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[エスドリ2日記]
『ベル』は本の神の神殿の前に来ていた。
だが、辺りのいつもと同じぐらいの静謐を保った空間が実に不気味であった。
ベル:あれこれ考えている『本の神様』が私がやろうとしている事に気付かないなんて事はないよね…
なのに、何でこんなに静かなの?それともとっくの昔に逃げてしまってここはもうもぬけの殻とか?
より辺りを警戒しながら本の神の部屋とゆっくりと進む。
『ベル』は自分の体にはやや大きい5つの指輪を抱きかかえた。
本の神の部屋の前に着く。
すると、誰もいないという事はなく何やら声がした。
『本の神』一人だけのようであった。
いつものようにアニメか何かのシーンを一人だけで再現しているようだった。
[エスドリ2日記]
本の神:『自分には、他に何もないってそんな事言うなよ。別れ際にさよならなんて悲しい事言うなよ』
『何泣いているの?ごめんなさい。こういう時どんな顔すればいいのか分からないの』
『笑えばいいと思うよ』
勢いよく扉を開けて中に入った。
ベル:笑えません!絶対に!!よりにもよって今の私の前で…
そんなふざけたことを言っているなんて!!
[エスドリ2日記]
本の神:ん?帰って来たか…良くやった。妖精『ベル』よ。よくぞ全ての指輪を取り戻し、ここに戻った。
これにより本の世界の平和は約束され…
手を伸ばした本の神だが、ベルが身を引いた。
本の神:ん?指輪を…
ベル:そんなしらじらしい事を言わないで下さいよ!
本の神:白々しい?
私はお前が任を見事にやり遂げたことを素直に誉めたのだがな…
ベル:それが白々しいと言っているんです!
一体、私に対して何をしようと企んでいるんです!
本の神:本の世界を守る事に貢献した優秀な妖精に対して何を企むというのか…
ベル:どーせ、私をやっつけて指輪を奪おうと考えているんでしょう?
本の神:はぁ…
完全に疑心暗鬼のようだな。
本の神として口上はしっかり述べねば示しが付かんと思ったのだが、
お前がそのような態度に出るのであれば私としても中断せざるを得んな。
ならば。聞こうでははないか。
言いたい事、聞きたい事は腐るほどあるのだろう?
ベル:何もかも分かっている癖に…
私のこの指輪が偽物だとでも思っているんですか?
本の神:私とて神だ。見間違えるわけがない。
使いようによっては私を殺すのは容易だろう。
ベル:だったらどうして何でもないような顔をしていられるんです?
今の私が怒っていることぐらい分かっているんでしょう?
本の神:まぁな。
だが、本の神として毅然と振る舞うのは当然だろう。
仮に私が土下座をしたところでお前はそれで私を簡単に許すのか?
ベル:…。
流石ですね。私の事を良くわかっていますね…
私がここに来るまで何もしてこなかったのもそういう事ですか?
本の神:それもあるな。
神殿の周りに対して妖精を多数集めてお前に対して攻撃させる事も考えはした。
だが、お前の怒りを煽るような事は得策ではないと思った。
それに、指輪を持ったお前に対し妖精など集めて攻撃させたところで役には立たん。
吹き飛ばされておしまいだ。
無駄な犠牲が増えるぐらいならこうやって黙って待つのが正しい選択だと思った。
ベル:逃げる事は考えなかったんですか?
本の神:身を隠してお前を怒らせて指輪を使って暴れられてはこの世界にとって良くない。
というよりは第一として私自身、お前と話してみたいと思った。
だからこうしていつもと同じようにして座して待ってるという訳だ。
少しは私に対しての疑念が晴れたか?
ベル:話す事なんてありませんよ!私はあなたを許せないんです!
本の神:ほう。記憶を返せという事ではないのか。
ベル:もう記憶の事もどうだっていいんです!そんな記憶返った所で何にもならないんですから!
本の神:ならば何が望みだ?
ベル:私はあなたを許せないんです!!こんな気持ちにさせたあなたが!
本の神:む。そうか…それで指輪の力を使って私を葬ろうという訳か…
今のお前ならば本の世界を引き換えにこの私と刺し違えようという覚悟もあるようだな。
ベル:そうです!私の気持ちを弄んだあなたが!私がこうなったのも全部あなたのせいじゃないですか!
本の神:確かにお前にとってはそのように思えるだろうな…
私自身、本当にすまないと思っている。
私がもう少しうまくやっていればお前が記憶を消された事実に気付くこともなかった。
そうすれば今の怒りや悲しみにさいなまれる事もなかった事だろう。
ベル:私をバカにしているんですか?もみ消せればそれでいいと!
本の神:自分がやった行為に対しては責任がある。神であるのならなおさらだ。
嘘をつくのならば分からないようにしなければならん。
それが露見したのだから私のミスだ。
結果としてお前が傷つくこととなった。だからその事を謝っているのだ。
ベル:あなたは自分の事が一番なんですか!
本の神:何度も言っているであろうが、私は神だとな。
理知的に動かねばならん。感情だけで動く訳にはいかん。
ベル:!?
感情だけで動く?私の事を言っているんですか?
本の神:他に誰がいるというのか?
ベル:くぅ…
あなたの言う事には血が通っていません!
心から言ってない!!
こんな時だっていうのにそれが信じられない!
私がこの指輪の力を使わないという確信があるんですか?
それとも、使わせない方法があるんですか?
