胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

胃腺窩上皮型腺腫(gastric foveolar-type adenoma)と深切り切片(deeper sections) vs.連続切片(serial sections)。ラズベリー様ポリープ

2024-03-31 | 胃腺腫
H. pylori未感染で萎縮のない体部粘膜に発生してきたラズベリー様ポリープ raspberry-like polypからの生検でfoveolar-type adenoma/dysplasiaと診断したので、CSPされました。
ところが、最初の切片に腫瘍が見当たらないで、深切り切片を作ってもらいました(Fig. A: 見出し写真クリック!)。


ルーペ像右端の切片です。腫瘍がない!腺窩上皮過形成のみ!どないしょう!(Fig. B)


ルーペ像左端の切片です。腺窩上皮型腺腫 foveolar-type adenoma/dysplasiaあり!ほっとした(Fig. C)。
(低異型度な腺窩上皮型細胞が領域性とフロントが明瞭な増殖を示しています。毛細血管豊富で広い間質も特徴的です。Fig. Bのfoveolar hyperplasiaと比べてください)

”深切り切片”と”連続切片”を使い分けて、正診に迫りたいところですが、やりすぎるとせっかくの検体がなってしまうことがあるのでほどほどに。

SLダイヤ情報の”深切り切片””連続切片”(Fig. D:写真クリック)

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PGA (pyloric gland adenoma) in AIG (autoimmune gastritis). 幽門腺腺腫@自己免疫性胃炎.

2023-12-21 | 胃腺腫
 幽門腺腺腫は幽門腺という名前が付いていますが、多くは萎縮のある胃底腺領域粘膜に発生します(見出し写真クリック!)。偽幽門腺化生・幽門腺化生が関連しているからです。したがって、頚部粘液細胞~幽門腺の形質を持つ細胞が主体となります。
 以前から、欧米の報告では背景粘膜として自己免疫性胃炎が多いと記載されていました。日本で経験する症例はこれまでほとんどがH. pylori胃炎による萎縮性胃底腺粘膜からの発生例でした。
 最近、自己免疫性胃炎を拝見する機会が多くなり、そこに発生する幽門腺腺腫もしばしばみるようになりました。
 本例は内視鏡像とあわせると内反性増殖をするタイプのようです。


滋賀県名物サンドウイッチとサラダパン
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腺窩上皮型腺腫 Foveolar-type adenoma: Raspberry type vs. FAP-GAPPS associated

2022-12-20 | 胃腺腫
"Well-vascularized broad stroma"

H. pylori未感染胃(H. pylori naive gastric mucosa)に発生する胃腺窩上皮型腺腫 gastric foveolar-type adenomaです。
Raspberry typeとFAP/GAPPS associatedの違いは?
ラズベリー型(写真左)では"well-vascularized broad stroma"が特徴の一つであると神国出雲からの原著では記載されています(PMID:34043063) 。
GAPPS-associated(写真右)の間質は狭いですね。血の巡り具合が色調の違いの原因のひとつです。
参考:PMID 35968980


左:Broad stroma. 右:Narrow stroma
(博多駅にて)
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Foveolar-type gastric adenoma with a raspberry-like appearance, ラズベリー様ポリープ(2)

2021-06-14 | 胃腺腫
 神の国出雲発祥で、H. pylori未感染胃に発生するラズベリー様ポリープの胃腺窩上皮型腫瘍に関する本家の論文が、ヨーロッパ病理学会誌に掲載されました。
Sporadic foveolar-type gastric adenoma with a raspberry-like appearance in Helicobacter pylori-naïve patients.
というタイトルで、
PMID: 34043063 DOI: 10.1007/s00428-021-03124-3
です。ご笑読ください。
(本記事の見出し写真は淡海の国のラズベリー様ポリープです)

Originating from Izumo, a land of many Gods, the original article on foveolar-type neoplasia showing raspberry-like polyps occurring in H. pylori-uninfected stomachs has just been published in the Official Journal of the European Society of Pathology.
The title of the article is
"Sporadic foveolar-type gastric adenoma with a raspberry-like appearance in Helicobacter pylori-naïve patients."
PMID: 34043063 DOI: 10.1007/s00428-021-03124-3
Please enjoy it.


こちらは本物のラズベリーです(於:京都ホテルオークラ)。This is a real raspberry (at Kyoto Hotel Okura).


