ふくらく通信

東北人が記す、東北の良さや震災の事、日々のなんだりかんだり。
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仙台味噌屋敷

2017-12-08 13:24:12 | ゆるゆる歩き:旧跡

頃は神無月にさかのぼる。

江戸詰めを命じられた藩士のごとく、屋移りをして間もなくのこと。

品川大井の仙台藩下屋敷を訪ねる。

(2017‐10‐31:旧仙台坂)



そこに残ったのは樅ノ木ではなく、タブノキであった。

屋敷沿いの通りゆえ、仙台坂や暗闇坂と呼ばれた坂は、なかなかの急坂である。

坂が緩やかになったあたりで、大きなタブノキが、往来する人々を今もなお見守っている。


(2017‐10‐31:仙台坂のタブノキ)


坂の上の池上通りと交わる辻に、木造りで瓦屋根の大きな平家が見える。

これぞ、味噌屋敷の謂れの名残なり。

藩士の暮らしを支えた味噌蔵が今に続く。


(2017‐10‐31:味噌醸造所)



仙台藩の下屋敷には、藩士のための味噌蔵が作られた。

屋敷内で味噌づくりをし、藩士の食としたが、後に余りを江戸市中に売り出したという。

仙台味噌は江戸っ子の評判となり、屋敷は味噌屋敷と呼ばれたそう。


 

(参考:東北大学附属図書館『江戸の食文化 仙台藩の名産品 仙台味噌』/品川区『品川の大名屋敷』/仙台市教育委員会『仙台旧城下町に所在する 民俗文化財調査報告書⑥ 2010年3月 仙台味噌』)



今も関東でジョウセン仙台味噌が出回っている。

さらに、「八木合名会社仙台味噌醸造所」は、まさに下屋敷の味噌づくりを引き継いだ店だ。

そこには「五風十雨」という味噌がある。




量り売りで、好きな分だけ杓文字で取り分けてもらう。

なんと芳しいことか。

熟成した濃い色、香り豊か、塩気が力強いが切れが良く、コクも甘みもある。

 


江戸詰めも、郷の味にて和む暮らしで候。