本の神:疑うようなら試してみればいいだけの事だ。
これ以上、何を言ってもお前は私の言う事をを信じはしないだろう。
『嘘だ』『何か企んでいる』『本心じゃない』と
お前自身が納得できない返答に『嘘』『偽り』『企み』などと言われてはまともに話も出来ん。
ベル:…。
あ、あなたがそれだけの事をしてきたからではないですか!
本の神:分かった。私がおかしい。『酷い』『最低』『ゴミ』
何とでも言うが良い。
で、これ以上何もしないというのであれば指輪を返してくれんか?
こんな無意味な時間に何の価値があるというのか?
それとも、指輪を持つことでお前が、私より優位に立ち続けるという事が目的かもしれんが
そんな事にいつまでも付き合っている私ではない。
本の神はゆっくりと歩みを進める所にベルは本の神に指輪を向けた。
『ベル』は『本の神』に指輪を向けた。
ベル:来ないでください!指輪の力を使いますよ!
本の神:使えばいい。使い方は分かるか?5つの指輪を五角形に並べ、強く願うだけだ。
本の神:そうすれば私を消滅させるぐらいの力は簡単に引き出せる。
ベル:う、嘘よ!それはきっと罠よ!自爆の仕方を教えているだけよ!
本の神:…、
試してみればいい。私に向けてな。
本の神は更に歩みを進める。恐れを知らない様子のベルは震えた。まさに神という名にふさわしい姿であった。
ベル:それ以上近づいたら本当に使います!こ、これは脅しじゃありませんよ!
本の神:…。
そうは言ったが本の神は構わず両手を大きく広げて近づき遂にベルの指輪に触れた。
本の神:指輪を放してくれるか?
ベル:条件があります。それが出来たら返します。
本の神:物にもよるな…
条件とは何だ?
ベル:『守君から私に対しての記憶を消す事』です。
本の神様ならもうやっているかもしれませんが…
本の神:『アマリ』と同じような事を願うのだな…
だが、それは出来ん。
ベル:何故です?
本の神:全てはあの小僧の愚の骨頂とも言えるバカげた願いのせいだ。
覚えているか?
ベル:勿論です。忘れたくても忘れませんよ。
『私に言った役を演じろ』とかいう?守君の趣味全快の願いですよね。
本の神:そうだ。誰にも叶えた願いの記憶を消すという事は出来んのだ。
例え本の神である私であってもな。
ベル:え?
本の神:前のエスパーの願いは『出会った本の世界の少女を現実の少女にする事』であって
一緒にいたお前とは無関係だった。
だからこそ記憶を消し、前のエスパーの冒険の記憶を改ざんするのも容易だった。
今回はそうはいかん。
あの小僧とお前とは叶えた願いによって今もつながっているのだ。
ベル:つながっている?私と守君が?
本の神:そうだ。
小僧からお前の記憶を消すという事は願いそのものを消す事にもなる。
神が許可を出した約束を自らの手で反故したことになる。
それは神とてやってはならん罪だ。
ベル:…。
本の神:だから、私にはどうする事も出来ず
お前が本意不本意関わらず小僧のお前に対しての記憶は永遠に残る事となるのだ。
理由は分かったな?
それでは…
『ベル』は黙ったまま指輪を放した。『本の神』がその指輪を握った。
本の神:良し…。
ベル:…。
本の神:どうした?
ベル:どうしたはこっちの台詞ですよ。
煮るなり焼くなり記憶を消すなり好きにすればいいじゃないですか。ホラ…
本の神:指輪を取りに戻った素晴らしき妖精に対して何故そんな事をしなければならんのか?
ベル:罰を与えないんですか?本の神様を指輪を使って消そうとずっと考えていたんですよ。
本の神:ふん。妖精を煮ても焼いても旨くはないらしいしな。
それと今回の件に対してのお前の記憶も消す事は出来ん。
言っただろう?
お前と小僧はつながっていると…
『願い』によってお前達の記憶は守られているのだ。
神と言えど介入する事は出来ん。
ベル:…
で、でも、記憶を消す事が出来ないのなら私、そのものをを消すんでしょ?
本の神:まだ私を疑うか…
お前の疑念の深さには敬服するよ。
だがな。お前にはまだ出来る仕事もある。
手をかけるような真似はせんよ。
ベル:今までの事を他の人などに言いふらしますよ!
本の神:好きにすればいい。
本の神:少しばかりの権威を落としたぐらいで動揺するようで神の座は務まらん。
ベル:う…。
本の神:しかし…
いくら簡単な願いだったとはいえ指輪集めの途中という段階で
願いを叶えるなどという特例など許すべきではなかった…
許した結果が私の手にも及ばぬ事となってしまった。
最悪、事前に記憶に介入し、私にとって都合のよい展開も出来たかもしれん。
ベル:それがあなたの本性でしょう!
人の記憶や心を自分の都合で弄ぶ!!
あなたは…『ドリームデストロイヤー』よりもドス黒い心の持ち主じゃないですか!
本の神:なかなか言ってくれるな…『ベル』よ。
だが、そうかもしれんな…自覚はなくはない。
ベル:ぐ…
本の神:だからだ。
私の介入を拒む願いをしたあの小僧はある意味、この私である神を凌駕したのかもしれんと言える…
だが、今のお前を見て安心して来たな。
ベル:安心した?何がですか!
今からでも指輪を取り戻せたらあなたを消滅してやりたいぐらい腸煮えくり返っているんですよ!
本の神:だってそうだろう?
今のお前であればその私への憎しみにより心神耗弱で寝込むこともあるまい。
ベル:馬鹿にしているんですか!