本ブログ 2018-12-17の記事
「ラズベリー"raspberry" ポリープ, foveolar adenoma/dysplasia/adenocarcinoma, 腺窩上皮型腫瘍」もご覧下さい

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「似て非なるもの」、腫瘍病理学の基本、腸型腺腫を用いて

2008-10-24 | 胃腺腫
 いつもオタクな症例ばかりアップしていますが、今回は初級者向け病理総論です。「腫瘍細胞・組織は発生母地の形態・機能を模倣する」というのが腫瘍病理組織学の基本のひとつです。また、病理や画像で病気を診断する際、病変と非病変の比較ということが重要です。腫瘍病理診断では病変周囲の正常組織だけでなく、炎症、再生、萎縮、過形成、化生などとの関連に注目して、比較しならがみることが重要です。
 さて、これは胃の管状腺腫(腸型)です。またの名を小腸型低異型度腺腫といいます。伝統的に異型上皮(ATP)とも言われてきたやつです。
 クリックしてください。写真の右側の腺管は完全型(小腸型)腸上皮化生です。吸収上皮と杯細胞が明瞭です。左側に腫瘍腺管があります。腺管の全体の形は右側の腸上皮化生とそっくりです。構成細胞も杯細胞型細胞と吸収上皮型細胞です。この部分ではパネート細胞型の細胞はみられません。
 ただ、腫瘍の方では、杯細胞型細胞の粘液が小型であり、細胞密度が高くなっており、核も正常より大きくなっています。腸型腺腫ではこのように核が少し細長く、細胞の縦軸方向に伸びるのが特徴ですが、基底膜側によく揃っています。
 
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良悪性境界病変のアンケート

2008-10-13 | 胃腺腫
 市場の近くで会議がありました。私は胃の腺腫を限定的に定義づけるという話題を提供しました。その中で先日アップいたしたアンケートの結果を提示しました。途中経過ですが、その一部を紹介します。写真のみの判定は無理があるのは承知の上ですが、多くの先生方にご回答をいただきました。ありがとうございました。
質問1
現行胃癌取扱い規約(第13版)の生検写真110、写真111(同一症例)について
(1) 生検診断に際して、Group分類は何と判定されますか?
Group III 17人
Group IV 5人
Group V 4人
Group分類しない   5人
Gropu III-IV 1人
(2) 生検診断に際しての診断名(記述的な仮診断名でもいいです)
Tubular adenoma with severe atypia 6人
Well diff. adenoca. 4人
Borderline lesion 3人
その他、Tubular adenoma with low grade atypia, TA with moderate atypia, adenomatous / neplastic lesionなど


質問2(質問1と内容は同じです)
現行胃癌取扱い規約(第13版)の生検写真112、写真113(同一症例)について
(1) 生検診断に際して、Group分類は何と判定されますか
Group III 8人
Group IV 10人
Group V 7人
Group分類しない 6人
Group III-IV 1人
(2) 生検診断に際しての診断名(記述的な仮診断名でもいいです)
Adenocarcinoma 8人
Susp. of adenocarcinoma 6人
Tubular adenoma with moderate atypia 2人
Tubular adenoma with severe atypia 3人
その他、TA with low grade atypia,, Adenomatous / neoplastic lesion, borderline lesion, papillary adenomaなど
コメント (6)
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胃腺腫、良悪性境界病変のアンケート

2008-09-22 | 胃腺腫
下記の様な質問を関係者にメールいたしました。アンケートにご協力お願いいたします。メールが届いていない先生方も私宛にメールでご回答くだされば幸いです。もし学会等で公表することがあるにしても診断された病理医は特定されません。

質問1
現行胃癌取扱い規約(第13版)の生検写真110、写真111(同一症例)について
(1) 生検診断に際して、Group分類は何と判定されますか?
a) Group
b) Group分類しない
(2) 生検診断に際しての診断名(記述的な仮診断名でもいいです)
(3) 切除標本(内視鏡的・外科的)で、腫瘍全体が写真のような組織像で形成されているとすれば何と診断されますか?
(4) その他(何かご意見があればお書き下さい)

質問2(質問1と内容は同じです)
現行胃癌取扱い規約(第13版)の生検写真112、写真113(同一症例)について
(1) 生検診断に際して、Group分類は何と判定されますか
a) Group
b) Group分類しない
(2) 生検診断に際しての診断名(記述的な仮診断名でもいいです)
(3) 切除標本(内視鏡的・外科的)で、腫瘍全体が写真のような組織像で形成されているとすれば何と診断されますか?
(4) その他(何かご意見があればお書き下さい)
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日韓の診断基準

