はな to つき

花鳥風月

Gravity Blue 5

2012-05-01 07:06:56 | 【Gravity Blue】
「合格おめでとう、泉。」

3年前の、その冬最後になるだろう雪が静かに降り始めた夜。
海は、私の大学合格の宴なるものを催してくれた。
「ありがとう。」
私は、言う。「それもこれも、お姉さまのおかげでございます。」

宴とはいっても、そこは深夜営業の健全な喫茶店。
でも、ふたりにとっては大切なお店。
海辺に面した白く瀟洒なお店には、家からすぐ側という立地条件と、
我が家の両親が寛大(?)という理由で、
高校に上がった頃から何度も姉に連れてきてもらっていた。
そのロケーションといい、深海のような雰囲気の店内といい、
当然客層は九分九厘カップルだった。
けれども、私たちは、
そのお店を、りんごのタルトをこよなく愛していた。

そして、それは、ふたりで訪れる最後の夜でもあった。