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アイルランド紀行(13)
コーク大学にて
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第6日目:2002年6月19日(水)
<InSITEに出席>
■コーク大学へ向かう
夜中1時頃に目が覚める。今日はInSITEでプレゼンテーションをする日である。首尾良くできるかどうかが気になって,気持がアップセットしている。そのためか,その後も,時々目が覚めたり,眠ったりしながら,少々寝不足気味のまま朝を迎える。
グズグズしていても仕方がないので,6時丁度に起床する。トイレ,シャワー,洗顔,ひげ剃りなどを済ませて,何日ぶりかでワイシャツと背広を着用する。すると何となく気分も落ち着いてくる。ヤッパリ,背広は私達職業人にとっては戦闘服だなと思う。 朝の冷気が部屋の中にも入ってくる。少々寒いのでヤッケを羽織る。窓から外を見ると,緑の丘を背景に煉瓦作りの家が並んでいる。こんな風景を眺めていると「ここは紛れもなくヨーロッパだな・・・」,私は飛んでもないところで,飛んでもないことをしでかそうとしている・・・と,そら恐ろしくなってくる。
7時30分頃,ドミトリーキャッスルホワイトの自室を出発して,コーク大学のキャンパスへ向かう。
キャッスルホワイトの前を通るゴール遊歩道(Goal Walk)に沿って少し進むとゴール橋(Goal Bridge)を渡る。この橋の上から,石造りの門,ゴールゲート(Goal Gate)が見える。古城を思わせる趣のある風景である。私は,橋の上からソソクサとスケッチをする。
<コーク大学入口>
■コンファレンス会場へ
コンファレンスの会場は,ゴールゲートを潜って,10メートルほど進んで,直ぐ右に回った奥,キャンパスのほぼ中央にあるWest Wingで行われる。会場の入口には,大きな案内幕が頭上高く吊り下げられている。石作りの重厚で素晴らしい建物である。受付でコンファレンスの登録を済ませてから,会場の奥にあるレストランで,8時頃から朝食を摂る。簡素なバイキング方式で,スープとパン,それにオレンジジュースとコーヒーだけである。私が食事をしていると,N夫妻,F先生,Hさんも次々とレストランに現れる。 朝食は直ぐに終わる。
<InSITE大会会場の建物>
9時少し前に,レセプション会場に入る。いよいよ,9時00分からInSITEの大会が始まる。私の発表は,10時30分から12時00分までのセッションに割り当てられている。わずか1時間30分の間に3人の報告者がいるので,1人の持ち時間は,たった30分である。Q&Aに10分取ると,発表時間は20分足らずということになる。それも下手な英語で発表するとなると,私が訴えたいことが,どれだけフロアーの皆様に伝わるか,はなはだ心許ない。私の出番は2人目,11時00分から11時30分までである。
<InSITE会場の案内板>
■脂汗の発表
このブログの性格上,私の報告内容を,ここで紹介するのは差し控えるが,拙い英語で発表したにもかかわらず,フロアーの方々の日本の企業におけるITの利用状況への関心はかなり高く,フロアーから沢山の質問が浴びせられる。
以下にアブストラクトだけ記述しておこう。
************************************
A Study of the B2B Progress in Japanese Enterprises
Flower-hill_2005
XXXX, XXXXX, Japan
Most Japanese enterprises are confronted with a rapid decline of business performance due to the long time recession of the Japanese economy. They gradually lost their competitive advantages in global marketplaces especially in the business domains of matured products including PCs. Most of them are forced to take prompt measures to respond to their business environment. For the past few years, we have been conducting questionnaire surveys repeatedly about B2B information systems in small and medium-sized enterprises (SMEs).
The results of these surveys show clearly that their business performances have no clear relevance to the utilization B2B information systems. In conclusion, from a management strategy point of view, Japanese SMEs are classified into the following four types: (a) a group of high technical skills in special fields irrelevant to the utilization of information systems, (b) a new business model oriented group, (c) a manpower cost reduction oriented group, and (d) a foreign manufacturing subsidiary group.
