追憶の堕天使たち
第二話③
翌日を迎えた私はキマイラに乗りたくて仕方なかった。
でも、その願いはすぐに叶った。
「うむ。ガブリエル。分かった。」
「君の好きなようには飛ぶといい。」
私は、その言葉を待っていましたと言わんばかりに、格納庫へと走り出した。
発艦手順はもう既に習得済み。
私は颯爽(さっそう)とキマイラへ乗り込み、管制に従い、キマイラを飛翔(とばし)た。
私は時間にして二、三十分、自由気ままにキマイラを飛翔させた。
昨日の復習を兼ねて飛翔した。
そんな私に僕君は、私を試すかのように、ヘルハウンドを数機飛ばして来た。
少しの間、私はヘルハウンドと戯れた。
戯れて数分が過ぎたころ、ヘルハウンドの一機が私に襲い掛かる。
「えっ!?何?」
確かに模擬弾ではあったけど、これが実弾ならキマイラは、私は、被弾、最悪なら爆発炎上もあり得る。
私は僕君の無線が飛び込む前に、無意識に臨戦体制に移行していた。
「私とやり合うっての?」
「模擬弾だからって手加減はしないわ。」
「オートマタ=自動人形とは違うの私。」
模擬弾以外は本気モードのヘルハウンド。
そのヘルハウンドよりは余裕を見せつけるガブリエルのキマイラ。
七割程度で相手をしている事はメインモニタを覗くルシファーにも、確認出来た。
「余裕ありか。」
「ガブリエルにテレポテーション・ウイングを使わせたいものだな。」
「少し僕の能力を付け加えてみるか。」
ルシファーは残機二機に自身の魔力を加えた。
「えっ!?何?」
「急にやる気を出したかしら。」
今まで相手にしていたヘルハウンドとは、二癖も、三癖もあるヘルハウンド二機。
一機は、やたらと攻撃を仕掛けて来る。
もう一機はキマイラを巧みに追い回す。
ガブリエルは縦横無尽に飛び回りながら機体前部両脇に装着された陽電子粒子機銃内蔵型ウイングを感応波を送り、切り離す。
「仕方ない。これ、使うわ。」
ガブリエルは後方から迫るヘルハウンドをわざと引き付け、感応波を増幅させて、テレポテーション・ウイングを操り、やたらと攻撃を仕掛けて来るもう一機のヘルハウンドと格闘させた。
「遊びは終わりね。」
そう云いながらガブリエルはキマイラに急制動を掛け、追い回して来るヘルハウンドを先に仕留め、テレポテーション・ウイングと戯れるヘルハウンドへと急行、背後を素早く取るとテレポテーション・ウイングを引き下がらせ、機首に装備される20ミリバルカン砲を撃ち貫く。
それでも、ガブリエルの能力は八割程度と判断出来た。
母艦アルゴーメインコックピットの感応波センサーの数値も「82.765パーセント」と表示されていた。
「ガブリエル。よく頑張ったね。」
「少し、休もう。」
ガブリエルは、その言葉で感応波を正常値に戻し、アルゴーに帰投した。
「お疲れ様。ガブリエル。」
私は仏頂面を覗かせていたようだ。
「ガブリエル。君にはその表情は似合わないな。」
「君は如何なる場合でも、スマートな表情を見せれなけれならない。」
僕君がはじめて私に軽くだけど、叱責した。
「…ごめんなさい。」
私のA.Iは困惑しながら「最適な応対。」と、この言葉を選択した。
「ちょっとムクれた」ガブリエルも、可愛いよ。」
そう笑顔を覗かせて云った。
「……。」
僕君は、不機嫌な私も受け入れてくれた_。
僕君は私を「ギュッ」と抱きしめた。
私の中で感情が、揺れ動く。
何時の間にか私はスリープモードに切り替わっていた。
意識が遠退いてゆく_。
私はまた、あの悪夢を視た。
◆
「…また、あの夢……!?」
「…また、あの夢……!?」
想い人ルシファーに身を委ね、すべてを受け入れるガブリエル。
ルシファーの背中に腕を回し、やがてガブリエルの身体は弓なりに…
小刻みに揺れるガブリエルの身体…
ルシファーの優しい笑顔…
ガブリエルの頬に伝わる涙…
ルシファーとガブリエルの唇がやさしく重なりあう…
ゆっくりと瞳を開けるガブリエル…
だが、同時にルシファーの首が飛ぶ…。
「あああああーーーッ!!」
眼を見開き、叫びを上げるガブリエルは同時に大剣を天高く掲げる男の姿を目の前に観た。
「遂に儂の邪魔者。ルシファーの首、捕ったぞ。」
「フッハッハッハッハッ!!」
「このゼウスこそが、この世界を治めるに相応しいのだ!」
「フッハッハッハッハッ!!」
「儂にく跪ずけ!」
「さすれば、命だけは助けてやる!」
「逆らえば、お前が育んで来た愛を感情をすべてを壊す!」
「ルシファーがお前に与えたすべてを壊す!」
「さあ!跪付け!地面に頭を擦り付け誓え!」
「そして、そこにある長剣を取り、ルシファーを刻め!」
ガブリエルは身体を震わせるだけだった。
「どうした?すべてを壊すぞ!」
「誓え!」
「わたくしガブリエルはゼウス様のシモベ。ゼウス様の愛人。ゼウス様の児を産み、児はゼウス様の奴隷に捧げます。」と。
ガブリエルは震えながら裸体のまま、頭を床に着け、ぼそぼそと何かを口にした。
