<アラウドの集落を行く>
モロッコ訪問記(13):第4日目:ツブカル小屋を目指して(1)
(アルパインツアー)
2009年6月7日(日)~18日(火)
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モロッコ周遊第4日目,いよいよ待望のツブカル山登頂が始まる.
登頂初日の6月10日(水)は,登山口のイメリル村を出発して,標高3,207メートルの高所にあるツブカル小屋まで,水平距離約14キロメートルの山道を登る.
2日目の6月11日(木)は,早朝,ツブカル小屋を出発して,ツブカル山山頂(標高4,163m)を往復する.そして,再びツブカル小屋に宿泊する.
3日目の6月12日(金)は,ツブカル小屋からイメリルまで下山する.そして,イメリルから専用バスで,マラケシュまで戻る予定である.
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<地形図>
<プロフィールマップ>
第4日目:2009年6月10日(水)
<イメリル小屋の朝>
■眠れない朝
今日は,いよいよツブカル山登山初日である.
深夜,トイレに行きたくなる.ヘッドランプを頼りに,部屋の扉を開けて廊下に出る.扉の立て付けが悪いので,どんなにそっと開閉しようとしても,「ギー~」という音が部屋中に鳴り響いてしまう.
トイレは空いているし,綺麗だが,アラブ式の便器なので,どうも使い勝手がよくわからない.大体,どっちを向いてしゃがみこんだら良いかが,あまり良く分からない.とにかく,用事を済ませたら,脇にある水道の蛇口をひねって,バケツに水を貯め,その水を便器に一気に流す.
部屋に音を立てないようにして,そっと戻る.真っ暗な中,半分手探りで,自分のベッドに戻る.すると,暗闇の中から,同室のKさんが,
「今,何時ですか?」
と私に聞く.
「済みません.起こしてしまいましたか.まだ,2時頃です」
「いえ・・私も眠れないんです」
まだ,起床するには,いくらなんでも早すぎる.再びベッドに潜り込んで,ジッとしている.
まだまだ時差で悩まされ続けている.馴れないベッドのせいもあって,なかなか眠れない.そのうちに,サラリーマン現役時代の悪夢を見る.
「・・・とある会社で,私はSE部門の責任者になっている.何か問題を起こして,周辺の人たちから弾劾される.夢の中の私は,必死になって,言い訳をしている.そのうちに,周りの人たちから,そんなら仕方がないか」
と,納得されだしたところで,目が覚める.
それにしても,どうして,何時までも,サラリーマン時代の怖いことばかり夢に出てくるんだろう・・・やっぱり,自分はサラリーマンに不的確だったんだなと,モロッコくんだりまで来ても述懐する.
目が覚めても,夢の続きで,何か叫びたくなるような衝動を感じて,ハツとする.
それにしても,蒸し暑い.私は自分のシュラフを蹴飛ばして,上半身裸になって,大きなため息をつく。
6時頃,堪らず起床する.外はまだうす暗い.
階段の踊り場に出てみる.真向かいの山の頂に朝日が当たり始めている.今日も良い天気のようである.そのうちに,仲間たちが三々五々と,テラスに集まってくる.まだ,朝食までには時間があるので,1階に下りて,畑の中のふみ跡のような道を散策する.彼方此方から,勇ましい鶏の啼き声が聞こえてくる.私は,自分の少年時代を思い出し,とても懐かしい気分になる.
私1人,テラスに戻り,ノートを取り出して,その辺りをスケッチしながら,朝食前の余暇を楽しむ.
<朝日を浴びるイメリル>
■ヨーロッパ風の朝食
7時から,食堂兼談話室で朝食を摂る.コーヒー,パン,バター、チーズだけの簡単な朝食である.いわゆるヨーロッパ風朝食なのだろう.何となく物足りない感じがする.とはいえ,ここのパンは,とてもおいしいので,食は結構進む.まあ,途中でシャリばてになる心配はないだろう.
7時40分に,朝食はお開きになる.
<パン,ティー,チーズだけの朝食>
<登山道を歩き出す>
■可愛いロバ
私たちは,ロバ(正確には馬とロバの混血のラバ)で運んでもらうスタッフバッグと,自分のリュックに入れて背負う荷物とに分けて,8時過ぎにツブカル小屋の1階に下りる.
裏手の路地を伝って,外へ出る.すでに数頭のロバが待機している.どうやら私たちだけでなく,他の登山グループの荷物もあるようだ.
<私たちの荷物を運ぶロバ>
■イメリルの集落を抜ける
8時22分,ロバの脇を通り抜けて,いよいよ登山開始である.私たちは,現地山岳ガイドのモハマドさんの後について,ごくごくユックリとしたペースで歩き始める.
最初はイメリルの集落の中の砂利道を登っていく.ほぼ東へ向かっている.1キロメートル弱登ったところで,180度近く鋭角に右折して,細い小道に入る.小道は南東から西北に下る斜面をトラバースしている.小道に沿って山側には幅50センチほどのクリークが作られていて,綺麗な水が流れている.
