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読んだ本の感想と旅行の日記を書いていきます。
後、その他なんかあれば・・・

125冊目:「利己的な遺伝子」

2014-03-22 23:30:24 | 
総評:★★★★★ インパクトのみで5つ星!マジで凄い!
面白い度:★★★★★ ひたすら凄い!難しいが面白い!
読みやすい度:★☆☆☆☆ かなり読みにくい。
ためになる度:★★★★★ 意識がかなり変わった!
また読みたい度:★★☆☆☆ 難しいからあまり読み返さないかも。。。


とても長かった・・・
実に読むのに1ヶ月以上かかった本でした。分厚く、そして難しかった。。。
しかし!この本のインパクトはとてつもないものがあった!!
まじで今まで読んだ本の中で3本の指には入るくらい!!

30年以上前に刊行しているが、多方面からかなり良い評価を受けている本。
自己啓発といったジャンルの本ではなく、ダーウィンの進化論やシートン動物記と言った、
ちょっと敷居が低めの学術書と言った感じである。

しかし!本当に生物の考え方を根底から覆されるような新しい概念を与えてくれる本だった。
利己的な遺伝子という題名なのは、例えばミツバチが何者かを針で刺して自分が絶命することなど、いわゆる生物が他の生物を生かして自ら絶命などをするような行動を利他的行動と呼んでいるが、その利他的行動というのは存在せず、生物(遺伝子)は全てが常に利己的な行動を取る、ということを言っているのである。

その色々な動物に見られる利他的行動のようなものがなぜ利己的行動になるのかをこの本は難しい内容をなるべく分かりやすく説明しようと試みている。
1冊読み終わって、一応自分も全ての利他的行動に見えるものが実は利己的であるということに納得がいった。
そのような、遺伝子は常に利己的な行動を取るという、一本軸の通った内容を一つ一つ順序立てて説明していて、本当にこの作者は読者に分かりやすく説明できるようにうまくまとめたな~って思った。


ちょっとこの本を読んで凄い!と思ったことをいくつか項目に分けて書く。

○遺伝子について
遺伝子って本当に凄いと思う。遺伝子っていうのは生物から生物へそのものの情報を伝えるものであるが、ここではヒトの遺伝子について書く。
ヒトの遺伝子は23対の46本の染色体から成っており、それぞれ1番~23番染色体と名前が付いている。
1番~22番の染色体は、そのまま同じような情報が対になったものであるが、23番目の染色体はXX、XYと分かれていて、XXの染色体を持っていると女性、XYの染色体を持っていると男性となる。

染色体はA, G, C, Tの塩基配列であるDNAから出来ている。
染色体は分裂をする。それはDNAおよび染色体がそのまままるごとコピーされる。このコピーのメカニズムはDNAの世界の方になるが、その話はここでは割愛する。
よってこの染色体の丸ごとコピーが行われることによって、細胞分裂が行われている。

ここで、ヒトは常に染色体の丸ごとコピーによって細胞分裂が行われているのだが、染色体というのは、ヒトの情報が詰め込まれたまさに膨大なデータなのである。
例えば、日本人の目や髪が黒い情報、身長がここまで伸びるという情報、など、その人の運命までを司るような全ての情報が入っている。
とても小さい染色体の46本の情報にその情報が詰め込まれているのがまずすごいのだが。

ここからさらに凄いと思ったのは、ヒトの体は基本どこでも完全コピーの細胞分裂が行われるが、体の中の一カ所だけ、完全コピーが行われない場所がある。それが、精巣と卵巣なのである。
精巣と卵巣では、46本の染色体が23本に分裂しているのだ。これを減数分裂という。

46本から23本への分裂というのは、23対になっている染色体の情報の対の部分がそれぞれ色々組み合わせを変え、2つの染色体が1つの染色体に合成される。
そして、受精という現象を経て、精子の中の23本の染色体と卵子の中の23本の染色体が合体し、ヒトの23対46本の染色体となる!
ということをこの本を読んで初めて知って、感動した。

これは、まさに父方の23本の染色体と母方の23本の染色体の合体となり、まさにヒトは、親の1/2ずつを受け継いだものとなっているのだ。
そして、仮に父方の髪の色が黒、母方の髪の色が茶色だとして、そのどちらかの形質が子どもに遺伝されることになる。
この同じ髪の色を定義する情報(遺伝子)を対立遺伝子といい、仮に子どもの髪の色が黒だとしたら、そちらの遺伝子の情報を優勢といい、劣勢になった母親の遺伝子の情報は子どもには出てこない。
しかし、その遺伝子の情報は子どもにはしっかり遺伝されており、子どもの減数分裂によって、劣勢の遺伝子の情報の方が選ばれて、次の子孫に遺伝するかも知れないのだ。

このメカニズムを知っただけで、マジで遺伝子って凄いと思った。
ここで、遺伝子というのは厳密に言うと、髪の色や目の色だったり、そのヒトの情報を定義する一つの情報(染色体のある範囲)のことをいう。
ヒトの遺伝のメカニズムを知れたことで、まず大きな発見になった。


