄色野菜である。


名称
『古事記』では加美良(かみら)、『万葉集』では久々美良(くくみら)、『正倉院文書』には彌良(みら)として記載がある。このように、古代においては「みら」と呼ばれていたが、院政期頃から不規則な転訛形「にら」が出現し、「みら」を駆逐して現在に至っている。近世の女房言葉に二文字(ふたもじ)がある。

方言では、ふたもじ(二文字。千葉県上総地方)、じゃま(新潟県中越地方)、にらねぎ(韮葱。静岡県、鳥取県などの一部)、こじきねぶか(乞食根深。愛知県、岐阜県の一部)、とち(奈良県山辺郡、磯城郡)、へんどねぶか(遍路根深。徳島県の一部)、きりびら(沖縄県島尻郡)、ちりびら(沖縄県那覇市)、きんぴら(沖縄県那覇市)、んーだー(沖縄県与那国島)などがある。

特徴
夏には葉の間から30 - 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 - 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 - 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。

本種の原種は、中国北部からモンゴル・シベリアに自生する Allium ramosum で、3,000年前以上前に栽培化されたと考えられる。この種とニラを同一種とみなす場合もある。株分けまたは種によって増やす。

全草に独特の匂いがある。このため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。

韮 の例句 
つれづれにとればあつき手韮の花  飯田龍太
なつかしき故の頬杖韮の花 高野素十
ほとゝぎす野韮ぬく子も居ざりけり 寥松
わが苦き歌韮の花韮の夜明 佐藤鬼房
人去つて風残りけり韮の花 岸田稚魚 負け犬
傘さして韮つむ人のにくさ哉 政岡子規 韮
厄介と言へば死ぬこと韮の花 藤田湘子 てんてん
吹きこぼれたる雑炊の韮匂ふ 清崎敏郎
夕煙の端山恋しや韮の花 佐藤鬼房
家畜倦み山風なごむ韮畠 飯田蛇笏 山響集
島の雨執ねく降れる韮の花 清崎敏郎
巾でみずから縊る須弥山麓の韮 橋閒石 風景
帋漉も雨乞ふくれや韮もゆる 鈴木道彦
忘れんや韮噛んでわかれゆきし日を 加藤秋邨
怠けては墓場をあるく韮の花 秋元不死男
手籠は韮 纏足老婆がまた振り向く 伊丹三樹彦
文人の自殺のむかし韮の花 鷹羽狩行
暑に負けて過すに韮の花咲ける 細見綾子
梨老いて花まばらなり韮畠 政岡子規 梨の花
流人井戸涸れて久しや韮の花 清崎敏郎
流氓として祖母の名と韮の花 佐藤鬼房
牡丹の下草韮に花咲きし 細見綾子
牡丹の根元の韮の花も咲く 細見綾子
牡丹散る根元の韮の花の上 細見綾子
窓より見ゆ二月の屋根と韮畑 草間時彦 中年
花韮も春の惜ししと紫に 後藤比奈夫
花韮や歩いて行けば猫神社 雨滴集 星野麥丘人
落第の始末にゆくや韮の雨 飴山實 辛酉小雪
貧農は弥陀にすがりて韮摘める 飯田蛇笏 霊芝
足許にゆふぐれながき韮の花 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
里くらしの日が少しのび韮の崕 右城暮石 句集外 昭和九年
野韮の香置く露の香にたちまさり 山口誓子
長病みの医師こそかなし韮の花 相馬遷子 山河
雑炊の韮片よせて風邪長し 石川桂郎 高蘆
韮くふて来てさむしろのすゞみ哉 成田蒼虬
韮つんで食べんと思ふ牡丹どき 細見綾子
韮に花遠墓原に風かよひ 三橋鷹女
韮の花ことごとくゆれ蜂縋り 山口青邨
韮の花ひとかたまりや月の下 山口青邨
韮の花坂としもなく息あへぐ 石田波郷
韮の花女人禁ぜし境に入る 山口誓子
韮の花行きより帰り足早に 岸田稚魚 紅葉山
韮の花長生きの母ありがたし 星野麥丘人
韮の花鷺群立つと曉けゆけり 角川源義
韮一本われの眼を扇ぐなり 飯島晴子
韮刈つておほまがときをけむりゐる 佐藤鬼房
韮剪つて酒借りに行く隣哉 政岡子規 韮
韮咲くや一病を得て食大事 岡本眸
韮咲くや夫呼ぶらしも月の鷺 角川源義
韮咲くや空かたあかり鷺飛べり 角川源義
韮咲くや食べ読み書くに卓一つ 岡本眸
韮咲けばまたその花もくらはんと 山口青邨
韮咲けり牡丹散りたるあとの庭 細見綾子
韮採りにくる神々の深靴よ 飯島晴子
韮摘んで韮臭き手を夫婦かな 星野麥丘人
韮生えて枯木のもとの古畑 村上鬼城
韮畑や針金張つて御薬園 村上鬼城
韮粥にわすれぬ落し味噌なりし 能村登四郎
韮臭い身となり 彼我に微笑湧く 伊丹三樹彦
韮臭き僧と端山の月を見たり 橋閒石 和栲
韮雑炊番茶ぬるめにたまはりぬ 星野麥丘人
飴なめて忿りうすめる韮の花 上田五千石 森林
鹿みちや韮に交りて蕗の薹  白雄