小道は深い森林に覆われていて,心地良い樹林帯が見事な緑陰を作っている.小道に沿って,所々に民家が建っている.ここは自動車は使えないし,電話もないところだが,住んでみたいなと思うほど,すばらしい環境のように思える.
小道を進むと,ときどき住民の方とすれ違う.皆,綺麗な着物を着ている.ときどき,ヤギや牛を引っ張っている人ともすれ違う.学校へ通う子供たちも通る.どこの国に行っても,子供たちは本当にかわいい.
<イメリルの集落を抜ける>
■イメリルの谷間を望む
8時59分,ようやく樹林帯を抜けて,登山道らしくなる.
モハマドさんが足を止めて,英語で,
「ここが,イメリルを一望できる絶好の場所だよ・・・」
と言いながら,景色を写真に収めるように促す.
私たちは,真北の方向を眺めている.眼下には両側を赤茶けた山脈で囲まれた谷間が見えている.谷間の緑の中に,イメリルの集落が点々と見えている.
<イメリル遠望>
■プロフィールマップ
9時01分,地図を確かめると,タガダート(Tagadirt)という集落の付近を歩いているようである.
私は,日本を出る前に,旅行社から送られてきた地図を頼りに、山旅スクールで悪阻綿手順に従って,あらかじめプロリールマップを作っていた.このプロフィールマップを見ながら,モハマドさんに,
「今,私たちはこの辺りに居るんですか・・?」
と伺う.
モハマドさんは,私が出したプロフィールマップを見て,大変驚く.
「・・私は,これまで沢山の人をガイドしてきましたが,プロフィールマップを作ってきた人は,あなたが初めてです・・・それにとても正確です.ただ,この辺りは,このプロフィールマップより傾斜がきついかもしれません・・・」
という.
彼が,傾斜がもっときついかもしれないと指摘した場所は,明日の行程のツブカル山中腹の登りの所である.
私の予想したとおりに,私たちはタカダートの集落近くを歩いているようである.
イメリルを歩き出してから,すでに2.5キロメートルほど登っている.イメリルの標高が1,740メートル,現在地タカダートの標高は約1,850メートル.従って,まだ標高差では,100メートル程度しか登っていないことになる.
私たちは,斜面の木陰で,小休止する.
<対岸の立派な家:対岸には自動車が通れる道がある>
<アラウドの集落を通過する>
■アラウドに到着
9時09分,再び歩き出す.
登山道は,次第に岩礫や浮き石の多い道に変わる.前方に小さな尾根が見えている.私たちは尾根裾を回り込むようにして,歩き続ける.時々,地元の住民と思われる人とすれ違う.そのたびに軽く会釈をするが,ほとんど返答がない.気のせいか,どうやら無愛想の人が多いように思える.
すぐに道路は石垣の下を通るようになる.目の前に急に大きな集落が見え始める.アラウド(Aroud:標高1,950m)の集落である.
私たちは,やや深い谷の左岸をトラバースする道を辿っている.川向こうの右岸には,私たちが登ってきた道とは違う自動車が通れる道がある.対岸の目の前にかなり立派な一軒家が建っている.アブダラさんの説明では,かなり裕福な家らしい.この家の真下の川に橋が架かっていて,この橋から左岸まで,自動車で渡れるようである.私たちが歩いている沿道でも,数台の自動車が駐車している.
<アラウドの集落に入る>
■広い河原
アラウドの集落は,尾根が川(川の名前は分からない)に落ち込む所に,住宅が密集している.どうしてこんな山奥に大きな集落があるのか,私はとても不思議になる.そこで,アブダラさんにいろいろと伺ってみる.
アブダラさんの説明によると,この集落には,およそ600人の住民が住んでいるという.殆どが農業を生業としているが,かなりの人が1~2ヶ月の単位で,町に出稼ぎに行っているようである.
集落の中の小さな上り下りを通過していると,9時39分頃,川幅が200~300メートルほどもある広い河原に出る.私たちは,川の浅瀬を横切って,川の左岸に渡る.
途中から振り返ると,つい今し方通過したアラウドの全景がとても良く見えている.
<広い川を渡る>
<アラウドの集落:丘にべったりと民家がへばりついている>
■いよいよ国立公園
9時58分,私たちは再び川を渡って,再び左岸に戻る.
ここから,本格的な山道が始まるようである.川岸から少し登ったところに,国立公園の境界を示す立て看板が立っている.10時丁度に,この看板に到着する.残念ながらアラビア語とフランス語だけ,英語の説明文はない.
ここで,暫くの間,休憩を取る.
<国立公園の看板>
(つづく)
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「モロッコ周遊記」の最初の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/31b79faa79d02b8fe28dc5177880d2e4
「モロッコ周遊記」の索引
(編集中)
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