<普通選挙の原則「アメリカで変化を望むなら、有権者登録を行い、選挙に行ってください」とボトムズ氏は声を強めた。「それが、この国で私たちが必要としている変化です」か
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AFP/Michael Mathes
2020年6月16日 15:45 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 ]
【6月16日 AFP】米ジョージア州アトランタ(Atlanta)のケイシャ・ランス・ボトムズ(Keisha Lance Bottoms)市長(50)が、人種差別に対する抗議デモから発展した混乱の収拾手腕で称賛を浴び、米大統領選で民主党候補指名が確実となったジョー・バイデン(Joe Biden)氏の副大統領候補としてにわかに注目を集めている。副大統領になれば、米国の黒人女性としては初。
ボトムズ氏は2018年初め、米国でも最も多民族な大都市の一つ、南部ジョージア州のアトランタ市長に就任し、強力な政治勢力を率いてきた。ここ最近では、共和党のブライアン・ケンプ(Brian Kemp)同州知事とドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領に対し、新型コロナウイルスの感染が拡大している時期に企業や州内の自治体の活動再開を急ぐことに異議を唱え、波風を立てた。
全国的に一躍有名になったのは5月29日。ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で丸腰の黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが白人警官に首を膝で押さえつけられ死亡した事件に端を発した抗議デモがアトランタで破壊行為に発展した際に、人の心に訴える演説を行ったときだ。
「この街のことを大事に思っているなら、家に帰りなさい」。ボトムズ氏は、略奪している人々だけではなく、平和的に抗議運動を行っている参加者に対しても訴え、この呼び掛けはたちまち広まった。
「アメリカで変化を望むなら、有権者登録を行い、選挙に行ってください」とボトムズ氏は声を強めた。「それが、この国で私たちが必要としている変化です」
ボトムズ氏が言う「無秩序状態」は収まり、その後アトランタで行われた抗議デモの大多数は平和的な空気を保った。同氏は、市内の路上でデモ隊にも加わった。
うした中でボトムズ氏は突然、バイデン氏の副大統領候補として取り沙汰されるようになる。同じく名前が挙がっている黒人の女性政治家は、カマラ・ハリス(Kamala Harris)上院議員、バル・デミングズ(Val Demings)下院議員、バラク・オバマ(Barack Obama)政権時に国家安全保障担当補佐官を務めたスーザン・ライス(Susan Rice)氏ら、そうそうたる顔ぶれだ。
ボトムズ氏は、今は新型ウイルスの流行緩和と、抗議運動および警察改革を求める声への対処に全力を注いでいるため、名前が挙げられていることについてはあまり考えていないと話す。一方で、「11月の大統領選でバイデン氏が勝利するために私に協力できることがあると(同氏に)思われるなら、そして私がその任に最も適しているなら、間違いなく真剣に検討すべき事柄だ」と先週、米ニュースサイト「アクシオス(Axios)」に答えている。
ボトムズ氏がこれらの発言をしてから、新たな問題が浮上した。12日、当のアトランタで黒人男性が警官に発砲されて死亡する出来事が起きたのだ。
緊張が高まる中、アトランタ市警の署長が辞任。発砲した警官は、ボトムズ氏の意向を受け免職処分となった。ボトムズ氏は、死に至らしめる力の使用が正当化されたとは思わないと発言している。
ボトムズ氏は地元で政治経験を積んできたが、三権全ての部門で働いたことを誇りに思っている。十数年前に非常勤の判事を務めた後、アトランタ市議会議員として初当選。2017年にアトランタ市長選の決選投票を制した。
そして次々に危機的な状況が起きている2020年。新型ウイルス、その影響による景気の悪化、そして今は警察改革と人種的公平性を求めて吹き荒れる声への対処を迫られている。
黒人の市民運動指導者が集まり、テレビ放送もされた14日のタウンホール・ミーティングに出席したボトムズ氏は、人種的不正に立ち向かう取り組みについて、「自分の個人的な怒りと悲しみを脇に置いて」市民に聞いてもらうべきことを明確に語るのは難しいと発言。
「全国で運動が起こり、あらゆる街に変化をもたらしつつある」として、「これまでの死を無駄にはしない」と誓った。(c)