陽炎揺れるアスファルトを、午後の夕立が、激しく打ち付けると、湿気をタップリ含んだ、舞い上がる、埃っぽい風に、思わず息を止めた。
いつもなら、ヒマそうにしてる時間帯なのに、カフェはどこも満席だった。
しばらく街は、静かになった。
遠くに、青空が見えてきた。
雨は上がった。
9月の街は、もう秋の匂いがした。
…
二十三度目の、高田馬場の夏が、去こうとしている。
僕は、画用紙と色鉛筆をもって戸山公園へ行った。
諏訪通りから見上げる空は、どこまでも、まだ、夏空だった。
学生達が戻ってきたのか、公園のベンチは、どれも若い連中に、占拠されていた。
どうヒマを潰そうか。
考えても、仕方ないから、公園を抜け、明治通りに出て、遠回りしながら、店に戻ることにした。
途中、早稲田松竹の前で立ち止まり、上映中と、次回予告を、拾い読みをした。
僕は、この映画館の常連だけど、常連を続ける理由は、見たい映画を見ると言うより、映画館の持つ、独特の匂いと空間が、大好きなのだ。
映画館の楽しみ方とは、そんなところにもあるんだと、僕は、思っている。
薬局で、ふと思い出し、太田胃散を買った。
胃薬は、必要な時に、いつもなくて、なのに、なぜかいつも買い忘れている。
今日、ついに思い出し、そして、忘れずに太田胃散を手に入れた自分に、妙に、充実した喜びを感じた。
今日一番の大手柄だ。
誇らしい気持ちになった。
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