東北運輸局報令和5年5月22日号によれば、岩手県中南部一円で路線バスを運行する「岩手県交通」が、陸前高田住田線と猊鼻渓線を2023/9/30付で廃止すべく東北運輸局に申請したとのことです。
https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/content/000295900.pdf
両路線とも利用が極めて少なく赤字がかさみ、さらに乗務員不足から今後の運行維持が大変困難な状況となっているためだそうです。
こちらでは、両路線の状況を解説します。
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1.陸前高田住田線
山間部の住田町と沿岸部の陸前高田市街地を結ぶ路線(イオンスーパーセンター陸前高田が始発・終着)となっており、平日は1日4往復ですが土休日は全便運休となります。
http://www.iwatekenkotsu.co.jp/pdf/timetable/42_ofunato/naruishi-sumita20221003.pdf
もともと国鉄バス→JRバス東北が陸前高田駅~世田米~岩手八日町<住田町北部>~遠野駅間の路線を運行していましたが、赤字がかさむため2004年3月限りで廃止となり、比較的利用が多かった八日町より南側区間は岩手県交通が、北側は住田町に本社のある住田交運が引き継ぎました。しかし、2009年になって岩手県交通から川口<世田米地区の北端にある住田高校の前>~八日町間の廃止の申し出があり、2010年4月から「住田町コミュニティバス」(住田交運が運行)と岩手県交通の3路線(陸前高田住田線・大船渡住田線・長距離路線の大船渡盛岡線)に再編されました。
https://www.town.sumita.iwate.jp/docs/2015022500139/
しかし東日本大震災で陸前高田市街地が壊滅し、通学以外での住田町~陸前高田市間の需要が大きく減った結果岩手県交通の陸前高田住田線は減便を繰り返し、ついに土休日の運行がなくなりました。これを補填するため、2023/4/8から土曜日に限り住田交運が2往復の運行を開始しました。
https://www.town.sumita.iwate.jp/docs/2015022500122/files/20230406rikuzenntakatasumitasenn.pdf
https://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/material/files/group/19/R5_6-rikuzentakatasumita0401.pdf
おそらく、10月からは平日も住田交運が陸前高田住田線を運行するようになるものと思われます。
ちなみに、震災前は1日5往復あった長距離路線の大船渡盛岡線も、2023年時点では僅か2往復にまで減っています。震災後しばらくの間は陸前高田市への交通手段として「大船渡盛岡線と陸前高田住田線を世田米で乗り継ぐルート」が案内されていましたが・・・
http://www.iwatekenkotsu.co.jp/pdf/timetable/choukyori_bus/oofunato-morioka_20230401.pdf
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2.猊鼻渓(げいびけい)線
路線名の通りかつては一関市東部(旧東山町)の景勝地である猊鼻渓への路線として観光客も利用しましたが、1986年に大船渡線猊鼻渓駅が開業し、平成以降は観光客はよほどのことがない限り一般路線バスを利用しなくなったため、2023年現在は完全な生活路線として平日5往復・土休日4往復しています。
http://www.iwatekenkotsu.co.jp/pdf/timetable/33_ichinoseki/33130_geibikei_20221230.pdf
これを代替するとすれば、「一関市東山町に本社をおき、かつてこの地域からJRバス東北が撤退した後を引き継いで路線バス事業を行っている「東磐交通」に一関市が委託する形でコミュニティバスを運行」というシナリオが有力ですが、果たしてどうなることでしょう? ちなみに、以前は東磐交通は自社の公式サイトに路線バスの情報を載せていたようですが、このブログを書いている時点では「サイトリニューアル中」となっています。