家を出ると、目白通りから、最初の路地を下り、高架をくぐり、早稲田通りをいく。
それが、俺の日常の始まりだった。
月曜日から土曜日まで、おれの景色のそのほとんどに、変化はない。
いつもの、俺の日常の始まりを、昨日の俺と同じように、始めると、どこからか、俺の名を呼ぶ声がした。
なんだなんだ‼︎
誰だ、誰だ、おれの名を呼ぶ呼ぶのは。
振り替えると、その声は、神保師匠だった。
おゝ師匠。
神保師匠は、相変わらず、細い。
信じられないほど細い。
悔しいほど、スリムだ。
スリムな神保師匠が、俺を一瞥するなり、こう言った。
米田さん、ダイエットは、順調ですか。
それは、まるで、先発ピッチャーが、試合開始とともに、一球目から、いきなり内角高めのシュートを外して、バッターの顔面直撃したような、逃れようのない問いだった。
痛い!
傷ついた。
俺はとっても傷ついた。
道端で、ご近所さんと、出会い頭に、天気の話から、今日の挨拶が始まるように…。
師匠にしてみれば、その程度の、ライトな話題だったのだろう。
しかし、俺は、グッと唾を飲み込んで耐えた。
俺には、師匠が、心の準備が、まだ不十分なガン患者に、いきなり告知してしまった、無神経な主治医に見えた。
家を出る、つい10分前に、玄関の鏡に映る自分と、硬い約束を、交わしたばかりだったのだ。
俺は、小さくボヤいた。
見ればわかるだろ。
頑張っては、いる。
だが、思うようにはいかない。
人生とは、そう言うもんだ。
…
よーし‼︎
ただ今より、第三千六百回目のダイエット‼︎
プロジェクト✖️開始‼︎
(^_^;)