「緊急事態」に安倍政権はいったい何をしているのか 国民に広がる困惑

2020年04月17日 | 政治社会問題



この「緊急事態」に安倍政権はいったい何をしているのか 国民に広がる困惑、現金給付巡ってドタバタも

4/17(金) 7:02配信

47NEWS
この「緊急事態」に安倍政権はいったい何をしているのか 国民に広がる困惑、現金給付巡ってドタバタも

安倍首相=4月16日、首相官邸

 政府は、いったい何をしているのか。

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小池東京都知事(左)と西村経済再生相=4月9日夜、東京都千代田区

 こうした声が、憤りや不安を表現するものとして、日々発せられている。また同時に、このフレーズが文字通りの疑問として口にされることも少なくない。政府がいったい何をしているのか理解ができず、そのことに対する不満や困惑が広がっているのである。(上智大学教授=中野晃一)

 ▽だらだら感

 7都府県を対象に緊急事態宣言が4月7日に発令されて1週間余りがたとうとしているが、こうした疑問と不安が払拭されていないどころか深まっている。「緊急事態」と言いながら、政府の対応があまりにスピード感を欠いていることから、肝心の緊急性がまったく感じられない。危機感を募らせた自治体が独自に宣言を発令する動きも相次ぎ、政府が対象地域を全国に拡大する方針を決めたのは16日になってからだった。

 そもそも第1段階となった7日の緊急事態宣言では、発令に先だって臆測や前触れがだらだらと1週間以上も続いた。さらに発令後も、医療崩壊が目前に迫る東京都での具体的な休業要請の対象が発表されるまで3日間、安倍政権と小池百合子都知事との間で、居酒屋や理髪店など諸外国の事例で見てもおよそ「不要不急の外出」と見なされることがない業種をどうするかの駆け引きが行われたのだ。
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東京・新宿の歌舞伎町で通行人に声掛けをする警察官=4月10日夜

 その間、新型コロナウイルス対策を担う西村康稔経済再生担当相は、まずは外出自粛要請の効果を見るために休業要請を2週間程度先送りしてはどうかと対象7都府県の知事に打診したとさえ報じられた。

 不可解なのは、西村氏の打診のタイミングだ。安倍晋三首相は、緊急事態宣言発令に際して行った記者会見で「2週間後に感染者の増加をピークアウトさせる」と述べた。西村氏の発言はその翌日に出た。緊急事態と言いながら2週間まずは様子を見て、しかし2週間後のピークアウトを目指しているというのは何事なのか。

 実はこうしたエピソードが、安倍政権の新型コロナウイルス対策の根本的な問題を表しており、政府はいったい何をしているのか、と多くの人が感じる理由でもある。それは、政府の決める対策の根拠とその決定過程の双方がともに透明性を欠いていて、その結果、政府の打ち出した対策の合理性や効果を含めた方向性が見えてこないのである。つまり何を根拠に何をどうすればどうなると誰がどこで決めているのかが分からないのだ。

しかも安倍首相は、記者会見の質疑応答で、「例えば最悪の事態になった場合、私が責任を取ればいいというわけではありません」と述べている。

 ここに来て、野党がかねてから主張していた国民への10万円一律給付だ。首相は4月16日、公明党に押し切られる形で、審議入り目前の補正予算案を組み替えて対応する方針へと転換した。こうした混乱ぶりを見せられては、リーダーシップどころか、為政者としての当事者意識すら欠如しているのではないかと疑ってしまう。

 ▽危機でも平時と変わらぬ業界団体への配慮

 安倍首相以下、政府が市民の安全を守る責任主体としての当事者性と説得力を示せずにいる一方で、首相や政府与党関係者、そしてマスコミが盛んに喧伝するのは、日本の特措法が定める緊急事態では政府が外出や営業を禁止する強制力を持たないので、欧米など諸外国で行われているような「ロックダウンはできない」という言説である。

