浜松市楽器博物館へ行った。その7(ピアノ以前) よりつづく
ついに本丸、ピアノです。最初のピアノの復元モデル↓ 鋳物のフレームが入っていなくて華奢で、チェンバロみたい。
グランドピアノの蓋を開けたときに見える にぶく光る鋳物のフレームがグランドピアノっぽく見せているんだなあ、とあらためて思ったよ。ペダルも下がってないしね。
ピアノの誕生キャプション↓ 音の強弱がコントロール出来るのが画期的だったんですねえ。ピアノの元々の名前はピアノフォルテ/弱強だものね。
ところで"ピアノフォルテ"、”フォルテピアノ”という言葉は現代の"モダンピアノ"に対して古い形態のピアノを指すらしい。”ハンマークラヴィーア”という語もある。ここ数十年で古楽の研究が進んだことにより用語の使い方にも変遷があるらしいが、わたしには厳密な用語の選び方は分からない。
クリストフォリのピアノの復元について↓ 浜松市楽器博物館のクリストフォリのピアノは河合楽器が復元したらしい。
バブル期には河合楽器は 博物館等に残っている古典楽器(チェンバロとかピアノフォルテとかクラヴィコードとか)の復元モデルを作って販売していたようだ。 河合楽器 ピアノの歴史
今でも中古市場に河合楽器製のチェンバロがときたま現れる。
クリストフォリのピアノアクション体験キー↓ 複弦でハンマーヘッドが円筒形。アクションがクラヴィコードやチェンバロに比べると複雑だ。
クリストフォリのピアノの体験キーの キャプション↓
デモ動画 ★ 左右が逆だなあ。
浜松市楽器博物館へ行った。その7(ピアノ以前) のクラヴィコードやチェンバロを思い出してほしい。クラヴィコードは キーの向こう側にタンジェントがついていて、キーを押すとその先のタンジェントが弦を突く。指がキーを押さえている間は音が減衰しながら鳴っている。間接的だがかなりダイレクト?に指先と弦が繋がっている。
チェンバロは キーを押すとジャックが上がりプレクトラムが弦をはじく。ちょっと抵抗があってそれが減る感覚が指先に伝わって、それが弦をはじいている気にさせる。プレクトラムが弦をはじいたあともキーを指が押さえている間はジャックが上がっていてそこについているフェルトも上がっているので減衰しつつも音が鳴っている。キーから指を離すとジャックが下りてジャックについているフェルトが弦を押さえ、鳴りを止める。
ピアノは打弦楽器だけれどクラヴィコードとは違ってハンマーで弦を打つ。押さえつけて弦の振動が止まってしまわないように、打ったらハンマーは即座に弦から離れないといけない。また、指がキーを押している間はダンパーが弦をミュートしてはいけない。キーから指が離れて上に戻ったときにダンパーが弦の上に下りる。
デモ動画↑↑ではダンパーが上下する様子も見える。ハンマーが弦を打つ少しまえにダンパーが上がるのがポイント。
↓スクエア・ピアノ J.ツンペ、G.ブンテバルト(ロンドン) 1770 と楽器の上のキャプションにある。
そういえば横長の四角いヴァージナルの写真を まえの記事 にアップしたっけ。
スクエアピアノの説明キャプション↓ スクエアピアノは18世紀後半に出回ったようだ。音が大きくなくて家庭で演奏するのに向いている、という点はクラヴィコードとかスピネットとかに似ているなあ。
イギリス式アクションの体験キー↓ 複弦(3本)だ。クリストフォリのピアノのハンマーヘッドは筒状だったが、イギリス式のものは小さいながら今のものに似た形だ。突き上げ式のシングルエスケープメントという点ではクリストフォリのピアノと同じだな。
デモ動画 ★ クリストフォリのだとキーとハンマーの間にひとつパーツがあったけれど、イギリス式だとキーについているハンマーを突き上げる棒がハンマーの根元に当たる形状に工夫があって、クリストフォリのそのパーツが省略されている。
イギリス式アクションの体験キーのキャプション↓
イギリスの次はウィーンである。
↓ピアノ エールバー(ウィーン)19世紀中期 はね上げ式、シングルエスケープメント とキャプションにある。
譜面台の格子のすき間から見える ずらりと並んだ黒白のものはダンパー、そして足元にダンパーペダルがある(ペダルのまえにキャプションあり)。ペダルを踏んでいる間はダンパーが上がったままで、減衰して消えるまでは響きが長く続くのである。ダンパーとペダルのせいか妙にピアノっぽく見える。
ウィーン式アクションの体験キー↓ 見づらいけど弦は2本だと思う。
ウィーン式アクションの体験キーのキャプション↓ クリストフォリやイギリス式のと違ってハンマーヘッドは手前から上がるんだな。それを"はね上げ式"っていっているのかな? じゃあ、クリストフォリやイギリス式の向こう側からハンマーヘッドが上がるのが"突き上げ式"?
