とにかく、船着場まで行ってみよう。
そう思い、重力をすっかり忘れたわたしの脚は、
蓄えられたアイスエネルギーで進みだした。
さっきの2倍の速さで歩いているようだ。
潰れてしまっているのか、夜になったら開くのか。
そのどちらなのか、見分けがつかない店並みの続く路を歩く。
ちょっと風情のある少し錆びついた色の印象の街並も、
今は風の中の飾りでしかない。
それほどまでに、急いでいた。
まるで、誰かに急かされているように。
右手の川岸に停泊している高速艇の先端が近付いてくる。
目的地が、すぐそこなのが判る。
この路の行き止まりに、いくつかの売店とチケット売り場。
そして、それほど大きくない待合所のある船着場はあるはずだった。
けれど、実際はちがう。
まったく、ちがう。
悪びれた様子もなく、舗装されたばかりの路が緩いカーブで続いている。
リゾートホテルとしか言いようのない建物たちが、そびえ立つ。
あまりにも、街並に馴染んでいなくて、異様だ。
しかも、船着場が新しい。
新しすぎる。
観光バスやらタクシーやらで、この街の人口密度を独り占めしているよう。
どうやら、その最大の原因は、隣につくられた水族館のようだ。
入口にも出口にも、さっきと同じ制服の大群が立ちはだかっている。
そして、インフォメーションセンターには、
派手に貼られた“高速艇で行くコーラルツアー”のポスターたち。
ビジネスだ。
観光開発だ。
変わり果てたこの景観を、
いつの日か、あのふたりに、わたしは伝えるのだろうか。
いいえ、そんなことはしたくない。
それも、これも、彼らにも、わたしにも、悲しすぎる。
一気に観光の波が、慎ましい人たちの決して戻ることのない大切な思い出を、
飲み込んでしまいそうな瞬間だった。
もう、勇気を出さないと、
島へ渡るチケットも買えなくなってしまいそうだった。
それでも、島は、ふたりの島のままで、まだ残っているはず。
という願いにも似た思いに、賭けてみたかった。
そして、その時のままの、その島を、わたしも感じたかった。
信じよう。すべてを。
信じよう。
そう思い、重力をすっかり忘れたわたしの脚は、
蓄えられたアイスエネルギーで進みだした。
さっきの2倍の速さで歩いているようだ。
潰れてしまっているのか、夜になったら開くのか。
そのどちらなのか、見分けがつかない店並みの続く路を歩く。
ちょっと風情のある少し錆びついた色の印象の街並も、
今は風の中の飾りでしかない。
それほどまでに、急いでいた。
まるで、誰かに急かされているように。
右手の川岸に停泊している高速艇の先端が近付いてくる。
目的地が、すぐそこなのが判る。
この路の行き止まりに、いくつかの売店とチケット売り場。
そして、それほど大きくない待合所のある船着場はあるはずだった。
けれど、実際はちがう。
まったく、ちがう。
悪びれた様子もなく、舗装されたばかりの路が緩いカーブで続いている。
リゾートホテルとしか言いようのない建物たちが、そびえ立つ。
あまりにも、街並に馴染んでいなくて、異様だ。
しかも、船着場が新しい。
新しすぎる。
観光バスやらタクシーやらで、この街の人口密度を独り占めしているよう。
どうやら、その最大の原因は、隣につくられた水族館のようだ。
入口にも出口にも、さっきと同じ制服の大群が立ちはだかっている。
そして、インフォメーションセンターには、
派手に貼られた“高速艇で行くコーラルツアー”のポスターたち。
ビジネスだ。
観光開発だ。
変わり果てたこの景観を、
いつの日か、あのふたりに、わたしは伝えるのだろうか。
いいえ、そんなことはしたくない。
それも、これも、彼らにも、わたしにも、悲しすぎる。
一気に観光の波が、慎ましい人たちの決して戻ることのない大切な思い出を、
飲み込んでしまいそうな瞬間だった。
もう、勇気を出さないと、
島へ渡るチケットも買えなくなってしまいそうだった。
それでも、島は、ふたりの島のままで、まだ残っているはず。
という願いにも似た思いに、賭けてみたかった。
そして、その時のままの、その島を、わたしも感じたかった。
信じよう。すべてを。
信じよう。