※2010年7月24日の記録より
好天気で、強い日差しに町中が鮮明に見える。
気仙沼の魚市場前は、海も空も真っ青だ。
市場の隣の「リアスシャークミュージアム」に入ると、
鮫の種類は様々だし、獰猛な鮫は僅かで、本当はおとなしい鮫がほとんどなのだと知った。
鮫にも色々いるのに、敬遠していて御免よと、おとなしい鮫に声を掛けてきたのだった。
魚市場前をゆるゆる歩く。
市場の傍に、斉民さんという、船で使う道具や部品をたくさん置いている店がある。
店頭のガラス越しに見える、舵隣が綺麗だ。
珈琲店を左手に通りを進み、十字路を左に曲がって南気仙沼駅の方へ歩く。
仲町に入ると、こざっぱりとした店で、喫茶か軽食屋さんだろうかと思う店が目に入った。
良く見ると、お弁当屋さんだった。看板の大きな手書き文字が、なかなか感じが良い。
「新メニュー、鶏ソースかつ丼」と、店頭に貼り紙があったので、今度食べてみようと思いながら、眺めて通り過ぎる。
左の路地へと入る。
昔ながらといった風情の、趣のある店が点在していた。
「もち 源兵衛屋」という看板の下に、こじんまりとした店が見える。 日陰で涼しげな店に、白い暖簾が清々しい。
さらに進むと、辻にあたり、ここを右へ行くと「ろばた館」の看板が目に入る。
気仙沼ホルモンは有名だが、ここも焼き鳥やホルモン焼きを出す居酒屋だ。
店の前に、赤提灯とガラス玉の浮きやランプが吊るされ、狸の置物に花の生垣と、
なんとも和やかで楽しげな雰囲気なのがいい。
その向こうはまた辻で、角に涼しげにすだれが揺れる店があった。すだれの間から、野菜が覗く。
八百屋かと思ったら、店頭の字に「漬物処 麻布屋」とある。漬物と野菜を売るお店らしい。
すだれが、まるで涼しい風を運ぶようで、ゆったりとして心地よい。
すだれに張られた品書きの配置も美しく、洒落ている。こんな品書きを見ると、これは美味そうだと思うし、値をみると安いではないか。地場のものだから、新鮮で安いらしい。いい店だ。
麻布屋から、まっすぐ市場の方へと戻る。
しばらく行くと、仲町大通の辻に出る。 辻のまさに角に、「でまえれすとらん」と書かれた店があった。
店頭に大きく「フカヒレ」の文字も見える。
「ふかひれラーメン」が自慢の品なのだそうだ。
何で「でまえれすとらん」なのかと思ったら、この店は出張料理もしているらしいのだ。
さて、一巡りしてシャークミュージアムに戻ってきた。
趣のある建物が多いし、フォークリフトが行ったり来たりして港らしい光景もあり、ゆるゆる歩いて見て回るのが楽しかった。
気仙沼は、落ち着いた町並みと快活な人々がいる、いい町だ。
※震災後の仲町と魚市場前(2011年12月29日の記録より)
市場は、地元の方たちの奮闘で片付いたが、リアスシャークミュージアムの前にはまだ船が乗りあがったままだ。
市場近くで、船具を売っていた斎民さんのお店も、そこから仲町にかけて一帯の店や住宅が、たくさん失われた。
でまえれすとらんも無く、あっちこっちの多くが空き地になってしまい、今通っている場所が、どこだったのか分らなくなる。
そんな中で、さかな市場や仮設の商店街など、いくつかの店が再開している。
生き残った人々が、今日を生き、明日を生きていくのだ。