 ことさらにこの点を言い立てて、だから緊急事態条項を憲法に盛り込む改正が必要だという、それこそ何の緊急性も必要性もない教条主義的な主張も散見される。
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世田谷郵便局に搬入された布マスク=4月16日、東京都世田谷区

 しかし、いわゆるロックダウンのような徹底的な休業・外出禁止措置に積極的な姿勢を見せた小池都知事とのさやあての中で明らかになったのは、安倍政権は「ロックダウンしたくない」という事実であった。そしてそれは、これまで再三、立憲主義や法の支配の原則をないがしろにしてきた政権が、ここにきて急に一般市民の私権の制限に慎重になったからではない。

 その証拠に、7都府県の夜の繁華街などで外出自粛強化を要請する、つまり外出自粛をお願いするためなのに、さっそく警察がものものしくパトロールし始めていることを武田良太国家公安委員長が明らかにしている。

 それではなぜ、政府は実効性をともなう徹底した外出制限策を取ろうとしないのか。その理由は、実は単純である。一般に、新型コロナウイルス対策というと「感染拡大阻止対策」のことを指すが、安倍政権はそのように捉えていないからである。

 この政府にとって、新型コロナウイルス対策は第一義的に、新型コロナウイルスと感染防止策によって引き起こされている経済損失を軽減するための、とりわけアベノミクスや自民党を支えてきた業界や業種に目配りした施策や予算措置、つまり平時と変わらぬお得意の「経済・景気対策」なのである。

そもそも、新型コロナウイルス対策の担当者として、安倍首相が任命したのは、通産官僚出身の西村経済再生担当相である。

 世界各国が必死になって感染封じ込めに取り組んでいるのを意に介せず、日本の政府与党が「お肉券」だ、「Go To Travel」「Go To Eat」クーポンだとはしゃぎ、あるいは、航空便の大幅減少にあえぐ航空会社を救済する意味もあるのだろうか、客室乗務員に不足している防護服の縫製支援を依頼したいなどと言うさまざまに問題のある珍妙な案が出てくる。

 陳情や批判に小出しで応じて、民意に応えているかのような演出も毎度のことである。

 ▽国民に押しつける負担

 ならばなぜ、首相はここまで感染拡大阻止に楽観的もしくは無関心でいられるのだろうか。これは難問であり、また解は一つではないだろう。初動の遅れの際に対策本部をおろそかにして、連日会食を重ねて批判を浴びたことが記憶に新しいが、国民の健康や安全に心底関心がないことは、過去の災害対応でも明らかだった。

 東京五輪の開催やアベノミクスの破綻を防ぐこと、そして憲法改正へと少しでも近づくことなどのほうが、首相の中では優先順位が高いこともありそうだ。また五輪を1年延期するだけで開催できると判断した際にも伝えられたことだが、どうやら首相は、ワクチンや治療薬を日本の科学や技術の力で早期に開発できると思い込んでいる節も見られる。

 しかし決定的なのは、首相が感染拡大阻止対策を専門家会議や厚生労働省にほぼ丸投げしておけばいいと考え、時折、相談も脈絡もなしに全国学校一斉休校や各戸への布マスク2枚郵送などを打ち上げることで「やってる感」を演出できるものと勘違いしていることである。突如受け入れた10万円一律給付も、この延長線にあるのだろう。

 首相が感染防止対策でのリーダーシップを放棄する一方で、厚生行政や専門家会議が、検査や医療体制の限界を首相官邸や財務当局などに強く訴え、医療資源の緊急拡充を求める努力を怠ってきたのもまた事実である。



 検査数を抑え、いわゆる「自粛」によって感染拡大を遅らせることを主としたことは、結果として、市民の側に負担ばかりを求め、国の側が視野の狭い「経済・景気対策」にいそしむ慢心を許してしまった。

 専門家会議の主導してきたクラスター感染対策の限界が明らかになった「緊急事態」の今、最も恐ろしいのは、安倍政権が感染拡大阻止対策とそのコストをいよいよ市民に丸投げしてきていることである。十分な補償もインセンティブも、それどころか客観的で信頼できる情報やデータさえ満足に得られぬままで、一方政府は熱心に「自粛」要請を繰り返す。

