夜の高速が好きだ。ほとんど直線の道を一定の速度で走っていると、この世界、自分が同じ空間にとどまり風景が後ろに流れて行くような感覚と穏やかなエンジンの音に深い安寧の境地に。そして今、自分が世界でただ一人存在するような錯覚、否、これこそがリアルであるという裏付けはないが確信みちた感覚に幸福ですらある。それにしても、この旅の始まりがいつだったか、そしてどこで終わるのか判らない自分にあれ?って思うが、な~にどんな長い道でも終点はあるさと答えをやり過ごす。
流れるように後方に過ぎて行く白いセンターラインを嗚呼、自分の過去が見える、そして現在が過去に替わるねと薄ら思いながら人生の断片が脳裏に現れては消え、その中でもつい最近の高速での事故の記憶、今まさに危険な高速ドライブ中なので鮮やかに思い出すが、あの中央分離帯を乗り越え回転しながら大型バスに突っ込んでくる黒い車の事故の録画、あれは恐ろしい、あの事故の後、見た夢はまさしく同じ光景で自分たち夫婦が乗った車に回転しながら突っ込んでくる黒い車。だがハンドルを切るとかの回避行動を取る時間は無く、ただ左手で妻の手を握り「・・子」と言い終わる前に世界は暗転し終わる。
本当にあれは怖いよね、一瞬だけど死を感じたし、まあ、あれが夢だったのはほら、今、自分一人でドライブ中なのだから。妻は最初から乗ってないし。
それから、どれくらい走り続けたか、そろそろ休まなくては、いや、まだまだ走れるね、サービスエリアまだ?と思っていたら・・・
「え~あんたよ!」と突然声を掛けられ、いつの間にかに助手席に目が血走って大仏様の様なパンチパーマのデブチンおばさんが座っとる。あわわ~高速で走る車にどうやって乗りこんだか、もしや妖怪?、化け物?、俺、幻覚でも見ているのかとパニック。言葉にならず、あわわわ~二回目。そしたら、
私はねユタの金城おばあさ、本当に大変だった、あんたを掴まえる為、パワーのほとんど使い切り、やっと、この車、といってもあんたの世界、あんたが造り出した「高速道路を走り続ける私」の架空の精神世界にこちらの波長を同調させ遂に登場~なわけ。もう分ったでしょ、あんた死んでるよ~それも3年前に。あんたの奥さん、やはり命を生み出せる女はイザとなったら潔いね~死んですぐにあっさり現実を受け止めて成仏したのに、男のあんたは死んだ事を認めない自縛霊となり今日に至るので悲しみの子孫が私にあんたの成仏を依頼したのよ~
こうして私は無事にあの世へと旅立ちました。
ニライカナイとか何処にあるのかしら?
よんでくれてありがとうございます