In the near future, these groups seem to polarize into group (a) and group (d). Keywords: competitive advantage, B2B, small and medium-sized enterprises, Japanese companies, management strategy
************************************
■Q&Aに難渋
英語のヒアリングが苦手な私は,質問の内容を聞き取るだけで,大変な労力が要る。私は,途中からQ&Aが面倒になった。そこで,私は,誰かから教わった慣用句を使って,
“・・・My native language is not English but COBOL・・・”
と言いながら,会場を和ませる。もちろん,私が”・・・not English”の後に”・・・but Japanese・・・”と言うだろうと,フロアーの方々に思わせておいて,”COBOL”といって笑わせるというギャクである。くどいようだが,私の創作のギャクではない。
その後,自分のアドレスを板書して,
「質問やご意見のある方は,こちらにメール下さい・・・お返事します」
といって,急場をしのぐ。
その後,私の発表に対して,いくつかの反響があった。例えば,香港とオーストラリアの大学の先生から,相次いで,ITのアウトソーシングに関する研究を一緒にやろうというお誘いを受けた。しかし,英語での意見交換やメールのやり取りが,私にとって大変な負担になり,どうしても息切れがしてしまう・・・と,いうわけで,この話も1~2年の間にだんだんと尻つぼみになってしまった。まことに情けなく,残念な話である。だから・・・というわけではないが,若い内に,英語ぐらいはキチンと読み書きできるようになっておくべきだった。後悔先に立たずとは,正にこのことである。
実は,同行のNさんが,私の発表の一部始終をビデオに収録していた。後で,そのビデオを見ると,私のブロークンで,たどたどしい英語は,見聞きするに耐えられないほどひどい。よくまあフロアーの方々が聞いてくださったものだと脂汗が吹き出てくる。
<午後のキャンパス>
■レストランで昼食
私の次の発表は,そう言っては申し訳ないが,論点がハッキリしないまま,発表がダラダラと長引く。その内にフロアーの人達が,怒り出して,口喧嘩が始まる。こうなると彼らの言っていることが良く聞き取れない。もちろん,報告者に対して,私にも言いたいことはいくつかあるが,私には,早口で英語でまくし立てるこだけの語学力がない。
この辺りが潮時だなと思った私は,12時少し過ぎに,会場の後扉からエスケープして,レストランに向かう。Nさん,Fさん達も相前後して食堂に入ってくる。食堂には長いテーブルが並べてある。ランチのメニューは,ススキかダック。どちらもヤケに大きな切り身でボリュームタップリである。どうも食欲が湧いてこないが,ダックを選ぶ。トレーに,メインディッシュのダックとポテト添え,シチュー,コーヒー,パン,デザートを乗せて,空いている席に座る。
パンは,表面は固いが,中がモッチリと柔らかくて,見た目よりもずっと美味しいのでビックリする。塩味のダックやポテトを食べていると,体中が何となくバター臭くなってくるような気がしてくる。結局,折角のダックは半分ほど残してしまう。それにしても,白人の方々はよく食べる。大きなお腹をユサユサさせながら,猛烈な勢いで食べているのには圧倒される。
■すばらしい建物
13時00分から午後のセッションが始まる。自分の発表が終わってからの大会は,どうしても気が緩む。それに,ここのところ,毎日,英語漬けになっているので,頭の芯から疲れている。時差もあって,次第に眠くなってくる。どんなに頑張っても瞼がくっついてしまう。一人目のプレゼンテーションが終わったところで,会場から廊下に出る。 午後のセッションが終わる一寸前に,堪らなくなり,会場の外へ出る。緑一杯のキャンパスはとても気持がよい。シックな建物が私の絵心をくすぐる。私はキャンパス内の建物の幾つかを急いでスケッチする。
<コーク大学の建物>
その内に,F先生,Nさん,Hさんも会場から出てくる。 もうコンファレンスも終わりに近い。まだ,日が十分高いので,一緒に市内見物に出掛けることにする。途端に眠気が覚めるから現金なものである。
(つづく)
アイルランド紀行(13)
コーク大学にて
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第6日目:2002年6月19日(水)
<InSITEに出席>
■コーク大学へ向かう
夜中1時頃に目が覚める。今日はInSITEでプレゼンテーションをする日である。首尾良くできるかどうかが気になって,気持がアップセットしている。そのためか,その後も,時々目が覚めたり,眠ったりしながら,少々寝不足気味のまま朝を迎える。