○生物は遺伝子のヴィークル(乗り物)である
ヒトだけでなく、チョウでもアリでも遺伝子を持っており、有機体と呼ばれるものについては全て遺伝子というものを持っている。
地球の始まりの時は、まずは有機体は海にて生まれたが、そこは生命のスープと呼ばれるように色々な有機体が混ざりあったものであった。

そこから有機体は細胞分裂を繰り返し、そしてまれに突然変異と呼ばれる遺伝子の変化が起こり、その突然変異した有機体が生き残って突然変異をまたくり返し進化していったものがチョウやアリやヒトだったりするのだ。
そこで、遺伝子はコピーを繰り返すなかで、自分のコピーを残して行く。
よって自分の体の中の遺伝子も生命のスープの状態であった遺伝子の情報が残っていたりするのだ。

言わば生命は死んでも遺伝子はずっとコピーを続け太古から現在まで残り続けている。
遺伝子は不死身である。遺伝子はその遺伝子を保有する生物の体を使って、生き続けているのだ。
なので、生物は遺伝子が乗り込む乗り物であると言えよう。本では生物は遺伝子の生存機械とも言っている。
遺伝子は生物が死んでも自分のコピーを子孫に伝え、乗り物を変えて生き残り続けて行く。

この概念も本当に凄い。考え方としては自分の体も遺伝子の乗り物と言えよう。
将来は誰かと結構して子どもを産み、先祖代々伝えられてきた遺伝子の情報を残すのだろう。
自分を乗り物にした遺伝子の情報は残って行く。よって自分は遺伝子にいいように操られているのだ。
利己的な遺伝子というのもこのことから来るのもあるかも知れない。

遺伝子に操られているというのは、この本ではコンピュータープログラミングに例えられている。
遺伝子はその場その場の判断は出来ない。ただの情報である。
コンピュータープログラミングは例えば将棋ソフトで言うと、この局面ではこうするという情報がプログラミングされているのではなく、こういった戦略で指して行くと言った情報がプログラミングされている。

遺伝子もこの局面ではこうすると言った動的な反応がプログラミングされている訳ではない。
ヒトが成長し、遺伝子を残し、死んで行くと言った一生をかけての戦略、というかヒトの成長にかけての細胞分裂だったり、大まかな行動を人間にプログラミングしているのだ。

この遺伝子の情報にしたがって、ヒトはある歳になったら体に変化が起こり、立ったり歩いたりという体の変化や学習機能などの大まかなヒトの性質が現れてくるのだろう。
よってヒトの3大欲求や思春期、男女の性欲の違いだったりも遺伝子の影響にあるのであろう。

ここでさらに重要なのは、ヒトの遺伝子が淘汰によって生き残ってきたということだ。
淘汰というのは、その時その状況で生き残りやすい遺伝子の情報が残って行くということだ。
よって今までのヒトの平均的な身長や体重なども、淘汰の結果生き残りやすいということで選抜されて残ってきたのであろう。そのため、ヒトが今のサイズに収まっていたり、男女の考え方の違いだったりするのも、理由があって残ってきたのであろう。

そういった今まで疑問に持っていたヒトの性質だったりしたことも、遺伝子の視点から考えられるようになった。


○近親度の概念
この本では近親度という概念が説明されており、この概念も大きく意識が変わった。
自分は親から1/2ずつ遺伝子を受け継いでいる。自分には兄もいるが、兄も親から1/2ずつ遺伝子を受け継いでいる。
遺伝子からすると、両親から遺伝子を1/2ずつ遺伝子がコピーされているので、1/2×1/2×2という計算式で、自分と兄とは、1/2の割合で同じ遺伝子を持っていることになる。この概念を本では近親度と言っている。

また自分の叔父、叔母との近親度を考えると、今度は祖父、祖母の所から考えることになり、祖父、祖母から叔父叔母は1/2ずつ遺伝子を受け継いでおり、また自分は1/4ずつ遺伝子を受け付いているということになる。
ということで、1/2×1/4×2で、1/4の割合で同じ遺伝子を持っていると言える。
ちなみにいとこの場合だと1/8になる。
こう考えると、自分の血縁関係はいとこより叔父叔母の方が遺伝子的には近いんだなと思って新しい概念を学んだ。

また、両親、兄弟、叔父叔母、いとこで、どのぐらいの割合で同じ遺伝子を持っていると考えると、やはり血縁関係にある親族に親しみというか、やはり似ているという感覚を改めて覚えた。
親族というのはやはり普段会ったり遊んでいる友達と比べると、やはり特別なんだなと考えるようになった。


あとは、前の本でちょっと学んだゲーム理論の観点から遺伝子の淘汰に触れていたり、遺伝子を後世に引継いでいくに当たって、「産むこと」と「育てること」の2つの軸からの考えで、生物の男女間の意識の違いが生まれるということが分かった。
他にもかなり面白い内容もあったが、やはり難しい概念もあるので、説明はここら辺にしておく。

そんなんで、とても難しかったが、とても大きなインパクトを得た1冊でした☆