デモ動画 ★ ↑↑ウィーン式アクションの体験キーだとハンマーがキーの端に直接ついていると思ったが、動画だと違う。うーん、もう一度 浜松市楽器博物館に行ってよおく見たい。
楽器の事典ピアノ 第1章 ピアノの生誕と発達の歴史 9 18世紀におけるアクションの発達 やその次の記事 10 <シングルアクション> <ダブルアクション> <ウィンナアクション> には、当時の状況や、主にイギリス式とウィーン式のアクションの比較が述べられている。
「長所、つまりウィーンの楽器のレペティションに優れた敏感さと、イギリスの楽器の音量の強大さ」なんですって。モーツァルトがウィーン式を推したのも分かるなあ。地元だし。
また、「原始的アクションはさまざまな欠陥を持っており、それを補うためには、どうしてもエスケープメントをつけざるを得なかった。エスケープメントとは、ハンマーが弦に近づく直前にその駆動装置から外れて自由になり弦を叩いてはね戻る仕掛けである」という記述もある。これ最重要事項です。
そうっとピアノのキーを押すと音が出ないのは、ハンマーが慣性で弦を打つ勢いがない状態だとハンマーが弦に最接近しても届かずにハンマーがエスケープしちゃうからなんだな。
ところで、リンク元の 楽器の事典ピアノ は月刊ショパンを出しているハンナという出版社が以前出した本で、
「〜ピアノは楽器の王である〜 平成2年に発行された「改訂 楽器の事典ピアノ」30年たっても今なおその価値を失わない、幻の絶版本をwebで公開!」なんだそうだ。
情報源としてたいそうありがたいのだが、リンク切れがあったりするのが難。
18~19世紀のピアノのウィーン式とイギリス式の比較表↓ カラーがはっきり違うんだなあ。
産業革命による楽器製作の工業化というのがポイントだ。時代の流れを感じる。
浜松市楽器博物館へ行った。その9(ピアノその2) へつづく
ついに本丸、ピアノです。最初のピアノの復元モデル↓ 鋳物のフレームが入っていなくて華奢で、チェンバロみたい。
グランドピアノの蓋を開けたときに見える にぶく光る鋳物のフレームがグランドピアノっぽく見せているんだなあ、とあらためて思ったよ。ペダルも下がってないしね。
ピアノの誕生キャプション↓ 音の強弱がコントロール出来るのが画期的だったんですねえ。ピアノの元々の名前はピアノフォルテ/弱強だものね。
ところで"ピアノフォルテ"、”フォルテピアノ”という言葉は現代の"モダンピアノ"に対して古い形態のピアノを指すらしい。”ハンマークラヴィーア”という語もある。ここ数十年で古楽の研究が進んだことにより用語の使い方にも変遷があるらしいが、わたしには厳密な用語の選び方は分からない。
クリストフォリのピアノの復元について↓ 浜松市楽器博物館のクリストフォリのピアノは河合楽器が復元したらしい。
バブル期には河合楽器は 博物館等に残っている古典楽器(チェンバロとかピアノフォルテとかクラヴィコードとか)の復元モデルを作って販売していたようだ。 河合楽器 ピアノの歴史
今でも中古市場に河合楽器製のチェンバロがときたま現れる。
クリストフォリのピアノアクション体験キー↓ 複弦でハンマーヘッドが円筒形。アクションがクラヴィコードやチェンバロに比べると複雑だ。
クリストフォリのピアノの体験キーの キャプション↓
デモ動画 ★ 左右が逆だなあ。
浜松市楽器博物館へ行った。その7(ピアノ以前) のクラヴィコードやチェンバロを思い出してほしい。クラヴィコードは キーの向こう側にタンジェントがついていて、キーを押すとその先のタンジェントが弦を突く。指がキーを押さえている間は音が減衰しながら鳴っている。間接的だがかなりダイレクト?に指先と弦が繋がっている。
チェンバロは キーを押すとジャックが上がりプレクトラムが弦をはじく。ちょっと抵抗があってそれが減る感覚が指先に伝わって、それが弦をはじいている気にさせる。プレクトラムが弦をはじいたあともキーを指が押さえている間はジャックが上がっていてそこについているフェルトも上がっているので減衰しつつも音が鳴っている。キーから指を離すとジャックが下りてジャックについているフェルトが弦を押さえ、鳴りを止める。
