日本の高度な医療技術や機器、サービスの新興国向け輸出を振興するため、政府はモスクワや北京、カンボジアのプノンペンなどで官民共同による医療センターの開設に着手する。来年度中に救急病院や内視鏡施術施設など10件前後の決定を目指す。医療機器のほか、運営やサービスのノウハウを含めた日本方式の病院を丸ごと輸出。医療需要が高まっているアジアや中東、東欧などの新興国市場を開拓し、国内の医療産業を活性化する。
政府は医療・介護・健康関連産業を昨年6月に決めた新成長戦略の柱の一つに位置付けており、病院の輸出と訪日外国人への医療サービスの提供を合わせ、2020(平成32)年までに約1兆円の経済効果と5万人の雇用創出を見込んでいる。
病院輸出プロジェクトでは、経済産業省ががんや循環器の治療、内視鏡施術、再生医療など日本が得意とする分野で、新興国への進出を希望する民間の医療機関や医療機器メーカーなどを募っている。
すでに「モスクワ内視鏡施術センター」(仮称)のほか、北京や広州の中核病院やプノンペンに開設される救急病院の中に「日本医療センター」(同)を設ける案件について、具体的な調整を進めている。来年度から準備に入り、数年内にオープンする予定だ。
センターには、日本から医師や看護師らを派遣するほか、医療機器だけでなく、ベッドや内装などの病院設備、食事などを含む運営システムを提供。日本の医療方式を現地で普及させることにより、継続的な需要獲得につなげることを狙っている。
政府は、現地が必要とする医療ニーズや市場価格などを調査するほか、医療過誤などの紛争処理の現状など課題を洗い出し、進出を支援する態勢を整える。また、具体的な開設にあたっては、現地の政府機関との許認可などの交渉も担当する。
政府は、医療関連産業の活性化に向け、1月に日本で病気の治療や健康診断などを行う外国人と付添人に最長で半年間の滞在を認める「医療滞在査証(ビザ)」を創設したほか、外国語による医療情報の提供なども拡充する。こうした外国人の誘致による医療ツーリズムの促進と病院の輸出を2本柱とし、成長や雇用創出につなげる考えだ。