本の神:強くなったと誉めているつもりだがな…
すまんが私に対して想いはあるだろうがこのまま頑張って強く生きていてほしい。
ベル:ぐ…
この人はなんてどれだけ勝手な事を…
本の神:さて、仕事の話に戻るがお前は現在を持って『本の妖精』の任を解く。
ベル:当たり前です!誰があなたのもとで働きたいもんですかッ!
本の神:それで異動だ。優秀なお前を欲している部署があってな。
ベル:はぁ?
本の神:映像の神の所だ。今から行ってもらいたい。詳細はここに書いてある。
ベル:それはいつ決まったんです?
本の神:お前に過去の記憶を消した事を伝えた直後だから
STAGE 5を終えた後だな。
ベル:何もかも見通していたんですか?
私が反抗するものの指輪を使わないことも!!
本の神:そこまで未来を見通す事など私とて出来ん。
お前が指輪を使って反抗する事を試みる事ぐらいは想定しておいたが
後の事は賭けだよ。
だが、神と言う役職は因果なものでな。
賭けに勝った後も負けた後の事も考えておかねばならん。
今回は賭けに勝った。
その際の事をお前に伝えているだけだ。
お前は何もかも私に踊らされているようで気分が悪いかもしれんが
あらゆる可能性の1つの結果でしかないという訳だ。
で、行ってくれるな?『映像の神』の元へ…
ベル:行きますよ!今すぐにでも!即刻!!
あなたの見える所にいる事ですら耐えがたいんですから!
本の神:そうか…それは結構な事だ。
ベル:私、絶対にこのことを忘れませんからッ!
私を活かした事をいずれあなたに後悔させてあげますから!!
本の神:ああ…楽しみに待っているよ。
ベルは即座に本の神の元から飛び去った。
本の神:ほ…
何とか…やり過ごした…肝を冷やしたな…
ナウシカのごとく、両手を広げて近づけば心優しい『ベル』の事だから指輪の力を使わんと思っていたが…
事故というのは起こり得る事だからな…
おっと、安心している場合ではない。急がねば…
『ベル』は映像の神の神殿に着いた。
ベル:ダメね。怒っていていい顔が出来ない…
ペシペシ!両手で頬を叩く。
ベル:今は心機一転でやらなくっちゃいけないわ。今だけは…
『映像の神』の部屋のドアを叩く。
????:ドウゾ―――
外人っぽいイントネーションの声が扉の裏から聞こえる。
ベル:??
失礼します。
不穏な感じを察知しつつ、扉を開けて中に入った。
映像の神:君ガ本ノ神ノ所デ仕事ヲコナシテイタ妖精カ~イ?
そこに立っていたのは胡散臭いサングラスをかけた男だったが
それは誰がどう見ても『本の神』がサングラスをしているだけのように見えた。
あまりに突然な事態に一瞬怒りを忘れた。だが、再び燃え盛る怒りが湧きたってきた。
ベル:あ…何であなたが!
映像の神:私ハ本ノ神ノ双子ノ弟、『映像ノ神』デ~ス。アナタノ活躍ハ聞イテイマ~ス。ヨロシクデ~ス。
ベル:やめましょうよ。そんな見え見えの演技。寒いですよ。
映像の神:ダカラ私ハ~
ベル:…。(冷たい視線)
映像の神:はぁ…
静かに映像の神はサングラスを置いた。やはり『本の神』そのものだった。
本の神:折角の私の気遣いを無駄にしおって…
ベル:そんな気遣いは無用です!バカバカしい!
本の神:…。人材不足でな…『本の神』でもある私が『映像』の方も兼務しているのだ。
というより私は大元はな。『創作の神』という事でな。
本や映像や絵、様々な創作の分野を取り仕切っている訳なのだ。
ベル:だから、私が赴くたびにアニメの名場面の再現をしていたんですね。
ってそんな事はどーでもいいです!あなたが『映像の神』でもあるのであれば仕事をやめます!
本の神:待て待て。そう焦る事はなかろう。まず仕事の内容を聞くぐらいは…
ベル:あなたの顔を見るのも嫌なんです!ですから、やめさせてください!
本の神:いいのか?そんな事を言って…
ベル:私を脅迫したところで何にもなりませんよ。今の私に怖い物なんてないんですから!
本の神:ああ~。あんな凄い事を知らないでいいなんて人生損するな~。
ベル:そんな気を引くような事を言ったからって…
本の神:お前にとって人生を左右する事なのにな~。
聞きもしないのか~。いや~残念無念。
ベル:どーせ口から出まかせでしょ。
本の神:それを棒に振るなんてな~。
ベル:だから…あなたの言う事なんて聞くつもりはないって!!
本の神:神に対してそれぐらい言えば少しは気分も晴れただろう。
少し聞いていてくれ。
それからの判断はお前に任せる。
ベル:なら初めから自分で言いたいだけなら早く言ってください。
あ!く!ま!で!
仕事の内容を聞くだけですよ。
本の神:はいはい。
でな…単純に映像世界について調査を行ってもらいたいのだ。
ベル:調査?
本の神:どうも最近、映像界で不穏な動きがみられるのでな。
先ほどの『ドリームデストロイヤー』のような存在がまた現れても困る。
その芽があるのなら早急に摘んでおきたいと思ったのだ。
ベル:はぁ…
本の神:その調査に伴いパートナーを付ける事を許そう。コレを持て
手渡されたのは薄っぺらい板状のものだった。
ベル:何です。これ?