「ガブリエルよ。聞こえぬぞ。」
それでもガブリエルはぼそぼそと何かを呟くのを止めなかった。
「孤独に怯えた月は 空を抱きしめながら
涙で見えない 貴方を探して叫んだ
貴方の瞳に映る私は 笑っていた
もう二度と逢えぬ 微笑を前に
暗闇で叫び続ける 貴方が見える遠過ぎて…」
「壊れるほど私を 強く抱きしめて
もう一度逢えるなら 夢の中でいい
永遠の眠りをください
壊れるほど私を 強く抱きしめて
夢から醒めては消える 貴方の笑顔も
愛し過ぎる その声も
もう一度 逢えるから 約束したから
溢れるほどの愛で 優しく包んで」
「永遠の眠りをください 貴方が見えない…」
「貴方が見えない…」
「聞こえぬか?」
大剣を掲げる男はガブリエルを覗き込むように屈んだ。
ガブリエルは少し顔を上げ、「ならば__。」
ガブリエルはゼウスを睨み上げると、素早く床に落ちる長剣を拾い上げると、一気にゼウスの方へ走りだし、天高くジャンプしながらゼウスに斬りかかる。
思わずのけ反るゼウス。
長剣は振り下ろされ、ゼウスの一物を斬り墜とした。
ゼウスの断末魔の叫びとも思える叫び声が、響き渡る中、ゼウの顔がルシファー変わる。
「……僕君…?」
「私は僕君をルシファーさんを斬ったの!?」
「嘘よ…私の想い人ルシファーをこの手で……。」
震えるガブリエル。
涙を流して震えるガブリエル。
ゼウスのニンマリと嫌味な顔がガブリエルを覗き込む。
涙を流して震えるガブリエル。
ゼウスのニンマリと嫌味な顔がガブリエルを覗き込む。
「想い人を殺めた気分は、どうだ?」
「フッハッハッハッハッ!」
豪快に笑う声、ニンマリと笑うゼウスの顔は次第にルシファーの声と顔に変わった。
聞き覚えのある声がガブリエルのメインA.Iを刺激する。
「ガブリエル。トドメをさすんだ!」
「ガブリエル。トドメをさすんだ!」
「……僕…君!?」
「自分が信じた路を進むんだ。ブレてはいけない。」
「自分が信じた路を進むんだ。ブレてはいけない。」
「…でも、僕君…ルシファーさんを殺せない…。」
「殺るんだ!ガブリエル!」
「あれは僕じゃない!奴はゼウスは僕に化けた偽者だ!」
長剣を構え直す私。
ゼウスとルシファーの顔と声が入れ替わる。
目まぐるしい程に入れ替わる。
私は目を閉じ、"心"に従った_。
◆
目が覚めた時、私は僕君=ルシファーさんに抱かれていた。
私の頬に伝わる涙。
「もう、大丈夫だから。」
緩やかな笑顔を覗かせ、再び涙が頬を伝う。
「僕…君…ルシファーぁぁぁぁぁーーーッ!」

ルシファーは、そっとガブリエルを抱き寄せ、髪をなでた。
「あの時の約束をブレる事なく守れは大丈夫だから。」
「…うん。」
愛を深める二人をやさしく銀河の星々の淡い光が、包み込む_。
◆
一方、火星では同時に造りはじめた【火】【水】【械】の摩天楼は完成した。
これにはからくりがあった。

【時の魔術者カイロス】
時の魔術者カイロスが時間を操り、僅か二日間で、休み無くアンドロイドたちに造らせた。
この二日間を二十日間の時間に拡張して造らせたのだ。
簡単に云えば時間の流れを超が付くほど早め、アンドロイドたちを動かし、造らせたのだ。
勿論、完成後には進められた時間は、元に戻される。
だが、その分、酷使されたアンドロイドたちは、メンテナンス施設に送られ、初期化、新たな製造番号を与えられ、アップデートを施し、主であるカイロスの元に戻される。
何事も、なかったように。
「あと二日もすればアップデートされたアンドロイドたちが戻る。」
「その二日後には、残りの摩天楼【大地】【風(気)】そしてルシファー様の母上様の摩天楼が完成する。」
第二話④へ
つづく。
ーあとがきー
この物語りは、趣味を含むオリジナル作品です。
冒頭に引用書きした闇の柊焉
RETURNER~闇の終焉~
作詞:Gackt.C 作曲:Gackt.Cの曲を視聴した時、"これだ"と感じた、この物語りのヒントと成ったのをきっかけに加え、古の神話を今時風の神話を書いてみたいとの思いから、書いてみる事にしました。
使用している画像は挿し絵的イメージです。
また、一部の画像は、インターネット内に出回っている数有る画像から引用したものです。
※一部、Wikipedia及びYouTubeより引用。
つづく。
ーあとがきー
この物語りは、趣味を含むオリジナル作品です。
冒頭に引用書きした闇の柊焉
RETURNER~闇の終焉~
作詞:Gackt.C 作曲:Gackt.Cの曲を視聴した時、"これだ"と感じた、この物語りのヒントと成ったのをきっかけに加え、古の神話を今時風の神話を書いてみたいとの思いから、書いてみる事にしました。
使用している画像は挿し絵的イメージです。
また、一部の画像は、インターネット内に出回っている数有る画像から引用したものです。
※一部、Wikipedia及びYouTubeより引用。