グズグズしていても仕方がないので,6時丁度に起床する。トイレ,シャワー,洗顔,ひげ剃りなどを済ませて,何日ぶりかでワイシャツと背広を着用する。すると何となく気分も落ち着いてくる。ヤッパリ,背広は私達職業人にとっては戦闘服だなと思う。 朝の冷気が部屋の中にも入ってくる。少々寒いのでヤッケを羽織る。窓から外を見ると,緑の丘を背景に煉瓦作りの家が並んでいる。こんな風景を眺めていると「ここは紛れもなくヨーロッパだな・・・」,私は飛んでもないところで,飛んでもないことをしでかそうとしている・・・と,そら恐ろしくなってくる。
7時30分頃,ドミトリーキャッスルホワイトの自室を出発して,コーク大学のキャンパスへ向かう。
キャッスルホワイトの前を通るゴール遊歩道(Goal Walk)に沿って少し進むとゴール橋(Goal Bridge)を渡る。この橋の上から,石造りの門,ゴールゲート(Goal Gate)が見える。古城を思わせる趣のある風景である。私は,橋の上からソソクサとスケッチをする。
<コーク大学入口>
■コンファレンス会場へ
コンファレンスの会場は,ゴールゲートを潜って,10メートルほど進んで,直ぐ右に回った奥,キャンパスのほぼ中央にあるWest Wingで行われる。会場の入口には,大きな案内幕が頭上高く吊り下げられている。石作りの重厚で素晴らしい建物である。受付でコンファレンスの登録を済ませてから,会場の奥にあるレストランで,8時頃から朝食を摂る。簡素なバイキング方式で,スープとパン,それにオレンジジュースとコーヒーだけである。私が食事をしていると,N夫妻,F先生,Hさんも次々とレストランに現れる。 朝食は直ぐに終わる。
<InSITE大会会場の建物>
9時少し前に,レセプション会場に入る。いよいよ,9時00分からInSITEの大会が始まる。私の発表は,10時30分から12時00分までのセッションに割り当てられている。わずか1時間30分の間に3人の報告者がいるので,1人の持ち時間は,たった30分である。Q&Aに10分取ると,発表時間は20分足らずということになる。それも下手な英語で発表するとなると,私が訴えたいことが,どれだけフロアーの皆様に伝わるか,はなはだ心許ない。私の出番は2人目,11時00分から11時30分までである。
<InSITE会場の案内板>
■脂汗の発表
このブログの性格上,私の報告内容を,ここで紹介するのは差し控えるが,拙い英語で発表したにもかかわらず,フロアーの方々の日本の企業におけるITの利用状況への関心はかなり高く,フロアーから沢山の質問が浴びせられる。
以下にアブストラクトだけ記述しておこう。
************************************
A Study of the B2B Progress in Japanese Enterprises
Flower-hill_2005
XXXX, XXXXX, Japan
Most Japanese enterprises are confronted with a rapid decline of business performance due to the long time recession of the Japanese economy. They gradually lost their competitive advantages in global marketplaces especially in the business domains of matured products including PCs. Most of them are forced to take prompt measures to respond to their business environment. For the past few years, we have been conducting questionnaire surveys repeatedly about B2B information systems in small and medium-sized enterprises (SMEs).
The results of these surveys show clearly that their business performances have no clear relevance to the utilization B2B information systems. In conclusion, from a management strategy point of view, Japanese SMEs are classified into the following four types: (a) a group of high technical skills in special fields irrelevant to the utilization of information systems, (b) a new business model oriented group, (c) a manpower cost reduction oriented group, and (d) a foreign manufacturing subsidiary group.
