2021.10.14~2024/07/02更新
かみをかうむる【被髪】
萩原義雄識
鎌倉時代写『論語』高山寺本
微管仲。吾其被[レ]髮左衽矣。豈若匹夫匹婦之為諒也
【原文】
17.子貢曰:「管仲非仁者與?桓公殺公子糾,不能死,又相之。」子曰:「管仲相桓公,霸諸侯,一匡天下,民到于今受其賜。微管仲,吾其被髮左衽矣!豈若匹夫匹婦之為諒也,自經於溝瀆,而莫之知也!」(14.17)
軍記物語『太平記』〔日本古典文学全集[57]『太平記』(4)99頁〕
○依之洛中ハ今靜謐(セイヒツ)ノ體(テイ)ニテ、髮ヲ被(カウム)リ衽(ジン)ヲ左ニスル人ハナケレ共、遠國ハ猶(ナホ)シヅマラデ、戈(ホコ)ヲ荷(ニナ)ヒ粮(カテ)ヲ裹(ツツム)コト隙(ヒマ)ナシ。
かみをかうむる【被髪】
萩原義雄識
鎌倉時代写『論語』高山寺本
微管仲。吾其被[レ]髮左衽矣。豈若匹夫匹婦之為諒也
【原文】
17.子貢曰:「管仲非仁者與?桓公殺公子糾,不能死,又相之。」子曰:「管仲相桓公,霸諸侯,一匡天下,民到于今受其賜。微管仲,吾其被髮左衽矣!豈若匹夫匹婦之為諒也,自經於溝瀆,而莫之知也!」(14.17)
軍記物語『太平記』〔日本古典文学全集[57]『太平記』(4)99頁〕
○依之洛中ハ今靜謐(セイヒツ)ノ體(テイ)ニテ、髮ヲ被(カウム)リ衽(ジン)ヲ左ニスル人ハナケレ共、遠國ハ猶(ナホ)シヅマラデ、戈(ホコ)ヲ荷(ニナ)ヒ粮(カテ)ヲ裹(ツツム)コト隙(ヒマ)ナシ。
といった一文中に、此の句表現が用いられていることを検証しておく。
小学館『日国』第二版には二つの意味を載せ、各々に語例を用意するが、右に示した『太平記』の語例は載せていない。
このあとも、語用例を蒐集していくことで、この句表現が漢籍『論語』に依據したものとしての語例を拾い上げていくことで、小学館『日国』第二版所収の語用例との聯関性についても見定めて行くことになる。
《補助資料》
小学館『日本国語大辞典』第二版
こうむ・る[かうむる]【被・蒙】〔他ラ五(四)〕(「こうぶる(被)」の変化した語)(1)頭から衣服、帽子などをかぶる。身体や頭をおおう。かぶる。*玉塵抄〔一五六三(永禄六)〕一七「かうべにかうむってかづいたか鶡冠と云て鶡の鳥の羽を以て冠にしてきた者あり」(2)神仏や目上の人から、ある行為や恩恵などを受ける。いただく。相手に対する敬意をこめて用いる。「御免をこうむる」*九冊本宝物集〔一一七九(治承三)頃〕四「後生に三宝のあはれみをもかうむらんと思ひて」*金刀比羅本保元物語〔一二二〇(承久二)頃か〕上・新院御謀叛思し召し立たるる事「仁平元年正月十日、万機内覧の宣旨をかうむりて天下の大小事をとりおこなひ給ひしゆへなり。〈略〉勘気をかうむるとき、しゃうりをただしく申ば」*ロドリゲス日本大文典〔一六〇四(慶長九)~〇八〕「ヲウセ co<muri(カウムリ) ソロ」*歌舞伎・名歌徳三舛玉垣〔一八〇一(享和元)〕三立「武虎は武者所を蒙る」*和英語林集成(初版)〔一八六七(慶応三)〕「オンヲ ko<muru(コウムル)」*日本橋〔一九一四(大正三)〕〈泉鏡花〉四三「お助けを被(カウム)りました御礼を」(3)きず、災禍、罪など好ましくないものを身に受ける。また、負担をしょいこむ。