2008-08-11 | 胃腺腫
 韓国の消化管病理のニューリーダーが1週間私のところに滞在し、胃腺腫と分化型腺癌の診断基準について討論した。彼女の主たる目的は私の胃型(幽門腺型)腺腫(PGA)コレクションをみることであった(4月には加国のリデル先生が来られて、PGAコレクションをみて感激してもらった)。PGAにとどまらず、最近韓国で経験された胃腺腫、早期胃癌、再生異型などの症例を100例ほど持参され、日常業務や外勤を後回しにして、徹底的に討論した。彼女は現在、韓国を代表する企業が経営する巨大メディカルセンターの病理医であるが、その病院には韓国中から胃癌患者が集中し、胃外科切除が昨年度は1800例、ESDも数百例あるようで、その経験数は半端ではない。ESD標本も大変美しい。
 韓国の消化管病理ではこれまで米国の診断基準が普及しているが、彼女のように早期胃癌や腺腫を日本並みあるいはそれ以上に経験しているとその診断基準では間に合わなくなってきているように思えた。たとえば、ソウルでGastric adenoma with high-grade dysplasia (HGD)と生検診断され、1-2年の経過観察後、ESDや外科手術されたものをみるとかなりの確率で粘膜下層に浸潤しているか、少なくとも明らかな粘膜固有層内浸潤が観察できるのである。このような生検標本をノーヒントで多数見せられた(試された?)が、我々の基準ではほとんどが初回生検で分化型腺癌と比較的簡単に診断できた。
 したがって、韓国の消化管腫瘍の診断基準は米国基準からかなり日本基準にシフトしてきている。実際一緒に鏡検していると、「日米良いとこ取り」という感じであった。
 私が採用している胃腺腫の診断基準は、近年箱根を越えて、日本のなかでも「東京基準」でかなり幅の狭いものになってきた。つまり、表面は平坦、直線的管状構造、基底側に配列する細長い紡錘形核、トップダウンの増殖パターンを基本的に全て満たすもののみを腺腫にしている。これを少し外れると癌ということに対しては異論も多いと思うが、実際そのようなものをESDして詳細に観察すると浸潤像に遭遇する確率が、日韓いずれの症例でも高いのである。
 現時点、彼女の診断基準で感じたのは以下の様なことである。
1) 絨毛腺腫の存在をある程度認めている。以前、絨毛腺腫と診断していたものでも、現在は乳頭腺癌と考えるようになった症例も多いようである。
2) 多少核が丸みを帯びていても腺腫と診断する(但しHGDと記載)。しかし、極性の乱れが目立ち始めると癌にしている。
3) 絨毛腺腫やHGDが日本で癌と診断されることはよく知っている。このような症例では、粘膜固有層内浸潤を懸命に探される。
4) 胃型(幽門腺型)腺腫の存在は認めているし、ソウルでも最近多数経験されている(いくつか見せてもらった)。しかし、アブラハムのいう腺窩上皮型腺腫(日本では胃型腺癌と診断されることが多い)も一応認めている。
5) 手繋ぎ癌(横這い癌、低異型度小腸型腺癌)も完全に理解している。
「日韓診断合戦」の症例写真も撮りためたので、今後アップしていきたい。
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ごあいさつ、その3

2008-07-23 | 胃腺腫
胃型(幽門腺型)腺腫の写真をもう一枚アップします。
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ごあいさつ、その2

2008-07-23 | 胃腺腫
胃型腺腫(幽門腺型腺腫)を少し拡大した画像です。
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ごあいさつ

2008-07-23 | 胃腺腫
 胃生検の小部屋にようこそ。ある班会議で「消化管腫瘍の病理診断の標準化」という難しいテーマをいただいており、仕事の一環としてこのブログを開設いたしましたが、教育的症例や興味深い症例の病理写真をいろいろアップロードしていきたいと思います。同業者の皆様、忌憚のないご意見をよろしくお願いします。
 本日は手始めに胃型腺腫(幽門腺型腺腫)をアップします。表層部で少し背の高い細胞が胃腺窩上皮型の細胞で、その直下に幽門腺型の腺管が密在するのが特徴です。これらの腺管の間には狭い間質が介在し、融合や不整な分岐はみられません。核は小型円形ですが、通常小さな核小体が観察されます。
 胃型腺腫(幽門腺型腺腫)はその存在すら信じないヒトも多いのですが、百聞は一見にしかずです。ガラススライドを沢山見たい方はご連絡ください。
 まずは弱拡大からどうぞ。
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