髭もじゃの黄色い彼岸花ショウキズイセン(園芸種シリーズ20)

2019年10月12日 10時21分12秒 | 

黄色の彼岸花、名前はショウキズイセン。鍾馗さまは髭もじゃなので、雄しべを髭に見立てた命名だろう。英語名の黄金色の蜘蛛百合もなかなかうがった命名かも。それでも赤い彼岸花が有名な日本では、どうしても黄色のヒガンバナとしかみえない。花の咲き方も百合風というよりも彼岸花風だし。

(2019-9 川崎市 道端) 

 ショウキズイセン  鍾馗水仙
[別名] ショウキラン(鍾馗蘭)
[中国名] 忽地笑 hu di xiao
[英名] golden spider lily , yellow spider lily
[学名] Lycoris aurea (L'Her.) Herb.
Lycoris traubii W.Hayw.
ヒガンバナ科 Amaryllidaceae  ヒガンバナ属

 日本、台湾のショウキズイセンをLycoris traubiiに分ける説もある。ショウキランともいわれるが、ショウキランはラン科のYoania japonica Maximの和名である。
 鱗茎は卵形、直径約5㎝。葉は秋に生じ、剣形(広線形)、約長さ60㎝×幅1.7~2.5㎝、中脈は淡色、基部と先は次第に幅が狭くなる。花茎は長さ(30~60)約60㎝。総苞は2個、披針形、約長さ3.5㎝×幅0.8㎝。花被は黄色、筒部は長さ1.2~1.5㎝。裂片は強く、反り返り、外面には淡緑色の中脈があり、倒披針形、約長さ6㎝×幅0.4~1㎝、縁は強く、波打つ。雄しべはわずかに又は長く突き出し、長さ7~12㎝。花糸は黄色。花柱は先がローズレッド色。蒴果は3角(かど)があり、胞背裂開。種子は少数、黒色、類球形、直径約7㎜。花期は(8~)9~10(~11)月。2n=12~16(FOC)。2n=12,13,14(日本)
品種) 'Golden Giant' , 'Guizhou' , 'Yananone Gold'
[花期] (8~)9~10(~11)月
[草丈] 30~60㎝
[生活型] 多年草
[生育場所] 草地、林縁、栽培種
[分布] 在来種 日本(九州~南西諸島)、中国、台湾、インド、パキスタン、インドネシア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム原産


白い花はよい香りを放つクサギ

2019年10月12日 08時23分38秒 | 

道端に咲いていたクサギ。これまで気づかなかった花だ。受粉のための戦略がいろいろと考えてあって、その工夫に驚く。葉が匂うためにクサギと呼ばれるらしいが、花そのものはよい香りを放つ。蕾もピンクでかわいい。果実は草木染などにも活用されているらしい。もっと身近に増えてもいい植物かも。

