「密造酒」で日本人死亡…インドネシア在留邦人も呆れる大使館の対応

2020年10月01日 | 海外移住で地獄に堕ちたはなし
「密造酒」で日本人死亡…インドネシア在留邦人も呆れる大使館の対応

10/1(木) 6:01配信
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現代ビジネス
危険な密造酒

写真:現代ビジネス

 インドネシアのジャカルタ首都圏で密造酒を飲んだ日本人が中毒症状を発症し、1人が死亡、複数が重い中毒で緊急加療を要する事態が起きた。

【写真】死ぬ瞬間はこんな感じです。死ぬのはこんなに怖い

 インドネシアは世界第4位の人口約2億7000万人、うち約88%がイスラム教徒という最大のイスラム人口を擁する国である。イスラム教では豚肉と並んでアルコールの摂取も禁忌で、敬虔なイスラム教徒は決してアルコール類を口にしない。それどころか摂取する食料品、さらには化粧品にまで、アルコール成分が使用されていないか神経を使うのが常とされている。

 しかし現実的には酒好きなイスラム教徒も存在する。ただし正規の酒類には高い税金がかけられているため高額であり、当然の帰結として行き着く所が「安い酒」「自前の手作りの酒」ということになる。そこにイスラム教徒が圧倒的多数でありながら密造酒が横行するというインドネシア特有の背景がある。

 そして密造酒だけに、時には工業用アルコールや怪しげな液体が「ブレンド」されるなど、安価に仕上げるために「安全性」は二の次とされたまま売買され、飲用される。そのためインドネシアでは、密造酒を飲んで死亡したり、中毒症状になったりする人は意外と多いのが現実なのだ。

 そうした中で起きた今回の日本人死亡事件。現地日本大使館が発した「在留邦人への注意喚起」の文書の不親切極まりない文面と情報提供を見ると、「邦人保護」を最優先するというより「被害者や被害者が属する会社の都合」を最優先したかのような対応に終始している。

 これが在留日本人の間に予想外の混乱と疑心暗鬼、さらに大使館への不信感を増大させている実態を踏まえて、以下、その顛末を報告する。
日本大使館が発信した「注意喚起」

「注意喚起」に添付された密造酒の写真

 9月26日、在ジャカルタ日本大使館は「非正規の自家製アルコール飲料の摂取によると考えられる重篤な健康被害の発生」と題した「注意喚起」を在留日本人に一斉メールで発信した。その内容は以下のようなものだった。

 ●ジャカルタ首都圏内において、非正規の自家製アルコール飲料(いわゆる「密造酒」「闇酒」)を摂取したことが原因と見られる在留邦人の死亡、中毒症状の発症等の事案が発生しています。
●同アルコール飲料(リキュールに似た洋酒)は,既に他の在留邦人等にも流通している可能性があります。もし疑わしき飲料がお手元にある場合には絶対に飲まないでください。既に飲んでしまった場合は、自身の体調の変化に十分注意してください。
●いかなる場合でも、「密造酒」や「闇酒」と呼ばれる非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は絶対にお止めください。

 コロナ禍で一時帰国した駐在員、家族が多いとはいえ、まだ数千人規模でジャカルタに残っていた日本人駐在員、長期滞在者などはこのメールを受け取って初めて密造酒を飲んだ日本人が死亡したという事件を知り、びっくり仰天した。

 というのも、在留日本人はジャカルタ市内の大型スーパーや酒屋で販売されている正規ルートで輸入あるいは流通した日本酒、焼酎、海外のワイン、ウイスキー、ハードリカー、そしてインドネシア産を含めた各国のビールを購入して飲むのが通常であり、安価で正体不明な密造酒あるいは闇酒に手を出すことはまずない、というのが常識となっていたからだった。

 インドネシア政府は国民の圧倒的多数がアルコールを禁忌とするイスラム教徒であることもあり、一般に海外からのアルコール類には高い関税をかけており、日本製の酒類、日本酒、焼酎、ウイスキーなどは日本での価格の約5倍前後で販売されている。

インドネシアの密造酒事情

〔PHOTO〕Gettyimages

 イスラム教徒が圧倒的多数とはいえ、若者を中心にアルコールへの憧れは強い。それは同じく禁制品の麻薬と同じで「禁じられているからこそ手を出したくなる嗜好品」として宗教に関係なく、若者を蝕んでいるのが現状だ。