 感染が阻止できなかった場合は、その責任を市民の「自粛」が足りなかったことに押し付ける流れがすでに垣間見える。星野源に便乗して投稿した動画に見られた安倍首相の「人ごと」ムードである。到底、人々が外に出ないで済むように万策講じる責任を負っていることを自覚しているようには見えず、強い反発を招いた。

 しかしこのまま感染が広がってしまい、医療崩壊によって多くの方が亡くなった、というような事態になれば、強制力のある外出禁止が日本ではできず、国民の「自粛」すなわち努力が足りなかったことがいけないのであって、憲法改正を含めた法整備によって政府がより自由に強権を発動できるような体制を整えなくてはならないというキャンペーンが展開されるだろう。

 無責任な政府に今よりもいっそうノーチェックとなるような権力を与えても市民の健康と安全は保障されない。誰もが安全な場所にいられるよう休業補償などを行い、国としての責任を果たさせることが、今こそ欠かせない。



「星野源」動画ではっきりした安倍首相の力不足

4/14(火) 5:31配信

東洋経済オンライン
「星野源」動画ではっきりした安倍首相の力不足

一層の外出自粛を呼びかける安倍晋三首相。写真は4月7日に緊急事態宣言が出された後の東京都内(写真:ロイター/アフロ)

 安倍晋三首相が4月12日にツイッターに投稿した動画が、ネット上で大炎上した。自宅とみられる私室で犬とくつろぐ姿などを、シンガーソングライターの星野源氏が演奏する楽曲「うちで踊ろう」とともに公開した動画に対し、「なんだこれ?」「まるでKY(空気が読めない)だ」などの批判が殺到している。

 その一方で、「ゆっくり休んでください」「安心しました」など評価する声もあり、動画への賛否は交錯している。外出自粛による国民の不安と苛立ちが今回のネット騒動の背景にあるとみられるが、欧米各国で拡大しているコロナショックによる国民の分断と対立が、日本でも加速しつつあることを際立たせる結果となった。

■動画で外出自粛を呼びかけたが…

 安倍首相の公式ツイッターへの投稿は12日午前9時過ぎ。ソファに座って愛犬を膝に抱いたり、コーヒーカップを片手に持って飲んだり、椅子に座ってテレビのリモコンを操作したりする、くつろいだ様子の動画が流された。動画は、星野氏の流す音楽と約1分間、コラボレーションしたものになっている。

 この動画は「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています。そして、今この瞬間も、過酷を極める現場で奮闘して下さっている、医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります」という安倍首相のメッセージ付きだ。

 併せて、次の投稿で「私たちは、SNSや電話を通じて、人と人とのつながりを感じることができます。いつかまた、きっと、みんなが集まって笑顔で語り合える時がやってくる。その明日を生み出すために、今日はうちで……。どうか皆様のご協力をお願いします」と、国民に向けて改めて外出自粛を訴えている。

 「うちで踊ろう」は、星野氏が4月3日に公式インスタグラムで公開したギターによる楽曲。「生きて踊ろう 僕らそれぞれの場所で」などの歌詞が反響を呼び、星野氏と親しい芸能人など、多くの有名人がそれぞれ伴奏やコーラス、ダンスなどでコラボし、アクセス数も激増して大きな話題となっていた。

安倍首相の動画投稿は、こうした人気に便乗する形で国民に外出自粛を呼びかける狙いがあった。しかし、動画がアップされた途端、「星野源を政治利用するな」「友達と会えないことや、飲み会ができないのがつらいんじゃない。症状が続いているのにPCR検査もしてもらえないのがつらいのです」などの突っ込みが殺到。