*愚管抄〔一二二〇(承久二)〕四・鳥羽「友実といふ禰宜きずをかふむりなんどしたりければ」*太平記〔一四C後〕一八・瓜生判官老母事「討死する者五十三人疵を被(カフムル)者五百余人也」*小説粋言〔一七五七(宝暦七)〕一「喫(〈注〉カフムル)二一分虧(〈注〉めいわく)一」*人情本・英対暖語〔一八三八(天保九)〕初・三回「文次郎の身の上に不慮なる災ひをかふむりて」*光と風と夢〔一九四二(昭和一七)〕〈中島敦〉三「此の豪快な赤髯詩人も、自己の作品の中に於てなら、友情が家庭や妻のために蒙(カウム)らねばならぬ変化を十分冷静に観察できた筈だのに」*ニッポン日記〔一九五一(昭和二六)〕〈井本威夫訳〉一九四五年一二月一五日「神道はまことに重大な打撃をこうむった」(4)(冠)ある字やことばなどを他のことばや名前のはじめにつける。冠する。*鑑草〔一六四七(正保四)〕陰隲「陰隲の二字あるを採て篇首に弁(カウム)らしむ」【語誌】(1)「かがふる」から変化した語に、「こうぶる(こうむる)」と「かぶる(かむる)」があるが、中古に生じた「こうぶる」に加え、中世以降「こうむる」が用いられるようになる。(2)頭部などを何かでおおう意では、漢文訓読文の場合、主に「こうぶる」「かぶる」が、和文脈では主に「かずく」が用いられた。(3)「こうぶる」「こうむる」は、上位者からの行為や恩恵を受ける、もしくは、傷を身に受ける例を中心に使用される語として定着し、「かぶる」「かむる」との意味の分化が意識されていたと考えられる。→「こうぶる(被)」の語誌。【発音】コームル〈音史〉室町頃から用いられる。〈標ア〉[ム]〈ア史〉室町・江戸●●○○〈京ア〉[0]【辞書】和玉・文明・天正・饅頭・黒本・日葡・書言・ヘボン・言海【表記】【蒙】文明・天正・饅頭・黒本・書言・ヘボン・言海【被】和玉・文明・饅頭・黒本・書言・言海【冠】和玉・言海【扈・頼〓・胃】和玉【同訓異字】こうむる【被・蒙】【被】(ヒ)かぶる。おおう。「被覆」「被膜」 うける。あう。「被災」「被害」 れる・られる(受身の助字)。《古かうむる・かうぶる・かうぶらしむ・きる・きす・かづく・かつぐ・つく・ふるる・およぶ・おほす・みだる》【蒙】(モウ)おおう。おおいかくす。「蒙翳」 うける。「蒙恩」「蒙被」《古かうぶる・おほふ・おほほる・をかす・かつぐ・くもる・くらし・つつむ・あざむく》
小学館『日国』第二版には二つの意味を載せ、各々に語例を用意するが、右に示した『太平記』の語例は載せていない。
このあとも、語用例を蒐集していくことで、この句表現が漢籍『論語』に依據したものとしての語例を拾い上げていくことで、小学館『日国』第二版所収の語用例との聯関性についても見定めて行くことになる。
《補助資料》
小学館『日本国語大辞典』第二版
こうむ・る[かうむる]【被・蒙】〔他ラ五(四)〕(「こうぶる(被)」の変化した語)(1)頭から衣服、帽子などをかぶる。身体や頭をおおう。かぶる。*玉塵抄〔一五六三(永禄六)〕一七「かうべにかうむってかづいたか鶡冠と云て鶡の鳥の羽を以て冠にしてきた者あり」(2)神仏や目上の人から、ある行為や恩恵などを受ける。いただく。相手に対する敬意をこめて用いる。