 イスラム教徒の中には「知らないで誤って摂取した禁忌は直後に反省すれば許される」ということを主張して、知らない振りをして飲み食いし、その後「反省」するといったことを意図的に繰り返す人も、実際には存在する。

 インドネシアの統計によると、2008年~2013年の間に密造酒による中毒症状で死亡したのは約300人とされるが、これが2014年~2018年になると死亡者は約500人に増加している。

 2018年4月には中部ジャワ州のバンドンで密造酒を飲んだことに起因する死者が約60人以上、中毒症状の入院した人が140人という大規模な密造酒事件が摘発されたこともある。

 今年8月にも密造酒製造所が摘発されるなど、密造酒絡みの事件は後を絶たず、テレビでは製造所の急襲手入れやプラスチックボトルに入れて持ち歩いている若者の摘発などがよくニュースとして取り上げられる。

 警察の捜査によると密造酒製造グループと密造酒販売グループが共に犯罪組織の傘下で粗悪で安価な酒を水面下で売りさばいているという。
混ぜ物で造る怪しげな酒

 インドネシアの密造酒は、水とアルコール(工業用アルコールの場合が多い)を混ぜて、そこに少量の正規の酒を混入させる方法が一般的だという。さらにこうした過程で咳止め薬や殺虫剤の成分を少量混入したり、栄養ドリンクや炭酸、シロップなどを混ぜたりするケースもあり、その調合具合で正規の酒に近い、臭い、味、色になるという。

 この過程をみれば決して体にいいものでない「粗悪というより毒」のような液体であることは明白だが、低所得者や若者には「安価で酔える」という魅力がある。

 インドネシアでは、スマトラ島最北部にあるイスラム法(シャリア)の適用が唯一認められているアチェ州以外では、酒類は一般的にスーパーや酒店で販売されている。一時コンビニエンスストアでもビール類が販売されていたが、これは数年前から禁止になった。

 密造酒は伝統的な市場や飲食店が並ぶ一角の露店で普通に売られているが、一応、警察の目を意識して店頭には並んでいない。客が声をかけてくるのを待つか、商売人の勘で「酒あるよ、安いよ」と声をかけての密売となる。

 こうした粗悪で安価な密造酒は「危険」というのが在留日本人の間では言い伝えられており、これまで好奇心から密造酒に手をだして軽い中毒症になった人がいた可能性は否定できないにせよ、日本人の死者は聞いたことがない。

 しかし今回、稀有な例として大使館も「注意喚起」を出してわざわざ告知せざるを得なくなり、予想通りに日本ではNHKや民放など各報道機関が取り上げ、大きなニュースになっているのだ。

 これまでインドネシアのメディアはこの日本人の関係した事件について報道した形跡はなく、日本大使館もインドネシアのメディアからの問い合わせや取材はこれまでのところない、としている。被害者が日本人というのは珍しいが、密造酒による死者、中毒者はインドネシアではよくある事件の一つだからかもしれない。

大使館が具体的情報を出さない理由

 そうはいっても在留日本人の世界は狭く、情報が飛び交うのも早い。玉石混交の中からおぼろげに見えてくる事実に近い情報もある。

 前掲のなんら具体的内容を含まない大使館の「注意喚起」の中身を在留日本人の間で流通している具体的な情報に置き換えると、だいたいこういう事になる。

 「ジャカルタ東郊のチカランで9月20日、インドネシア人の知人から入手したという自家製アルコール飲料(焼酎に似た酒)を摂取した3人の日本人が、1人死亡、2人が深刻な中毒症状(目に異状)に陥った事案」

 死亡した1人は「大手ゼネコンの40歳代半ばの駐在員(現地採用との情報も)」といわれ、重い中毒症状を起こした2人はその駐在員の知人夫妻で、他の日本人とゴルフに興じ、その後飲食を共にして密造酒を飲んだ、というものである。

 断っておくがこれは正式に確認された事実でも大使館の情報でもなく、あくまで日本人社会で出回っている情報の最大公約数といったものである。従って具体名は控える。

 出回っている情報に具体名で登場するゴルフ場の関係者は「ゴルフ後にうちのレストランで飲食して中毒になったという風評被害で困っている」と不満を訴え、死亡した駐在員の勤務先の会社では厳しい緘口令が敷かれて社員、関係者は一切口を開かないという。