(2019-9 川崎市 道端) 

 

 

 

クサギ(臭木、Clerodendrum trichotomum)は日当たりのよい原野などによく見られるシソ科の落葉小高木。葉に悪臭がある事からこの名がある。日本全国のほか朝鮮、中国に分布する。従来はクマツヅラ科に入れられてきたが、現在はシソ科に移されている。

種小名は、「三分岐」の意味で、花序の枝を指す。

特徴
葉は大きく、長い葉柄を含めて30cmにもなり、柔らかくて薄く、柔らかな毛を密生する。葉を触ると、一種異様な臭いがするのがこの名の由来である。

花は8月頃咲く。花びらは萼から長く突き出してその先で開く。雄しべ、雌しべはその中からさらに突き出す。花弁は白、がくははじめ緑色でしだいに赤くなり、甘い香りがある。 昼間はアゲハチョウ科の大型のチョウが、日が暮れるとスズメガ科の大形のガがよく訪花し、受粉に与る。果実は紺色の液果で秋に熟し、赤いがくが開いて残るためよく目立つ。この果実は鳥に摂食されて種子分散が起きると考えられている。

道ばたなどでよく見かけ、遷移においては、藪の状態の所に侵入する最初の樹木として先駆植物(パイオニア)の典型である。

花粉媒介に関して
クサギの花では明確な雄性先熟が見られる。野外観察によると、クサギの花の開花は午前中から午後の初めまでが多く、開花すると花冠は2日から3日にわたり開きっぱなしとなる。開花初日から雄蕊も雌蘂も花冠より長く抜き出して展開しているのであるが、開花初日では雄蘂は完全に展開するのに対し、雌蘂の展開は不完全であった。2日目になると雄蕊はしおれ、雌蘂では柱頭が2つに裂開して受粉可能な状態になった。外見的には開花当初は雄蕊も雌蘂も花冠から抜き出て前に伸び、先端は共にやや上を向く。雄蕊では雄蕊の展開中に葯が開き、雄蕊が伸びきった段階では葯の表面に花粉が完全に露出した。2日目になると雄蘂は下向きにしおれ、雌蘂は上向きになって柱頭が裂開する。3日目になると花冠と雄蕊は脱落し、雌蘂だけが残る。

つまり本種では1つの花において雄蕊と雌蘂の伸張と成熟に明瞭な差があり、まず1日目に花粉の散布が行われ、この間は雌蘂は受粉可能になっていない。2日目には雄蕊がしおれて下を向き、その段階で雌蘂が受粉可能となる。

分布と変異
日本では北海道から九州、琉球列島まで分布し、国外では台湾、中国まで分布がある。四国以南には、葉が長くなり、花序がよりまとまって生じる変種ショウロウクサギ (C. trichotomum var. esculentum) があり、沖縄ではほとんどがこれである。ほかに、葉にほとんど毛がないアマクサギ (C. trichotomum var. yakusimensis) がある。

利用
葉には名の通り特異なにおいがあるが、茶の他に、ゆでれば食べることができ若葉は山菜として利用される。収穫時には、臭いが鼻につくが、しばらくすると不思議なくらいに臭いを感じなくなる。果実は草木染に使うと媒染剤なしで絹糸を鮮やかな空色に染めることができ、赤いがくからは鉄媒染で渋い灰色の染め上がりを得ることができる。実の青色色素は名古屋大学の佐々木教祐らにより構造が付きとめられ、種小名にちなんでトリコトミン (Trichotomine) と命名されている。

また、英語名をharlequin glory bowerなどといい、欧米では観賞用に栽培される。

日本でクサギそのものが栽培されることは少ないが、栽培は容易。繁殖は挿し木、株分け、根伏せなど。種子以外に根からの不定芽でよく増える。 同属のヒギリ(C. japonicum 、東南アジア原産の常緑低木)、ゲンペイクサギ(C. thomsoniae 、アフリカ 原産の常緑つる性木本)、ボタンクサギ(C. bungei 、中国原産の落葉低木)などは観賞用に栽培される。ボタンクサギは時に野外に逸出して野生状態で生育している。