「御免をこうむる」*九冊本宝物集〔一一七九(治承三)頃〕四「後生に三宝のあはれみをもかうむらんと思ひて」*金刀比羅本保元物語〔一二二〇(承久二)頃か〕上・新院御謀叛思し召し立たるる事「仁平元年正月十日、万機内覧の宣旨をかうむりて天下の大小事をとりおこなひ給ひしゆへなり。〈略〉勘気をかうむるとき、しゃうりをただしく申ば」*ロドリゲス日本大文典〔一六〇四(慶長九)~〇八〕「ヲウセ co<muri(カウムリ) ソロ」*歌舞伎・名歌徳三舛玉垣〔一八〇一(享和元)〕三立「武虎は武者所を蒙る」*和英語林集成(初版)〔一八六七(慶応三)〕「オンヲ ko<muru(コウムル)」*日本橋〔一九一四(大正三)〕〈泉鏡花〉四三「お助けを被(カウム)りました御礼を」(3)きず、災禍、罪など好ましくないものを身に受ける。また、負担をしょいこむ。*愚管抄〔一二二〇(承久二)〕四・鳥羽「友実といふ禰宜きずをかふむりなんどしたりければ」*太平記〔一四C後〕一八・瓜生判官老母事「討死する者五十三人疵を被(カフムル)者五百余人也」*小説粋言〔一七五七(宝暦七)〕一「喫(〈注〉カフムル)二一分虧(〈注〉めいわく)一」*人情本・英対暖語〔一八三八(天保九)〕初・三回「文次郎の身の上に不慮なる災ひをかふむりて」*光と風と夢〔一九四二(昭和一七)〕〈中島敦〉三「此の豪快な赤髯詩人も、自己の作品の中に於てなら、友情が家庭や妻のために蒙(カウム)らねばならぬ変化を十分冷静に観察できた筈だのに」*ニッポン日記〔一九五一(昭和二六)〕〈井本威夫訳〉一九四五年一二月一五日「神道はまことに重大な打撃をこうむった」(4)(冠)ある字やことばなどを他のことばや名前のはじめにつける。冠する。*鑑草〔一六四七(正保四)〕陰隲「陰隲の二字あるを採て篇首に弁(カウム)らしむ」【語誌】(1)「かがふる」から変化した語に、「こうぶる(こうむる)」と「かぶる(かむる)」があるが、中古に生じた「こうぶる」に加え、中世以降「こうむる」が用いられるようになる。(2)頭部などを何かでおおう意では、漢文訓読文の場合、主に「こうぶる」「かぶる」が、和文脈では主に「かずく」が用いられた。(3)「こうぶる」「こうむる」は、上位者からの行為や恩恵を受ける、もしくは、傷を身に受ける例を中心に使用される語として定着し、「かぶる」「かむる」との意味の分化が意識されていたと考えられる。→「こうぶる(被)」の語誌。【発音】コームル〈音史〉室町頃から用いられる。〈標ア〉[ム]〈ア史〉室町・江戸●●○○〈京ア〉[0]【辞書】和玉・文明・天正・饅頭・黒本・日葡・書言・ヘボン・言海【表記】【蒙】文明・天正・饅頭・黒本・書言・ヘボン・言海【被】和玉・文明・饅頭・黒本・書言・言海【冠】和玉・言海【扈・頼〓・胃】和玉【同訓異字】こうむる【被・蒙】【被】(ヒ)かぶる。おおう。「被覆」「被膜」 うける。あう。「被災」「被害」 れる・られる(受身の助字)。《古かうむる・かうぶる・かうぶらしむ・きる・きす・かづく・かつぐ・つく・ふるる・およぶ・おほす・みだる》【蒙】(モウ)おおう。おおいかくす。「蒙翳」 うける。「蒙恩」「蒙被」《古かうぶる・おほふ・おほほる・をかす・かつぐ・くもる・くらし・つつむ・あざむく》
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