In the near future, these groups seem to polarize into group (a) and group (d). Keywords: competitive advantage, B2B, small and medium-sized enterprises, Japanese companies, management strategy
************************************
■Q&Aに難渋
英語のヒアリングが苦手な私は,質問の内容を聞き取るだけで,大変な労力が要る。私は,途中からQ&Aが面倒になった。そこで,私は,誰かから教わった慣用句を使って,
“・・・My native language is not English but COBOL・・・”
と言いながら,会場を和ませる。もちろん,私が”・・・not English”の後に”・・・but Japanese・・・”と言うだろうと,フロアーの方々に思わせておいて,”COBOL”といって笑わせるというギャクである。くどいようだが,私の創作のギャクではない。
その後,自分のアドレスを板書して,
「質問やご意見のある方は,こちらにメール下さい・・・お返事します」
といって,急場をしのぐ。
その後,私の発表に対して,いくつかの反響があった。例えば,香港とオーストラリアの大学の先生から,相次いで,ITのアウトソーシングに関する研究を一緒にやろうというお誘いを受けた。しかし,英語での意見交換やメールのやり取りが,私にとって大変な負担になり,どうしても息切れがしてしまう・・・と,いうわけで,この話も1~2年の間にだんだんと尻つぼみになってしまった。まことに情けなく,残念な話である。だから・・・というわけではないが,若い内に,英語ぐらいはキチンと読み書きできるようになっておくべきだった。後悔先に立たずとは,正にこのことである。
実は,同行のNさんが,私の発表の一部始終をビデオに収録していた。後で,そのビデオを見ると,私のブロークンで,たどたどしい英語は,見聞きするに耐えられないほどひどい。よくまあフロアーの方々が聞いてくださったものだと脂汗が吹き出てくる。
<午後のキャンパス>
■レストランで昼食
私の次の発表は,そう言っては申し訳ないが,論点がハッキリしないまま,発表がダラダラと長引く。その内にフロアーの人達が,怒り出して,口喧嘩が始まる。こうなると彼らの言っていることが良く聞き取れない。もちろん,報告者に対して,私にも言いたいことはいくつかあるが,私には,早口で英語でまくし立てるこだけの語学力がない。
この辺りが潮時だなと思った私は,12時少し過ぎに,会場の後扉からエスケープして,レストランに向かう。Nさん,Fさん達も相前後して食堂に入ってくる。食堂には長いテーブルが並べてある。ランチのメニューは,ススキかダック。どちらもヤケに大きな切り身でボリュームタップリである。どうも食欲が湧いてこないが,ダックを選ぶ。トレーに,メインディッシュのダックとポテト添え,シチュー,コーヒー,パン,デザートを乗せて,空いている席に座る。
パンは,表面は固いが,中がモッチリと柔らかくて,見た目よりもずっと美味しいのでビックリする。塩味のダックやポテトを食べていると,体中が何となくバター臭くなってくるような気がしてくる。結局,折角のダックは半分ほど残してしまう。それにしても,白人の方々はよく食べる。大きなお腹をユサユサさせながら,猛烈な勢いで食べているのには圧倒される。
■すばらしい建物
13時00分から午後のセッションが始まる。自分の発表が終わってからの大会は,どうしても気が緩む。それに,ここのところ,毎日,英語漬けになっているので,頭の芯から疲れている。時差もあって,次第に眠くなってくる。どんなに頑張っても瞼がくっついてしまう。一人目のプレゼンテーションが終わったところで,会場から廊下に出る。 午後のセッションが終わる一寸前に,堪らなくなり,会場の外へ出る。緑一杯のキャンパスはとても気持がよい。シックな建物が私の絵心をくすぐる。私はキャンパス内の建物の幾つかを急いでスケッチする。
<コーク大学の建物>
その内に,F先生,Nさん,Hさんも会場から出てくる。 もうコンファレンスも終わりに近い。まだ,日が十分高いので,一緒に市内見物に出掛けることにする。途端に眠気が覚めるから現金なものである。
(つづく)