蝶たちにも好まれるフジバカマ(入笠山シリーズ01)

2019年10月12日 07時26分48秒 | 

秋の七草の一つのフジバカマ。今では絶滅危惧種だというから寂しい。それでも高原にでかけるとまだ多くみかける。入笠山では山の斜面の草原にたくさん咲いていた。蝶たちも好む花である。咲いた後よりも咲きかけて小豆色にみえるころがすてきだ。別名アララギは短歌結社の名前としても有名だ。

(2019-09 長野県 入笠山) 

 

フジバカマの基本情報
学名:Eupatorium japonicum(Eupatorium fortunei)
和名:フジバカマ(藤袴)  その他の名前:アララギ、香草(こうそう)、蘭草(らんそう)

科名 / 属名:キク科 / ヒヨドリバナ属

特徴
フジバカマは「秋の七草」の一つで、万葉の時代から人々に親しまれてきた植物です。夏の終わりから秋の初め、茎の先端に直径5mmほどの小さな花を、長さ10cm前後の房状に多数咲かせます。川沿いの湿った草原やまばらな林に見られ、まっすぐに伸びる茎に、3裂する葉が対になってつきます。地下茎が大量に伸びて猛烈な勢いで広がるため、自生地では密生した群落になるのが普通ですが、現在の日本には自生に適した環境が少なくなったため激減し、絶滅危惧種となっています。フジバカマの名で市販されているものの多くは、サワフジバカマ(フジバカマとサワヒヨドリの雑種)です。
生乾きの茎葉にクマリンの香り(桜餅の葉の香り)があり、中国では古く芳香剤として利用されました。また、『論語』にある「蘭」はフジバカマを指します。しかし後世、蘭がシナシュンランなど花に香りのある温帯性シンビジウム属の種を指すようになったため、現在の中国では、フジバカマは「蘭草」とされています。

基本データ

園芸分類 草花,山野草

形態 多年草 原産地 東アジア(中国~朝鮮半島、関東地方以西の本州、四国、九州)

草丈/樹高 60~120cm 開花期 8月から9月(残り花は10月ごろまである)

花色 白

耐寒性 強い 耐暑性 強い

特性・用途 落葉性,香りがある,盆栽向き,初心者でも育てやすい


名前とは裏腹に優雅な花をつけるママコノシリヌグイ(高尾山シリーズ11)

2019年10月11日 10時27分30秒 | 

ママコノシリヌグイとは、なんともひどい名前をつけたものである。茎に棘があるので、継子の赤子をこの花で拭いたら、痛がって泣くだろうというのだ。韓国では「嫁の尻ぬぐい」というそうだ。赤ん坊とは違って、姑がこの花で嫁のお尻をぬぐうのは、なかなか考えにくいが、どちらの名前も民衆的な想像力の豊かな働きをうかがわせる。中国名はとげのあるタデというあっさりとした即物的な命名だが。名前はともかく、よく見ると白の花弁に紅をさしたような「おしろい花」とでも呼べるような優雅な花だ。

(2019-08 東京都 高尾山 )

 

 

 

ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い、学名: Persicaria senticosa)は、タデ科イヌタデ属(またはタデ属)の1年草。トゲソバ(棘蕎麦)の別名がある。

和名は、この草の棘だらけの茎や葉から、憎い継子の尻をこの草で拭くという想像から来ている。韓国では「嫁の尻拭き草」と呼ばれる。漢名は刺蓼(シリョウ)。

特徴
他の草木などに寄りかかりながら蔓性の枝を伸ばし、よく分岐して、しばしば藪状になる。蔓の長さは1-2m。茎は赤みを帯びた部分が多く、四稜があり、稜に沿って逆向きの鋭い棘が並んでいる。

柄のある三角形の葉が互生し、さらに茎を托葉が囲む。葉柄と葉の裏にも棘がある。

5-10月ごろ、枝先に10個ほどの花が集まって咲く。花弁に見えるのは萼片で深く5裂し、花被の基部が白色で、先端が桃色。花後には黒色の痩果がつく。

 