本の神:魔法のスマホだ。
このスマホの検索アプリを使う事で次の最適なパートナーの所に連れて行ってくれるだろう。
ベル:前のしおりから何か急にデジタル化していますね。
本の神:道具というのは変わるもんだ。
ベル:でも、コレのアプリでパートナーを決めるって…
それってまさか?
本の神:さぁ?
後はこのアプリによって導いてもらうのだな…
誰になるかは私が知り及ぶことではない。
ベル:そ、そうですよね…私が全く知らない人を選んでしまう事も…ありえ…る。
本の神:そうだ…
だが、今のお前にとって最適な者を選び出してくれるはずだ。
ベル:…
本の神:魔法のアプリと言えど機械的選ぶものではない。
妖精とエスパーとのその精神、気持ち、様々な要因によって相性を決め選び出すものだからな。
何かつながっている者がいるのなら想いが相手を手繰り寄せることも出来るかもしれん。
ベル:想いが相手を手繰り寄せる?
本の神:おっと…今の余計な一言だったかもしれん…
で、この仕事を受けるのか?断るのか?
ベル:やります…
本の神:それは良かった。本当に…
ベル:では…
震える手でアプリを起動する。検索中という文字が出る。
ベル:(お願い…)
アプリ:検索終了しました。
矢印が表示された。
ベル:矢印だけ?住所とか表示されないで非常にアバウトですね。
本の神:さぁ行ってくるのだ!『ベル』よ!映像の世界を平和の為に!
ベル:はい。
飛び立った直後に、ベルはすぐに止まり振り返った。
本の神:どうした?
ベル:本の神様、ありがとうございました。
ペコリを頭を下げた。
本の神:ふ…何を礼など述べているのか。仕事前だぞ。
これからどうなるか分からん。仕事が今まで以上にしんどいかもしれんし
案外、先ほどのアプリが狂っていて最低なパートナーを選び出すかもしれん。
ベル:分かります。
でも、やっておきたかったんです。
後、すみませんでした。
後悔させるような事をするだなんてついさっき…
本の神:後悔はしている。
あれこれ苦労した事が骨折り損にしか思えなくてな。
『アマリ』の記憶など消さずそのまま終わらせてやるのが優しさではなかったのかとな…
ベル:それは本当にありがとうございまず。
しかも今回またチャンスを与えて下さるだなんて…
本の神:もう良い。
私はお前が嫌いなのだ。
あれこれ私がやってきたことを気に入らんと憎み
今となっては『ありがとう』などと手のひら返しをするような気分屋の妖精なんてものはな。
これで暫くお前の顔を見ずに済むと思うと清々しているぐらいだ。
ベル:はい。
では…
再び『ベル』は頭を深々と下げ、柔らかに微笑みながら飛び立っていった。
本の神:ふっ…
調査中に次の妖精を見つけねばならんな。
恋に現を抜かさない仕事に忠実な優秀な妖精をな…
しかし実に回りくどい事をした…肩が凝ったな…
暫く休暇でも取って
良いアニメでも見て良い再現でもしようか…
本の神もまた柔らかな微笑みを浮かべたのであった。
ベルは飛び立ち、アプリの矢印に従う。
それは見覚えのある地域だった。
ベル:まさか?まさか?でも、前の図書館の場所じゃない…どこなの?
すると矢印が差し示したのはマンションの一室であった。
窓が少し空いていたおかげですんなり入れた。
すると、そこにいたのは…
ベル:(ああ…こ、こういう時は、前と同じよう行く方がより感動的になるのよね…えっと…)
少女のサイズになった。
ベル:「映像の世界を調査をするために、あなたの力が必要なのです。さあこれをどうぞ」
『妖精の弓』と『普通のスーツ』を取りだした。
言い終わるとベルは妖精サイズに戻った。
少年:勝手に決めているけど、誰、君?
ベル:私は…(前の私は名前を決めてもらったのよね…けど…)ベルよ。良い名前でしょ?ふふふ~。
少年:いや、『ティンカーベル』から考えれば普通でしょ。
ベル:え?
まぁ…『ベルク・カッツェ』とか言い出さないでよね。
少年:それにしても何で君、そんなに馴れ馴れしいの?初対面でしょ?
ベル:え?あ…
(ま…まさか…本の神が守君の記憶を奪ったと…か?)
それは…守君?
守:ボクの名前を何で知っているの?
ベル:…。
(やっぱり…)
守:って~嘘~!!ベル。お帰り~!!
ベル:!!
(じわ…)
バカバカバカ~!!何でそうやってしらばっくれたのよ――――!(涙)
ドカドカドカ
守:痛い!痛い!痛い!ごめんごめんごめん!
ちょっとした冗談のつもりだったんだよ~。
ベル:こんな時に冗談だなんて酷すぎ!信じられない!!最低―――!!
ドカドカ
ベル:やって良い事と悪い事があるわよ!
守:本当悪かったよ…それに、こういう時はポカポカ殴るもんでしょ。
普通にストレート放ってくるとか…
しかも鼻骨を殴るなんていくら妖精サイズでもすっごい痛いよ…
ベル:ふん!
当然の報いよ!!
守:だからゴメンって…
それにしても、どうしたの?ベル。
『本の神様』から追放されたとか?
ベル:違うわ。私は『本の妖精』から『映像の妖精』になったのよ。
守:はぁ?どういう事?
