・阪神間にある二つの遊園地、
宝塚ファミリーランドと阪神パークが閉鎖になるというのは、
淋しい。
大阪西北部・阪神間で育った人はたいてい、
この二つの遊園地に郷愁がある。
私も子供の頃よく連れていってもらった。
現代の幼児を持つ親たちがいうのに、
いまどきの遊園地はスピードやスリルを競う、
成人向きの設備が多いが、
<チビを連れて行くのに、
あそこの二つは遊具も適当で、
動物園もあってええのに>
と若い父親が残念がっていた。
お子さま向きの遊園地、
閉鎖は少子化のせいだろうか。
ウチへ来る男たちはいう。
<子供が来ん、というなら大人呼ばんかい。
殊に男の大人、ヒマで行く先に困っとるデ>
<男が来ない、というのなら、
女でいっぱいにしたらどう?
女の物見遊山の滞在願望、
強いんだから>
と女たち。
二つの遊園地で飼われていた動物たちの落ち着き先も、
関西人の胸を痛めることだったが、
一つの朗報は、阪神パークのお猿島の猿十五匹。
猿は仲間意識が強く、
群れごと移さないといけない。
所がいいあんばいにお隣の韓国ソウルの近郊に、
新動物園がオープンし、
十年来のボス<ハットリ>くんもろとも、
十五匹のニホンザルは引き取られ、
新しい環境になじんで元気でいるという。
遊園地閉鎖にまして関西人のショックは、
OSK日本歌劇団の解散である。
宝塚に対して、
松竹がやはり女性ばかりの歌劇団を創設し、
ここから京マチ子や笠置シヅ子が育った。
戦前から大阪の名物だったのは、
春の公演の<春の踊り>。
舞台いっぱいの造花の桜。
出演者全員が舞台に並んで、
絵日傘を開いたり閉じたり、
交錯するライト、
舞い散る紙吹雪。
川柳作家・岸本水府の作詞にかかる、
♪さくら咲く国。さくらさくら・・・♪の歌を、
出演者も観客ももろともに声合わせて歌い、
私の父など、
<これを聞かんと、春が来た気、せえへん>
といっていたものだ。
OSKの踊りはキレがよく、
大人の女の色気があると、
男性ファンも多かった。
戦後何年かして近鉄資本となり、
奈良のあやめ池へ本拠が移ったので、
大阪っ子は淋しい思いをしたが、
それでも上本町の近鉄劇場で見ることができた。
しかし、OSKは資金難から解散、
劇場も閉鎖という。
OSKは八十年の伝統を持つ。
女性だけの歌、ダンス、お芝居の劇団は、
世界でも珍しい文化ではなかろうか。
能や歌舞伎の伝統だけではない。
粋でしゃれた、近代的センスの、美女の歌舞団、
宝塚以外にもう一つあると世界に知ってほしい。
OSKは、
近鉄から年間約三億五千万円の支援を受けていた、とあったが、
母胎企業が赤字でリストラされたよし。
日本は自国の文化をもっと支援してもいいんじゃないか。
(後記。近年、OSKは再開した。
<春の踊り>は今も大阪名物の一つになっている)
(次回へ)