胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

早期胃癌研究会

2009-01-24 | 研究会、学会
 2009年1月度の早期胃癌研究会が丸の内3丁目でありました。
(1) 特異な外観を呈した胃の低分化adenocarcinomaの症例です。陥凹を伴う隆起性病変の周囲に境界明瞭な発赤病変があり、リンパ濾胞様の白点が多数みられました。拡大観察では蛙の卵のような外観です。強いリンパ球浸潤を伴う低分化腺癌で、粘膜下~粘膜層に著しいリンパ管侵襲があることで、このような外観を呈したようです。poorly differentiated adenocarcinoma with lymphoid stromaというご診断で、EBER陽性像も提示されていましたが、個々の細胞異型が強く、CD10も陽性で、定型的なGCLSとは異なるようにみえました。EBVのISHをやり直す必要があるように思えます。
(次の胃癌取扱い規約ではGCLSはリンパ球浸潤癌として、por1から独立するらしいです)
(2) 十二指腸ポリープです。ブルンナー腺過形成です。教科書によっては、このように平滑筋に囲まれた区画に腺房と腺管がユニットとして存在する場合、過誤腫というのが適当との記載があります。このブログのhamartomatous inverted (inverted hamartomatous ) polyp of stomachの記事も参照してください。
(3) 縦走潰瘍と低蛋白血症を呈したdrug-associated collagenous colitis (CC)の症例です。組織像についてはこのブログのバックナンバーを是非ご覧下さい。やはりCCには好酸球を伴うそこそこの形質細胞浸潤が粘膜全層性に出てきます。collagen bandにのみ注目すると失敗します。今年の12月号の「胃と腸」誌がcollagenous colitisに特化した内容になるそうです。なぜ、縦走潰瘍ができるのかよくわかりませんが、特徴的所見(特異的ではない!)になりつつあります。欧州の論文には粘膜脆弱性に内圧が加わって「裂ける」のでは?と書いています。内輪外縦の大腸の内腔側が縦に裂けるのはおかしいのでは(Dr Harley談)?
 2月度の会場は田町の近くです。写真はN700系博多行です。
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Fundic gland polyp with atypia (4)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 MIB-1(Ki67)染色すると予想以上に陽性細胞は少なく局在しています。活字になっているものとしては、先に紹介したNYのスーザン(AJP:APC/β-catenin異常に言及)と、病理と臨床の臨時増刊号(vol.24, 「悪性と誤りやすい良性疾患、良性と・・・」)の胃のところに載っています。
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Fundic gland polyp with atypia (3)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 表層部の腺窩上皮型の細胞の核が細長く立っているのが気になります。写真のように表層部まで立っているところもあれば、小さくなっている(表層分化)ところもあります。少し下のほうでは壁細胞が混じり合っています。
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Fundic gland polyp with atypia (2)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 同じ症例の別のところです。同様の症例は東北と湾岸の大先生によるVSを用いたアンケートで、10人の「消化管を専門とする」病理医の間で、「がん、非がん、わからない」(Group IからGroup Vまで)と意見がバラバラに分かれました。議論を蒸し返すようで申し訳ありません。
 とくに、写真の左上のところなど、腺窩上皮型のadenocarcinomaとの鑑別が問題になります。
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Fundic gland polyp with atypia (1)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 変な胃底腺ポリープがあったのでESDをしてもらいました・・・という相談がありました。この手ものは以前、玄界灘の近くの病理学会総会で、「臓器別診断講習会」デビューをした時、NYのスーザンの論文を引用する形で"fundic gland polyp with dysplasia"と紹介し、大先生に「それは幼若化だ!!」とボコボコにされた思い出があります。その時には、Dr Curryに助けてもらいました。
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Hamartomatous Inverted Polyp of Stomach (3)

2009-01-03 | 胃腫瘍様病変
 別のところの拡大です。左側は被覆粘膜で、本例ではH. pyloriの感染のない、非萎縮性胃底腺粘膜でした。
 本年も「胃生検の小部屋」をよろしくお願いします。
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Hamartomatous Inverted Polyp of Stomach (2)

2009-01-03 | 胃腫瘍様病変
先ほどの拡大です。ポリープの中には粘膜下異所性胃粘膜と同様、粘膜筋板で囲まれた区画性ともいうべき粘膜が認められます。大腸のPJ型ポリープとも似ています。
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Hamartomatous Inverted Polyp of Stomach (1)

2009-01-02 | 胃腫瘍様病変
 昨秋、同じ週に2件、胃のポリペクトミー標本に関する同様の相談が別施設からありました。元の診断は過形成性ポリープで、誤りではないのですが、「何か多彩な像なので、ちょっと...」ということです。組織診断名としては"Hamartomatous Inverted Polyp"が良いのではないでしょうかと返答しました。そのうちの1例を提示します。この言葉での検索で、きれいな症例報告にもヒットします。
 病変の成り立ちとしては、文字通り過誤腫であるのか、あるいは多くの粘膜下異所性胃粘膜と同じく後天的な機序が考えられると思います。
 まずはルーペ像からクリックして下さい。
 
コメント (3)
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