ベル:私、『本の妖精』から『映像の妖精』に配置替えされたの。
で、その調査でまた私が来て、そのパートナーに守君が選ばれた訳。
守:へぇ~。
守:じゃ、もし、映像の世界がおかしくなったら映像が見れなくなっちゃうわけ?
ベル:そうよ。
守:じゃぁHな映像も?
ベル:ま…まぁ…
守:卑猥な映像も?
ベル:い、一応…
守:いやらしい映像も?
ベル:その流れは必須なの?
守:ゆ゛る゛せ゛ん゛!!
ベル:はいはい…
出来て良かったわね。
守:釣れない言い方だな~。
それにしても現れた時、何で妖精サイズで飛んでないの?
前は飛んでいたじゃない?
ベル:下から覗こうとする人がいるからよ。
守:そういう再現は大事でしょ―が!これから行う冒険でのモチベ―ションが違うんだよ!
ベル:相変わらずのスケベ心ね。
でも、凄く生き生きしてるわね…
守:気のせい気のせい。
でも、ベルも生き生きしてない?
ベル:私は普通よ。寧ろ呆れているぐらいだし
守:本当にそう?何かニコニコが溢れている気がするんだけど
ベル:また、前の苦労をさせられると思ったら疲れから来て顔が緩んでいるだけよ…
ベル:さてっと…
ずっと飛んでいるのも疲れたからいつものフードで休ませてね。
守:いいよ。って、あ…
ベルがフードに入ると何やらムニョっと不思議な感覚があった。
???:いてッ!!
ベル:な、な、何!?フードの中、何かいる!
フードの中を見ると体長10cmぐらいのトカゲのような生き物がいた。
ベル:な、何!この気色悪いの~。守君こんなの飼い始めた訳ぇ?
趣味悪いわよ!
守:あ、そいつは『ギーラサウザン』
ベル:はぁぁぁぁ!?
ベル:ええッ!?どういう事?どうして『ギーラサウザン』が生きているの?
守:僕も『ドリームデストロイヤー』ともどもやっつけちゃったと思ったんだけどさ…
『ドリームデストロイヤー』に攻撃が当たった瞬間に体を小さくして爆風から難を逃れたんだって…
ベル:そうなんだ…
あなたもしぶといわねぇ…
ギーラ:俺様は不死身だ。あの程度で死ぬか。
ベル:でも、体は小さくても『ギーラサウザン』でしょ?
大丈夫なの?危ないんじゃない?
守:あの時、急に体を小さくしたことによって力を失っちゃって
今じゃ、喋る事しか出来ないんだって…
ベル:でも、何をたくらんでいるか分からないから
守君の体の大きさなら踏んづけちゃっても良かったんじゃない?
ギーラ:!?
お前、カワイイ顔してサラリと恐ろしい事を言うんだな。
ベル:それだけの事をやって来たからでしょ。
ギーラ:…。
守:僕も踏んづける事は考えたんだけどさ…
ベル:だったら…
守:いや、ギーラサウザンを生かしていたら、
その内、本の世界の関係者か何かが『ギーラ』を捕まえに来るんじゃないかって思って…
そうしたらベルに会える糸口を探る事が出来る。だから、『ギーラサウザン』を踏めなかったんだ。
ベル:そ、そうなの。私と会う為の糸口ね。///
ベル:だ、だから、会った時そんなに驚かなかったんだ。
守:そういう事。ベルが来た時コイツのおかげかなってちょっと思ったんだよ。
ギーラ:ふん!お前達、俺様に感謝するが良い!
俺様のおかげでお前らは再会できたんだからな!
ベル:でも、態々守君の所に来るなんて…
いい度胸しているわね。
守:エスパーであるボクにくっついていた方がパワーアップするチャンスがありそうだって…
互いの利害が一致していたわけ…
ギーラ:フフフ…妖精が来てまたどこかに行くのだろう?
やはり俺様、考えは正しかったな!俺はツイてる!!
ベル:体が小さいからか声が甲高いのね。目玉の親父みたい…
ギーラ:それを言うな―――!
フン。腹立たしいが仕方あるまい…
だが、いずれ世界は俺様のものになる!
ベル:言っている事は恐ろしくても見た目からして何だか可愛らしいわね。
幼い子供が夢を語るみたいに…
ギーラ:そうそうそう。
ボクの将来の夢はサッカー選手になる事です!
ってなめとんのかワレ――――!!
守&ベル:あ、ノリツッコミした。
ギーラ:う、うるさいな。
お前らの低次元に俺様が敢えて合わせてやったんだ。
あ、ありがたく思え。
ベル:あなた、そういう属性なのね。
ギーラ:属性言うな!
全く…不愉快だ。
貴様ら、俺様が力を手に入れた時は真っ先に消してやる。
ベル:とか言っているけど守君。どうする?
守:僕としては『ベル』と会えたからは『ギーラサウザン』はもう用済みなんだけどね。
ギーラ:え?
ベル:そうね。私も同意見。
派手にやっちゃったら?
ギーラ:待て待て待て待て―――い!
恩人は大切にせんといかんだろ!
『ドリームデストロイヤー』を倒せたの俺様のおかげだぞ…
守:僕あんまり過去の事は振り返らないタイプなんだよね。
ベル:私も~。
ギーラ:やめろ!やめろ!やめろったらやめろ!
