満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『オジいさん』

2011-05-20 06:06:45 | 

皆様おはようございます。毎日ぐだぐだしていたしわ寄せで、今日は朝から出かけないといけない羽目になりました黒猫でございますよ。仕事している間は普通にできることなのに、無職になるとどうしてこうだらけるのか・・・。不精にも程があるよね。

昨日読み終えた本は、わたしが今読むにふさわしい本でした。

『オジいさん』(京極夏彦著、中央公論新社)

益子徳一は72歳の独居老人。結婚もせず、従って子供も孫もおらず、仕事を退職した今となっては時間ばかりが有り余る。

ある日徳一は見知らぬ子供に「オジいサン」と呼びかけられたことを寝床の中で思い出す。
結婚していないので孫もおらず、「おじいさん」と呼びかけられる義理もない。高齢の男性に対する呼称であることはわかっているが、自分はそう呼ばれるような歳であったか。まあ72才といえば立派な高齢者ではあるが・・・そもそもいつ、どこでこう呼びかけられたのだっけ。
考えるうちに思考がどんどんずれていき、再び最初の考えに戻ろうとするも、そもそも何を考えていたのだったか。そんなことを繰り返すオジいサン。

ケイタイってなんだ。携帯とは何かを持って歩くという意味なのに、それ自体を持って歩くってどういうことなのだ。「地デジ」って何なのだ、まだきれいに映るTVが映らなくなるってどういうことなのだ。ちゃんとNHKの受信料は払っているのに。

そんな感じで、世の中の新しい事象についていきにくくなった、真面目で几帳面なおじいさんが思うところを綴った話。



世の中に不思議なものなど何もないと斬って捨てる憑き物落としの人とか、御行奉為っちゃう人とかを期待する京極ファンにはおすすめできません。
今回はそっち系統ではありません。まあ、タイトルからしていかにもゆる系だけど。

考えているうちにそもそも何を考えていたのかわからなくなってしまったり、世の中の流れについていけなくなってきたことを不安に思いつつも憤ったりする気持ちに何故だかむやみやたら共感してしまいました(笑)。
そして懇意にしている電器屋に「お年寄りは新しいものに無知だけどしょうがない」というような感じのことを言われたとき、「無知なわけじゃない、ちょっと億劫なだけだ」と思うモノローグに「わかる!超わかる!」と激しく同意してしまった。わかる。やればできるけどちょっと億劫なんだよね!ものすごいわかる。今まさにわたしその状態。

・・・まだ老境には余裕があるはずなのに、72歳の心境に心の底から同意してしまうのはちょっとヤバいかな。今からそんなんでどうすんだ。
まあ、作者の京極夏彦だってまだそんな年ではないですから、リアルな高齢者はまた違うものなのかもしれませんが。

このオジいサンは「買い出しは毎週水曜」と決めていたり、日常生活全般にかなり几帳面で、わたしなんかよりよっぽどきちんとした生活を送っていらっしゃいまして、我が身を振り返って思わず反省してしまいました。京極夏彦もまさかこういう読み方をされるとは思ってなかっただろうなあ(笑)。

タイトルの『オジいサン』は、「こうとしか表現できない発音で呼ばれた」ということらしいんですが、どういう発音なんだろ。「い」だけ平仮名なんだって。

独り身のオジいサンが色々面白いことを考えつつ送る日々を綴っているわけですが、どういう結末になるのやらと思っていたら、思いがけずほんわかした結末でよかったです。

わたしはこのオジいサンと是非お友達になりたいです。思考が面白い。 色々ツッコミたい(笑)。


まあ、ドラマチックな展開はゼロといってもいいので、結構人を選ぶ作品だと思いますが、わたしにとっては面白かったです。
さー次は豆腐小僧の続刊読むか。


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