追憶の堕天使たち
第一話②
夢魔サキュバスによる幻影洗脳(がくしゅう)が行われている中、ルシファーは屋敷へ姿を現した。
「ミカエル。幻影洗脳(がくしゅう)は進んでいるようだね。」
「今から同時にガブリエルの戦闘能力を強化する。」
この火星(せかい)では僅か12日なのだが、ルシファーたちの天界(せかい)では一年である。
そう。既にルシファーたちは十三日即ち一年と一ヶ月を費やしている事に成る。
そのルシファーの計画では、ガブリエルを理想の近衛兵長に育て上げるのに、あと七日、その後、人間と戦争をさせ、奴隷と成る人間を採取するのに六十日と考えている。
そして、十日を費やし、神々の王ゼウスを倒す。
トータルで百日「百年戦争」の終結。
そして、その暁には今は肉体こそ滅んでしまったが、魂としては未だに生き続ける母親の復活を成し遂げ、女王としての母親を君臨させる。
これがルシファーの計画(ねがい)である。
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「そう云えば、ルシファー様。今日はご誕生際ですね。」
笑顔を見せ、ミカエルが云った。
「ああ。288歳と云うべきか?はたまた23歳と云うべきかな!?」
「まぁ。どちらにしても完全な悲願達成まで七十九日だ。百年戦争終結後、二日間の再生時間、この私が1.500歳の日を迎える日、私の悲願は達成される。」
「ルシファー様。」
ルシファーに歩み寄り、ルシファーの背中に右の頬を埋めるようにあてがうミカエル。
そして、夜が明け、また一日がはじまる…
◆
ガブリエルが眠りに入って丸二日間が過ぎ、夢魔サキュバスの送り出す幻夢により、ガブリエルの心(A.I)には着実に愛が育まれいる事が、伺えた。
無意識の内に身体を動かしたり、閉じる瞳から無色透明な潤滑油(なみだ)を時折、流していた_。
その間に、ガブリエルの護衛チップと格闘・戦闘チップのアップデートが施され、強化アーマープロテクトが新たに造られた。
ルシファーはミカエルに夢魔サキュバスを呼び出させた。
床に片膝を着け、頭(こうべ)を深々と垂れるサキュバス。
「ルシファー様。御呼びで御座いますか?」
「ガブリエルの強化プログラムに移行する。」
「ガブリエルには私に抱かれた感覚を与え、その後、私をゼウスに殺させろ。」
「ぎょ…御意。」
青ざめた顔を覗かせ、震えた声でサキュバスは返事をした。
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想い人ルシファーに身を委ね、すべてを受け入れるガブリエル。
ルシファーの背中に腕を回し、やがてガブリエルの身体は弓なりに…
小刻みに揺れるガブリエルの身体…
ルシファーの優しい笑顔…
ガブリエルの頬に伝わる涙…
ルシファーとガブリエルの唇がやさしく重なりあう…
ゆっくりと瞳を開けるガブリエル…
だが、同時にルシファーの首が飛ぶ…。
「あああああーーーッ!!」
眼を見開き、叫びを上げるガブリエルは同時に大剣を天高く掲げる男の姿を目の前に観た。
「遂に儂の邪魔者。ルシファーの首、捕ったぞ。」
「フッハッハッハッハッ!!」
「このゼウスこそが、この世界を治めるに相応しいのだ!」
「フッハッハッハッハッ!!」
「儂にく跪ずけ!」
「さすれば、命だけは助けてやる!」
「逆らえば、お前が育んで来た愛を感情をすべてを壊す!」
「ルシファーがお前に与えたすべてを壊す!」
「さあ!跪付け!地面に頭を擦り付け誓え!」
「そして、そこにある長剣を取り、ルシファーを刻め!」
ガブリエルは身体を震わせるだけだった。
「どうした?すべてを壊すぞ!」
「誓え!」
「わたくしガブリエルはゼウス様のシモベ。ゼウス様の愛人。ゼウス様の児を産み、児はゼウス様の奴隷に捧げます。」と。
ガブリエルは震えながら裸体のまま、頭を床に着け、ぼそぼそと何かを口にした。
「ガブリエルよ。聞こえぬぞ。」
それでもガブリエルはぼそぼそと何かを呟くのを止めなかった。
「孤独に怯えた月は 空を抱きしめながら
涙で見えない 貴方を探して叫んだ
貴方の瞳に映る私は 笑っていた
もう二度と逢えぬ 微笑を前に
暗闇で叫び続ける 貴方が見える遠過ぎて…」
涙で見えない 貴方を探して叫んだ
貴方の瞳に映る私は 笑っていた
もう二度と逢えぬ 微笑を前に
暗闇で叫び続ける 貴方が見える遠過ぎて…」
「壊れるほど私を 強く抱きしめて
もう一度逢えるなら 夢の中でいい