守:どーしよーかな~。
ベル:ふふふ…。何かもう『ギーラサウザン』って言うよりギラちゃんよね。
守:いいね!その名前。何だかシリーズで消滅しそうな系統な呪文みたいで…
ギラ:そうそう。『ギラ』はグループ攻撃で最初の方だから使いやすいけど
最強の『べギラゴン』は他の使い勝手の良い魔法に埋もれちゃって見向きもされないから
その内消滅されるという…
ドラクエのギラ系みたいに言うな―――。
2人:ハハハ!!(ふふふ~)
守:そうだ。ベル、その調査をやり遂げたらまた願いを1つ叶えてくれるのかな?
ベル:そうよ。
守:じゃ、予め言っておこうかな?今回はとんでもない奴ですぐには叶えられないから事前予約。
ベル:どんなのを予約するの?
守:じゃ…。う~む…
考え込む守。
守:…。
ベル:どうしたの?急に黙っちゃって…
あの時、言ってくれたじゃないの?それでいいじゃない。
守:願いはそれでいいんだけどさ…
何かね…
あ!!
一緒に言おうか?
ベル:守君の願いでしょ。どうして私が?
守:いいからいいから~。一緒言おうよ。
分かっているんでしょ~。ボクが何を望んでいるのか。
ベル:た、多分…
守:まぁ、違ってもいいからさ。一緒に言おうよ。
守:じゃ、『いっせーの』で言うからね。
ベル:うん…
守&ベル:いっせー…
ギラ:この『ギーラサウザン』を最強にしろ―――!
守:!?
ベル:残念ね。ギラちゃん。
これは事前確認だし、仮に本番だったとしてもエスパーである守君の本当に願いじゃなければダメなのよね。
あなたがいくら横から『ドラゴンボール』の『ウーロン』みたいにギャルの下着おくれ!
って言っても無駄なの。
ギラ:なに――――――!
守:あ、焦った~。これでダメかと思ったよ…
ベル:守君が焦った顔。面白かったわよ。この世の終わりみたいな感じで…
スホマで撮っておけば良かったと思ったぐらい。
ふふふ…
守:これは大事な事だったんだぞ!とても大事な事なんだ!
こんなボクでさえ真剣になるぐらいね!
ベル:こんなボクって…そこまで卑屈になる事もないと思うけど
守:何にしてもそれをそんな風にふざけるなんて…
『ベル』と言えど、酷いよ。
ベル:何、言っているの。
さっき私に酷過ぎる嘘をついたばかりじゃない。
少しぐらい意地悪させてくれたっていいんじゃないの?
守:それはまぁ…本当にごめんなさい。
ベル:本当傷ついたんだからね~。
守:返す言葉もございません。
ベル:ふっふっふ~。(暫く使えそうね)
ギラ:お前、良い性格してんな。俺が言うのも何だがな。
ベル:な、何よ。
ギラ:そんな事でずっとそいつをゆすり続けるのか?
陰湿だな。まさに陰湿。
ベル:陰湿だなんて…
そ、そこまではしないわよ。ちょっとからかっただけ。
それだけよ。それだけ。
守:本当に?ちょっとからかっただけ?
ベル:そうに決まっているじゃない。私だってそこまで鬼じゃないわよ。
守:良かった~。
私を泣かせたんだからお前、一生、奴隷になれとか言い出すかと思ったんだよ。
ベル:…。
私をどれだけ悪魔だと思っている訳よ。
守:妖精じゃなくて天使とか女神ぐらいは思っているよ。
ベル:もー。嘘ばっか~。
守:嘘じゃないって~
…。
ってあれ?何を言うんだっけ?
ベル:お願いを一緒にいうんでしょ。
大事なことじゃなかったの?
ホント、守君ってダメダメね~。
守:そういうボクの至らない所は『ベル』がしっかり修正してよ。
ベル:はいはい。分かりました。お世話させていただきますよ~。
守:じゃ、気を取り直して言おうよ!
ベル:うん。
守:いっせーの…
守&ベル:
2人のまた『新たなる戦い』がここから始まったのです。
それは1人のエスパーと1匹の妖精の夢を叶える為の旅。
あ、更に1匹、新しい仲間みたいな奇妙な生き物が増えたようですが…
目次 (リスト)
[エスドリ2日記]
『ベル』は本の神の神殿の前に来ていた。
だが、辺りのいつもと同じぐらいの静謐を保った空間が実に不気味であった。
ベル:あれこれ考えている『本の神様』が私がやろうとしている事に気付かないなんて事はないよね…
なのに、何でこんなに静かなの?それともとっくの昔に逃げてしまってここはもうもぬけの殻とか?
より辺りを警戒しながら本の神の部屋とゆっくりと進む。
『ベル』は自分の体にはやや大きい5つの指輪を抱きかかえた。
本の神の部屋の前に着く。
すると、誰もいないという事はなく何やら声がした。
『本の神』一人だけのようであった。
いつものようにアニメか何かのシーンを一人だけで再現しているようだった。
[エスドリ2日記]
本の神:『自分には、他に何もないってそんな事言うなよ。別れ際にさよならなんて悲しい事言うなよ』
『何泣いているの?ごめんなさい。こういう時どんな顔すればいいのか分からないの』
『笑えばいいと思うよ』
勢いよく扉を開けて中に入った。
ベル:笑えません!絶対に!!よりにもよって今の私の前で…
そんなふざけたことを言っているなんて!!
[エスドリ2日記]
本の神:ん?帰って来たか…良くやった。妖精『ベル』よ。よくぞ全ての指輪を取り戻し、ここに戻った。
これにより本の世界の平和は約束され…
手を伸ばした本の神だが、ベルが身を引いた。
本の神:ん?指輪を…
ベル:そんなしらじらしい事を言わないで下さいよ!