 さらにこの会社は大使館に対しても「情報開示の拒否」を要請しているようで、取材に当たる日本からのマスコミ、在インドネシアの日本マスコミに対して大使館側は「被害に遭われた関係者の了解が得られないのでお答えできない」と正直に吐露している。

 在留日本人の関心はどこの会社の誰が死亡したか、中毒症状が重篤になったのは誰かなどの個人情報ではなく、どの地域でどういう状況で密造酒が出回り、日本人の手に渡り、その価格や臭い、色、アルコール度数、販売状況、場合によっては価格などの情報に「飢えて」いるのである。

 それは酒を飲む人あるいは飲む人が知り合いにいる場合には気を付けなければならない重要な情報であるはずだが、大使館はそうした情報すら「被害に遭われた関係者の了解が得られないので申し上げられない」という木で鼻を括った回答に終始している。

 これが「邦人保護」をその最大の職責の一つとする大使館の「邦人保護」より「個人情報、会社の了解」を優先する実状である。

外務省関係者「これは無差別殺人だ」

 ちなみに知己の日本外務省関係者にこのインドネシア日本大使館の対応を伝えたところ、このように明快な解釈を示した。

 「個人情報の範疇なので当人の了解なしに公表できないというのは外務省の基準であることは間違いない。しかしこの個人情報とは被害者の氏名あるいはその所属組織を示すものでそれ以外の情報、例えば性別、年齢、居住地、どこでいつ(密造酒を)飲んだのかなどは個人情報の範疇ではないと解釈できる。

 しかし今回の事案はまさに無差別殺人といえる事案であり、被害者の保護を最大限重視しつつも同様事案による再発防止という邦人保護の観点を最優先するべきであると考えられる」

 したがって、大使館として邦人保護の観点に立つなら、「情報開示を頑なに拒否する被害者関係者並びに所属会社の言いなりになるのではなく、むしろ邦人保護という公益優先のために説得してごく限定的な個人情報以外の開示への理解を求めるのが重要な役目であろう」という。

 ジャカルタの日本大使館はすでに当該事件をインドネシア警察に通告しているとはいうものの、対応している警察が首都圏警察なのか、飲食をした場所とされる西ジャワ州警察の管轄なのか、それすら明らかにしようとしない。その理由はまたしても「関係者の了解が得られない」というのだ。

 ここまでくると怪しいもので、本当に関係者が管轄の警察まで情報開示することに難色を示しているのか、管轄警察を開示すると被害者あるいは被害者の居所が判明すると大使館が勝手に思い込んで、関係者を言い訳に使っている可能性すら疑いたくなる。

 筆者のところにはインドネシア外務省経由でジャカルタ首都圏警察幹部からの「事件の概要と被害者の氏名」の問い合わせが回り回って来たが、大使館の対応を説明して必要なら大使館の担当者に直接連絡してほしい旨を伝えた。

 果たして日本大使館はインドネシア警察にも同じような対応をするのだろうか。「関係者の了解」を盾にして。

現地日本人社会に広がる疑心暗鬼

 こうした硬直化した日本大使館の一方的で具体性に欠ける「注意喚起」がどれだけ在留邦人の間に混乱と疑心暗鬼を生んでいるか、おそらく大使館員には想像できないだろう。

 「日本人駐在員なら密造酒の危険を知らないはずはない、被害者は留学生か旅行者ではないか」
「駐在員なら多少高額でも正規の酒を買えるだけの給与はもらっているだろう」
「マッコリやバリの地酒アラックみたいなものなのだろうか」
「一体広い首都圏のどこで起きた事件なのか」

 などという錯綜した情報、意見がSNS上を飛び交っていることを大使館員は知らないのか、それとも知らない振りをしているのか。

 ことが命に関わるだけに心配は大きく、不安は高まっている。酒類を提供していた日本食レストラン関係者の問い合わせも多く、あちこちで「風評被害」が起きようとしている。

 9月14日以降、ジャカルタ州内の飲食店はコロナ禍による規制強化で、店内での飲食が禁止されている。しかし苦しい経営状況から密かに飲食を提供する店も実は少なくなく、それはそれで止むを得ないことという現実がある。

 そうした店の1軒に外交官ナンバーの公用車で乗りつけ、大使館員の名刺をだして飲食した人物の情報も日本人社会には出回っている。当の大使館員は「不注意だった」と反省しているというが、日本での所属先を聞くと少なからず驚く無責任な行動といえる。