ピアノは打弦楽器だけれどクラヴィコードとは違ってハンマーで弦を打つ。押さえつけて弦の振動が止まってしまわないように、打ったらハンマーは即座に弦から離れないといけない。また、指がキーを押している間はダンパーが弦をミュートしてはいけない。キーから指が離れて上に戻ったときにダンパーが弦の上に下りる。
デモ動画↑↑ではダンパーが上下する様子も見える。ハンマーが弦を打つ少しまえにダンパーが上がるのがポイント。
↓スクエア・ピアノ J.ツンペ、G.ブンテバルト(ロンドン) 1770 と楽器の上のキャプションにある。
そういえば横長の四角いヴァージナルの写真を まえの記事 にアップしたっけ。
スクエアピアノの説明キャプション↓ スクエアピアノは18世紀後半に出回ったようだ。音が大きくなくて家庭で演奏するのに向いている、という点はクラヴィコードとかスピネットとかに似ているなあ。
イギリス式アクションの体験キー↓ 複弦(3本)だ。クリストフォリのピアノのハンマーヘッドは筒状だったが、イギリス式のものは小さいながら今のものに似た形だ。突き上げ式のシングルエスケープメントという点ではクリストフォリのピアノと同じだな。
デモ動画 ★ クリストフォリのだとキーとハンマーの間にひとつパーツがあったけれど、イギリス式だとキーについているハンマーを突き上げる棒がハンマーの根元に当たる形状に工夫があって、クリストフォリのそのパーツが省略されている。
イギリス式アクションの体験キーのキャプション↓
イギリスの次はウィーンである。
↓ピアノ エールバー(ウィーン)19世紀中期 はね上げ式、シングルエスケープメント とキャプションにある。
譜面台の格子のすき間から見える ずらりと並んだ黒白のものはダンパー、そして足元にダンパーペダルがある(ペダルのまえにキャプションあり)。ペダルを踏んでいる間はダンパーが上がったままで、減衰して消えるまでは響きが長く続くのである。ダンパーとペダルのせいか妙にピアノっぽく見える。
ウィーン式アクションの体験キー↓ 見づらいけど弦は2本だと思う。
ウィーン式アクションの体験キーのキャプション↓ クリストフォリやイギリス式のと違ってハンマーヘッドは手前から上がるんだな。それを"はね上げ式"っていっているのかな? じゃあ、クリストフォリやイギリス式の向こう側からハンマーヘッドが上がるのが"突き上げ式"?
デモ動画 ★ ↑↑ウィーン式アクションの体験キーだとハンマーがキーの端に直接ついていると思ったが、動画だと違う。うーん、もう一度 浜松市楽器博物館に行ってよおく見たい。
楽器の事典ピアノ 第1章 ピアノの生誕と発達の歴史 9 18世紀におけるアクションの発達 やその次の記事 10 <シングルアクション> <ダブルアクション> <ウィンナアクション> には、当時の状況や、主にイギリス式とウィーン式のアクションの比較が述べられている。
「長所、つまりウィーンの楽器のレペティションに優れた敏感さと、イギリスの楽器の音量の強大さ」なんですって。モーツァルトがウィーン式を推したのも分かるなあ。地元だし。
また、「原始的アクションはさまざまな欠陥を持っており、それを補うためには、どうしてもエスケープメントをつけざるを得なかった。エスケープメントとは、ハンマーが弦に近づく直前にその駆動装置から外れて自由になり弦を叩いてはね戻る仕掛けである」という記述もある。これ最重要事項です。
そうっとピアノのキーを押すと音が出ないのは、ハンマーが慣性で弦を打つ勢いがない状態だとハンマーが弦に最接近しても届かずにハンマーがエスケープしちゃうからなんだな。
ところで、リンク元の 楽器の事典ピアノ は月刊ショパンを出しているハンナという出版社が以前出した本で、
「〜ピアノは楽器の王である〜 平成2年に発行された「改訂 楽器の事典ピアノ」30年たっても今なおその価値を失わない、幻の絶版本をwebで公開!」なんだそうだ。
情報源としてたいそうありがたいのだが、リンク切れがあったりするのが難。
18~19世紀のピアノのウィーン式とイギリス式の比較表↓ カラーがはっきり違うんだなあ。
産業革命による楽器製作の工業化というのがポイントだ。時代の流れを感じる。
浜松市楽器博物館へ行った。その9(ピアノその2) へつづく
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