花地蔵つれづれ日記

古美術、芸術全般、日々気になること。

李朝刷毛目蕎麦手茶碗

2020-03-02 08:41:03 | アート 文化 古美術


李朝時代前期の刷毛目蕎麦手茶碗です。
「高麗茶碗・第一巻 中央公論社」に紹介されている 伝来 根津嘉一郎…根津美術館蔵の四十「刷毛目(蕎麦手)」と同手の茶碗です。
同著の作品解説にもあるように、器は、蕎麦と似た姿の茶碗ですが、土味、釉調は蕎麦と異なります。胴は抑揚をつけてゆるやかに立ち上がり、高台は小振りにおとなしく削り出され、高台内の削り込みは浅いです。内面見込みは平らに切りまわされ、その中に目跡が五つくっきりと残っています。内側には白い刷毛目がめぐらされ、内外に青磁釉がかなり厚くかかっています。同著に紹介されているもう一品の「刷毛目(蕎麦手)」の作品解説には「類例の極めて少ない珍しい作振りの内刷毛目茶碗である。」とあります。

伝世の茶碗ならではの、使い込まれた艶やかな潤いのある肌は、人の心を引き付けます。時代の経過を感じさせる味わいのある表情、勢いのある刷毛目跡も魅力的です。
茶碗を、使い、伝えて来た茶人たちの、茶碗を愛でる眼の優しさ、手の温もりまで伝わってくるようです。
「時が茶碗を作る」ということが実感できる美しい茶碗です。

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