 職業倫理の欠如以前に外交官公用車の使用や公用名刺を出すなど脇が甘いと指摘されても仕方のない所業に、在留日本人たちの大使館への信頼は薄れている。前掲の日本の外務省関係者は「外交旅券を持つ資格なし、即刻帰朝のケースになりかねない」と手厳しい。

 この当該の大使館員の原籍の役所ではかつてカラオケ店でインドネシア人女性相手にいわゆる「女体盛り」を行い写真撮影までして、それが日本の週刊誌で報道されて指弾された過去がある。

 そうした中で起きた「密造酒事案」は、大使館にとってその名誉挽回の格好の機会だったはずだが、優先すべき事項を理解しない対応に、在留日本人の不信がさらに高まる事態となっている。

 トップのナンバー2、3が最近着任したばかりで館内をまだよく掌握していないことも関係しているかもしれないと外務省関係者は苦しい説明をするが、この2人を中心にした今後の態勢立て直し、意識改革に期待するしかないだろう。

絶対に手を出してはいけない

 大使館の「注意喚起」では「いかなる場合であっても、非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は絶対にお止めください」と警告を発している。

 こうした警告はこれまでインドネシアで生活する在留日本人の間では言い伝えられてきたことであり、短期出張には長期滞在者が伝達する「インドネシア生活上の注意事項」として麻薬、昏睡強盗、スリ、不良タクシーのぼったくりなどと同様に必ず伝達されてきたものだった。

 今回の事案がどういう経緯で起きたか、大使館が明らかにしないので判然としないが、インドネシア人から入手した可能性が高いといわれている。

 「気をつけて」という「注意喚起」を出した大使館だが、注意しようにも具体的情報が圧倒的に欠如している。最終的には「自己責任」と言ってしまえばそれまでだが、それにしても詳しい情報を在留日本人は真摯に求めている。

 密造酒にやむなく手を出すインドネシア人のように経済的な理由や単なる好奇心、そして常習性があったのかどうかを含めて、とにもかくにも事件の経緯を知りたい。亡くなった日本人の冥福を祈りながら。

大塚 智彦(PanAsiaNews記者)


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kaz***** | 29分前

大使館の対応は普通の事でしょ。
安い密造酒のリスクなんて、東南アジアに住んでれば知らない人はいないでしょ。
海外に住むからには自分で情報を集め、他人に頼らず、自分で生きるしかない。

返信0

18
0

sgj***** | 6分前

記者なら現地で取材してこいよ...。

返信0

2
0

bcm***** | 7分前

長かっただけ、中身無し。
世界中のどこでも、ヤバい物に手を出す奴が悪い。




インドネシア“密造酒”拡大 日本人死亡も

9/28(月) 18:26配信
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日本テレビ系(NNN)

Nippon News Network(NNN)

インドネシアで、非正規のアルコール飲料が横行。現地の日本人がそれを飲んだことが原因とみられる中毒症状で死亡する事案も発生しています。

先月、警察が密造酒の製造現場を捜索した映像。部屋には雑然と段ボール箱が積まれ、中には酒とみられるボトルが。

地元メディアによりますと、この現場では、水とアルコールに本物の酒を少量混ぜて製造。このほかにも、密造現場は頻繁に摘発されているといいます。

インドネシアでは以前から、非正規のアルコール飲料が横行。現地の日本人がそれを飲んだことが原因とみられる中毒症状で死亡する事案まで発生しているのです。

そのため、インドネシアの日本大使館が現地の日本人に向け注意喚起を発表。

―在インドネシア日本大使館:いかなる場合でも「密造酒」や「闇酒」とよばれる非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は、絶対におやめください

なぜ、密造酒が出回っているのでしょうか?

―密造の容疑者:多くのバーなどのオーナーは、高価な本物の酒より安い密造酒を求めている

インドネシア人の多くはイスラム教徒。イスラム教徒は一般的に酒を飲むことは禁じられているものの、インドネシアの大都市では酒の販売が法律で認められていて、飲んでいる人もいるとみられます。

ただ、酒には高い税金が課されて高額なため、低所得層の人々が安い密造酒を求めているのです。

日本大使館は、非正規のルートで入手したアルコールを絶対に飲まないよう呼びかけています。



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