今では希少になったトチカガミ

2019年10月11日 09時00分51秒 | 

トチカガミのトチはスッポンの方言で、スッポンが眺める鏡ということらしい。不思議なに名前をもらったものだ。沼などに生える水草だが、絶滅危惧種に指定されている。神代植物公園の水槽でたくさん咲いていた。

(2019-09 東京都 神代植物公園) 

トチカガミ
Hydrocharis dubia (Bl.) Backer
トチカガミ科トチカガミ属

トチカガミは北海道を除く全国の池、川に群生する浮葉性の多年草。
葉が丸いため、スッポン(鼈;方言でトチ)のカガミ(鏡)の意味から名前がついた。水温の高い時期はほふく茎を伸ばして広がり、水面を覆う。茎は淡緑色で水中を直進し、5~20cm位に葉と根を出す。葉はほとんど円形のハート型で濃緑で光沢がある。裏面気嚢(浮袋)があるのが特徴だが、葉が混み合って水上に伸びた葉(気中葉)では気嚢は未発達で、水上葉よりも葉の基部の切れ込みが浅い。花期は7~10月。花は白色で3枚の花弁を持つ。雌雄異株で雌花と雄花がある(写真は雄花)。越冬は種子または殖芽。
環境省レッドリスト(2012)「準絶滅危惧」、大阪府レッドリスト2014「絶滅危惧Ⅰ類」。


白の清楚な花が魅力のセイロンマツリ(園芸種シリーズ19)

2019年10月11日 07時26分08秒 | 

セイロンマツリはルリマツリの花の色が白いバージョン。「まつり」がジャスミンの中国名だとは知らなかった。たしかにジャスミンを茉莉花と呼ぶことはよく知られているのだが。お祭りとはまったく関係がないらしい。白の清楚な花と、五弁のきれいな花弁が魅力的だ。

(2019-10 川崎市 道端) 

 

セイロンマツリ
せいろんまつり(セイロン茉莉) イソマツ科 分類:木・落葉 学名:Plumbago zeylanica

ルリマツリ 、 ルリマツリモドキ や ブータンルリマツリ と同じイソマツ科の仲間でセイロン原産。マツリ(茉莉)とは中国名のジャスミンのことで ハゴロモジャスミン や オオバナソケイ がこれに当たる

 

 


山の木陰に群生することが多いテンニンソウ(高尾山シリーズ10)

2019年10月10日 12時38分14秒 | 

あまり見栄えはよくないテンニンソウ。天人草という名前も不思議で、そぐわない。山の木陰に群生していることが多い。三つ峠でも群生していた記憶がある。これを見ると、ああ山に来たなと思う。日本固有種だそうである。

(2019-09 東京都 高尾山 )

 

テンニンソウ(天人草、学名 Leucosceptrum japonicum )は、シソ科テンニンソウ属の多年草。

特徴
地下に太い木化した根茎があり、そこから四角の草質の茎を出して直立する。高さは50-100cmになり、上部はまばらに分枝するものもある。茎に若い時に星状毛があるかまたは無い。葉は対生し、長楕円形から広披針形で、長さ10-25cm、幅3-9cmになる。葉の先端はとがり、基部はくさび形になって葉柄につづき、縁に鋸歯がある。

花期は9-10月。茎先に花序をつけ、若い花序に重なっておおう苞は先端が多少尾状にとがり、花が開くと脱落する。花は淡黄色の唇形花で花序に密につく。萼は短い筒状で5裂する。花冠は萼より長い筒状で、上唇は2裂、下唇は3裂する。下方2個が長い雄蕊が4個、柱頭が2裂する雌蕊が1個あり、ともに花外に長く突き出る。

分布と生育環境
日本固有種。本州、四国、九州に分布し、落葉樹林内または山地の木陰に大群落をつくる。

和名の由来
テンニンソウは「天人草」であるが、牧野富太郎は「天人草の意味は何によるものかわからない」としている。