駒澤大学「情報言語学研究室」

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うつぎ【卯木】―植物編語彙―

2023-05-01 14:13:41 | 古辞書研究

うつぎ【卯木】

 ここ、数日のあいだ咲き誇っている白き卯の花が目を惹き、身近な室内の花活けにしている。

       日本の歌「夏は来ぬ」の歌詞にも、「卯の花のにほふ垣根にほととぎす早も来鳴きて」と唱われてきている此の花は雪のように花弁を下向きにした白い可憐な花である。

       古への和歌に、
   『万葉集』 (臨時) 作者不明
  佐伯山 卯の花持ちし 愛(かな)しきが 手をし取りてば 花は散るとも

   『拾遺集』 (題しらず) 柿本人麿
  ほととぎす かよふ垣根の 卯の花の 憂きことあれや 君がきまさぬ

と詠われていて、この歌合いも時は流れて千年となって巡る季節の初夏を知らせる鳥、不如帰の来鳴き声と花の光りに映えるその白さとにざわつく世の声とは裏腹に心を落ちつかせてくれる卯の花が愛おしい。

 小学館『日本国語大辞典』第二版
うつ-ぎ【空木・卯木】〔名〕(1)(茎が中空であるところから名づけられたという)ユキノシタ科の落葉低木。各地の山野にふつうに生える。高さ一・五~三メートル。初夏、鐘形の白い五弁のうつぎ【卯木】UU077花が円

錐に集まって咲く。茎は中空。樹皮は淡褐色でうろこ状にはがれる。葉は対生し、先がとがった長卵形で、へりに浅い鋸歯(きよし)があり、裏には星状毛がある。実は球形でかたい。枝葉は煎じて黄疸(おうだん)の薬、せきの薬とする。材質はかたく、木釘とし、生垣や庭木としてもよく植えられる。卯月に咲くことから「うのはな」ともいう。かきみぐさ。ゆきみぐさ。学名Deutzia crenata ▼うつぎの花《季・夏》*本草和名〔九一八(延喜一八)頃〕「溲䟽 一名巨骨 一名楊櫨〈略〉一名空䟽 和名宇都岐」*俳諧・御傘〔一六五一(慶安四)〕五「卯(う)の花 木也。うつ木と斗しても夏なり」*日本植物名彙〔一八八四(明治一七)〕〈松村任三〉「ウツギ ウノハナ 溲䟽」(2)植物「こくさぎ(小臭木)」の異名。【語源説】幹の中がウツロであるから〔名語記・和句解・日本釈名・滑稽雑談所引和訓義解・東雅・万葉考別記・名言通〕。ウツロギの義〔日本語原学=林甕臣〕。【発音】ウツギ〈なまり〉ウツゲ・オツギ〔飛騨〕ウヅゲ〔青森〕ウヅギ〔津軽語彙〕ウッツキ〔福岡〕〈標ア〉[0][ウ]〈ア史〉平安○●●〈京ア〉[ウ]【辞書】字鏡・和名・色葉・名義・下学・和玉・文明・伊京・明応・天正・饅頭・黒本・易林・日葡・書言・ヘボン・言海【表記】【楊盧木】下学・文明・伊京・明応・天正・黒本・易林【溲䟽】和名・色葉・名義【楊櫨】色葉・名義・書言【櫨】和玉・饅頭【械・㭇・捨】字鏡【枇・槍】名義【卯木】ヘボン【空木】言海【図版】空木(1)
うつぎ【方言】〔名〕(1)植物、つつじ(躑躅)。《うつぎ》岡山県苫田郡748(2)植物、みやましぐれ(深山時雨)。《うつぎ》島根県簸川郡964(3)植物、にわとこ(接骨木)。《うつぎ》宮城県仙台市964(4)櫟(くぬぎ)の実。《うつぎ》予州†034



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