 数時間後には「何様のつもり」「政治利用」などの言葉がツイッターのトレンド上位にランクイン。再生数は12日夜で100万回を超え、13日になっても増え続けている。

■蓮舫氏は「なぜ誰も止めなかったのか」

 首相日程などから、動画は11日までに撮影されたとみられる。実際の動画作成や投稿はこれまでと同様、首相官邸の広報担当者によるものとみられるが、安倍首相の意向を踏まえたものであることは明らかだ。「なかなか徹底されない外出自粛を、首相自身が促す多角的手法の一環」(関係者)とされる。

 この首相の投稿について星野氏は12日深夜、自らのインスタグラムでコメントし、「安倍晋三さんが上げられた“うちで踊ろう”の動画ですが、これまで様々な動画をアップして下さっている沢山の皆さんと同じ様に、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」と説明した。これは、政治利用との批判を意識し、官邸との連携を明確に否定したものだ。

 これについて、立憲民主党の蓮舫副代表は「ご本人のお考えだとすれば、何故誰も止めなかったのか。側近と言われる方々の発案だとすれば、『これはおかしい』となぜ総理は言わなかったのか」となど厳しく批判。自民党内でも「すぐ批判されると考えなかったとすればKYすぎる」(自民若手)との声が出た。

 そもそも、新型コロナウイルスによる感染拡大が戦争に匹敵する国難であることははっきりしている。感染拡大を阻止するため、一層の外出自粛を求めた安倍首相の呼びかけは「当然のこと」(官邸筋)ではある。ただ、「TPO(時と場所、状況への配慮)に欠けたことで、ネット民からディスられる(攻撃される)結果となった」(同)のが実態だろう。

コロナ禍以前から、安倍首相の政権運営に対する支持派と不支持派の対立が際立ってきた。「メディアも含めた安倍政治をめぐる国民的分断の深さ」(閣僚経験者)が今回の騒動を巻き起こしたようにも見える。アンチ安倍グループにとっては「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」となり、これに安倍シンパが徹底攻撃するという構図だ。

 しかも、アンチ派の安倍首相攻撃を拡大させたモリカケ疑惑や桜を見る会問題での政権の「逃げ恥作戦」は、星野氏も出演して話題になったテレビ番組「逃げるは恥だが役に立つ」をもじった揶揄だ。それだけに今回の騒ぎは「妙な因縁」(自民若手)も絡む。

■「訴える力」が足りない安倍首相

 ただ、自らの言葉で切々と国民の覚悟と協力を訴えたドイツのメルケル首相や、自ら感染しながら、必死の表情で国民への発信を続けるイギリスのジョンソン首相と比べ、「安倍首相の訴える力と悲壮感は明らかに不足している」(自民長老)との声が多いのも事実だ。

 安倍首相は、緊急事態宣言に先立って自らの政治決断で決定した「全世帯への布マスク配布」がネット上で「アベノマスク」として大炎上したばかり。にもかかわらず、今回も「アベノコラボ」と揶揄される事態を招いたのは、「官邸の危機管理のお粗末さ」(政治評論家)との批判の声も相次ぐ。

 13日朝の民放テレビは、この「アベノコラボ」騒ぎを面白おかしく伝えた。その一方、新聞は朝刊休刊日にあたり、一部大手紙がネット配信で触れるにとどまっている。このため、首相サイドには「騒ぎは一過性。評価する声もあり、首相の真意は遠からず国民に浸透する」との楽観論もある。菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で「過去最高の35万以上も『いいね』をいただいて、多くの人にメッセージが伝わった」とコメントした。

 小池百合子東京都知事を筆頭に、全国の知事は「自らの地元での感染数拡大によるオーバーシュート阻止」に必死の形相で取り組んでいる。その危機感を「ワンボイス」で国民に訴えるのが安倍首相の役割だが、今回は「それとは程遠い低レベルの騒動」(閣僚経験者)にみえる。

 このため、永田町や霞が関では「政治と官僚と首長と国民がまさに『ワンチーム』となることが必要なのに、(安倍首相は)何をしているのか」(首相経験者)との声も広がっている。

泉 宏 :政治ジャーナリスト


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