本の神:白々しい?
私はお前が任を見事にやり遂げたことを素直に誉めたのだがな…
ベル:それが白々しいと言っているんです!
一体、私に対して何をしようと企んでいるんです!
本の神:本の世界を守る事に貢献した優秀な妖精に対して何を企むというのか…
ベル:どーせ、私をやっつけて指輪を奪おうと考えているんでしょう?
本の神:はぁ…
完全に疑心暗鬼のようだな。
本の神として口上はしっかり述べねば示しが付かんと思ったのだが、
お前がそのような態度に出るのであれば私としても中断せざるを得んな。
ならば。聞こうでははないか。
言いたい事、聞きたい事は腐るほどあるのだろう?
ベル:何もかも分かっている癖に…
私のこの指輪が偽物だとでも思っているんですか?
本の神:私とて神だ。見間違えるわけがない。
使いようによっては私を殺すのは容易だろう。
ベル:だったらどうして何でもないような顔をしていられるんです?
今の私が怒っていることぐらい分かっているんでしょう?
本の神:まぁな。
だが、本の神として毅然と振る舞うのは当然だろう。
仮に私が土下座をしたところでお前はそれで私を簡単に許すのか?
ベル:…。
流石ですね。私の事を良くわかっていますね…
私がここに来るまで何もしてこなかったのもそういう事ですか?
本の神:それもあるな。
神殿の周りに対して妖精を多数集めてお前に対して攻撃させる事も考えはした。
だが、お前の怒りを煽るような事は得策ではないと思った。
それに、指輪を持ったお前に対し妖精など集めて攻撃させたところで役には立たん。
吹き飛ばされておしまいだ。
無駄な犠牲が増えるぐらいならこうやって黙って待つのが正しい選択だと思った。
ベル:逃げる事は考えなかったんですか?
本の神:身を隠してお前を怒らせて指輪を使って暴れられてはこの世界にとって良くない。
というよりは第一として私自身、お前と話してみたいと思った。
だからこうしていつもと同じようにして座して待ってるという訳だ。
少しは私に対しての疑念が晴れたか?
ベル:話す事なんてありませんよ!私はあなたを許せないんです!
本の神:ほう。記憶を返せという事ではないのか。
ベル:もう記憶の事もどうだっていいんです!そんな記憶返った所で何にもならないんですから!
本の神:ならば何が望みだ?
ベル:私はあなたを許せないんです!!こんな気持ちにさせたあなたが!
本の神:む。そうか…それで指輪の力を使って私を葬ろうという訳か…
今のお前ならば本の世界を引き換えにこの私と刺し違えようという覚悟もあるようだな。
ベル:そうです!私の気持ちを弄んだあなたが!私がこうなったのも全部あなたのせいじゃないですか!
本の神:確かにお前にとってはそのように思えるだろうな…
私自身、本当にすまないと思っている。
私がもう少しうまくやっていればお前が記憶を消された事実に気付くこともなかった。
そうすれば今の怒りや悲しみにさいなまれる事もなかった事だろう。
ベル:私をバカにしているんですか?もみ消せればそれでいいと!
本の神:自分がやった行為に対しては責任がある。神であるのならなおさらだ。
嘘をつくのならば分からないようにしなければならん。
それが露見したのだから私のミスだ。
結果としてお前が傷つくこととなった。だからその事を謝っているのだ。
ベル:あなたは自分の事が一番なんですか!
本の神:何度も言っているであろうが、私は神だとな。
理知的に動かねばならん。感情だけで動く訳にはいかん。
ベル:!?
感情だけで動く?私の事を言っているんですか?
本の神:他に誰がいるというのか?
ベル:くぅ…
あなたの言う事には血が通っていません!
心から言ってない!!
こんな時だっていうのにそれが信じられない!
私がこの指輪の力を使わないという確信があるんですか?
それとも、使わせない方法があるんですか?
本の神:疑うようなら試してみればいいだけの事だ。
これ以上、何を言ってもお前は私の言う事をを信じはしないだろう。
『嘘だ』『何か企んでいる』『本心じゃない』と
お前自身が納得できない返答に『嘘』『偽り』『企み』などと言われてはまともに話も出来ん。
ベル:…。
あ、あなたがそれだけの事をしてきたからではないですか!
本の神:分かった。私がおかしい。『酷い』『最低』『ゴミ』
何とでも言うが良い。
で、これ以上何もしないというのであれば指輪を返してくれんか?
こんな無意味な時間に何の価値があるというのか?
それとも、指輪を持つことでお前が、私より優位に立ち続けるという事が目的かもしれんが
そんな事にいつまでも付き合っている私ではない。
本の神はゆっくりと歩みを進める所にベルは本の神に指輪を向けた。
『ベル』は『本の神』に指輪を向けた。
ベル:来ないでください!指輪の力を使いますよ!
本の神:使えばいい。使い方は分かるか?5つの指輪を五角形に並べ、強く願うだけだ。
本の神:そうすれば私を消滅させるぐらいの力は簡単に引き出せる。
ベル:う、嘘よ!それはきっと罠よ!自爆の仕方を教えているだけよ!
本の神:…、
試してみればいい。私に向けてな。
本の神は更に歩みを進める。恐れを知らない様子のベルは震えた。まさに神という名にふさわしい姿であった。
ベル:それ以上近づいたら本当に使います!こ、これは脅しじゃありませんよ!
本の神:…。
そうは言ったが本の神は構わず両手を大きく広げて近づき遂にベルの指輪に触れた。
本の神:指輪を放してくれるか?