永遠の眠りをください
壊れるほど私を 強く抱きしめて
夢から醒めては消える 貴方の笑顔も
愛し過ぎる その声も
もう一度 逢えるから 約束したから
溢れるほどの愛で 優しく包んで」
「永遠の眠りをください 貴方が見えない…」
「貴方が見えない…」
「聞こえぬか?」
大剣を掲げる男はガブリエルを覗き込むように屈んだ。
ガブリエルは少し顔を上げ、「ならば__。」
ガブリエルはゼウスを睨み上げると、素早く床に落ちる長剣を拾い上げると、一気にゼウスの方へ走りだし、天高くジャンプしながらゼウスに斬りかかる。
思わずのけ反るゼウス。
長剣は振り下ろされ、ゼウスの一物を斬り墜とした。
ゼウスの断末魔の叫びとも思える叫び声が、響き渡る中、ガブリエルはルシファーの声を聞いた。
「もう一度、逢えるから…」
その声が聞こえると、辺り一面は闇に包まれ、何事も無かったように静けさが、ガブリエルを包み込んだ。
◆
震えるガブリエル。
涙を流して震えるガブリエル。
「どうした?ガブリエル?」
聞き覚えのある声がガブリエルのメインA.Iを刺激する。
「う~ん。」と一言、発するとガブリエルは眼を覚ました。
「……僕…君!?」
ぼんやりとルシファーの顔が浮かび上がる。
緩やかな笑顔を覗かせ、涙が頬を伝う。
「逢いたかったよ。僕…君…ルシファーぁぁぁぁぁーーーッ!」
「ごめんよ。ガブリエル。」
「寂しい思いをさせて。」
ルシファーは、そっとガブリエルを抱き寄せ、髪をなでた。
正常に戻るA.I
ガブリエルは、とっさに無意識にルシファーを突き放す。
「……僕…君。」
「私としたことが…ごめんなさい。」
ルシファーは怒る事はしなかった。
「いいよ。大丈夫だから。」
「夢を見ていたんだね。」
「酷くうなされていた。でも、もう大丈夫だから。」
「僕がガブリエル。君を守るから。」
「僕…ルシファーさん。それは駄目。お守りする仕事は私の仕事。」
「アハハ。」」
「ガブリエルは真面目だね。」
「なら、こうしよう。」
「ガブリエル。君は僕を守る。僕はガブリエル。君を守る。」
「お互いが愛し、お互いが守る。」
「…うん。」
少し、躊躇いがあったようだが、ガブリエルはルシファーが、そう云うのならと、A.Iに自己プログラムした。
夜景を二人は楽しんでいた。
◆
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「あら、二人とも此処に居たんだ。」
そう云いながらミカエルが姿を表し、近づいて来る。
「もう少し、僕君と二人きりで居たかっつな。」と、思うガブリエル。
そんな事はお見通しのミカエルはわざと二人の仲を羨んだ。
「ミカエル。ガブリエルにはあと二回、同じ夢を観せるんだ。」
「但し、二回目のラストはゼウスの顔を私の顔と入れ替えてな。」
ルシファーとミカエルは感応波を持ち入り、会話した。
「貴女とゼウスを入れ替えて?」
「そう。悲しみ、憎しみ、そして「怒り」だけでは勝てない事を。怒りをコントロールする術を身に着けさせる。」
「そうでなければ、本物のゼウスは倒せん!」
冬の夜空(このじき)に流れる"双子座流星群"をガブリエル、ルシファー、ミカエルの三人は眺めていた_。
第二話へ
つづく。
ーあとがきー
この物語りは、趣味を含むオリジナル作品です。
冒頭に引用書きした闇の柊焉
RETURNER~闇の終焉~
作詞:Gackt.C 作曲:Gackt.Cの曲を視聴した時、"これだ"と感じた、この物語りのヒントと成ったのをきっかけに加え、古の神話を今時風の神話を書いてみたいとの思いから、書いてみる事にしました。
使用している画像は挿し絵的イメージです。
また、一部の画像は、インターネット内に出回っている数有る画像から引用したものです。
※一部、Wikipedia及びYouTubeより引用。
つづく。
ーあとがきー
この物語りは、趣味を含むオリジナル作品です。
冒頭に引用書きした闇の柊焉
RETURNER~闇の終焉~
作詞:Gackt.C 作曲:Gackt.Cの曲を視聴した時、"これだ"と感じた、この物語りのヒントと成ったのをきっかけに加え、古の神話を今時風の神話を書いてみたいとの思いから、書いてみる事にしました。
使用している画像は挿し絵的イメージです。
また、一部の画像は、インターネット内に出回っている数有る画像から引用したものです。
※一部、Wikipedia及びYouTubeより引用。