ベル:条件があります。それが出来たら返します。
本の神:物にもよるな…
条件とは何だ?
ベル:『守君から私に対しての記憶を消す事』です。
本の神様ならもうやっているかもしれませんが…
本の神:『アマリ』と同じような事を願うのだな…
だが、それは出来ん。
ベル:何故です?
本の神:全てはあの小僧の愚の骨頂とも言えるバカげた願いのせいだ。
覚えているか?
ベル:勿論です。忘れたくても忘れませんよ。
『私に言った役を演じろ』とかいう?守君の趣味全快の願いですよね。
本の神:そうだ。誰にも叶えた願いの記憶を消すという事は出来んのだ。
例え本の神である私であってもな。
ベル:え?
本の神:前のエスパーの願いは『出会った本の世界の少女を現実の少女にする事』であって
一緒にいたお前とは無関係だった。
だからこそ記憶を消し、前のエスパーの冒険の記憶を改ざんするのも容易だった。
今回はそうはいかん。
あの小僧とお前とは叶えた願いによって今もつながっているのだ。
ベル:つながっている?私と守君が?
本の神:そうだ。
小僧からお前の記憶を消すという事は願いそのものを消す事にもなる。
神が許可を出した約束を自らの手で反故したことになる。
それは神とてやってはならん罪だ。
ベル:…。
本の神:だから、私にはどうする事も出来ず
お前が本意不本意関わらず小僧のお前に対しての記憶は永遠に残る事となるのだ。
理由は分かったな?
それでは…
『ベル』は黙ったまま指輪を放した。『本の神』がその指輪を握った。
本の神:良し…。
ベル:…。
本の神:どうした?
ベル:どうしたはこっちの台詞ですよ。
煮るなり焼くなり記憶を消すなり好きにすればいいじゃないですか。ホラ…
本の神:指輪を取りに戻った素晴らしき妖精に対して何故そんな事をしなければならんのか?
ベル:罰を与えないんですか?本の神様を指輪を使って消そうとずっと考えていたんですよ。
本の神:ふん。妖精を煮ても焼いても旨くはないらしいしな。
それと今回の件に対してのお前の記憶も消す事は出来ん。
言っただろう?
お前と小僧はつながっていると…
『願い』によってお前達の記憶は守られているのだ。
神と言えど介入する事は出来ん。
ベル:…
で、でも、記憶を消す事が出来ないのなら私、そのものをを消すんでしょ?
本の神:まだ私を疑うか…
お前の疑念の深さには敬服するよ。
だがな。お前にはまだ出来る仕事もある。
手をかけるような真似はせんよ。
ベル:今までの事を他の人などに言いふらしますよ!
本の神:好きにすればいい。
本の神:少しばかりの権威を落としたぐらいで動揺するようで神の座は務まらん。
ベル:う…。
本の神:しかし…
いくら簡単な願いだったとはいえ指輪集めの途中という段階で
願いを叶えるなどという特例など許すべきではなかった…
許した結果が私の手にも及ばぬ事となってしまった。
最悪、事前に記憶に介入し、私にとって都合のよい展開も出来たかもしれん。
ベル:それがあなたの本性でしょう!
人の記憶や心を自分の都合で弄ぶ!!
あなたは…『ドリームデストロイヤー』よりもドス黒い心の持ち主じゃないですか!
本の神:なかなか言ってくれるな…『ベル』よ。
だが、そうかもしれんな…自覚はなくはない。
ベル:ぐ…
本の神:だからだ。
私の介入を拒む願いをしたあの小僧はある意味、この私である神を凌駕したのかもしれんと言える…
だが、今のお前を見て安心して来たな。
ベル:安心した?何がですか!
今からでも指輪を取り戻せたらあなたを消滅してやりたいぐらい腸煮えくり返っているんですよ!
本の神:だってそうだろう?
今のお前であればその私への憎しみにより心神耗弱で寝込むこともあるまい。
ベル:馬鹿にしているんですか!
本の神:強くなったと誉めているつもりだがな…
すまんが私に対して想いはあるだろうがこのまま頑張って強く生きていてほしい。
ベル:ぐ…
この人はなんてどれだけ勝手な事を…
本の神:さて、仕事の話に戻るがお前は現在を持って『本の妖精』の任を解く。
ベル:当たり前です!誰があなたのもとで働きたいもんですかッ!
本の神:それで異動だ。優秀なお前を欲している部署があってな。
ベル:はぁ?
本の神:映像の神の所だ。今から行ってもらいたい。詳細はここに書いてある。
ベル:それはいつ決まったんです?
本の神:お前に過去の記憶を消した事を伝えた直後だから
STAGE 5を終えた後だな。
ベル:何もかも見通していたんですか?
私が反抗するものの指輪を使わないことも!!
本の神:そこまで未来を見通す事など私とて出来ん。
お前が指輪を使って反抗する事を試みる事ぐらいは想定しておいたが
後の事は賭けだよ。
だが、神と言う役職は因果なものでな。
賭けに勝った後も負けた後の事も考えておかねばならん。
今回は賭けに勝った。
その際の事をお前に伝えているだけだ。
お前は何もかも私に踊らされているようで気分が悪いかもしれんが
あらゆる可能性の1つの結果でしかないという訳だ。
で、行ってくれるな?『映像の神』の元へ…
ベル:行きますよ!今すぐにでも!即刻!!
あなたの見える所にいる事ですら耐えがたいんですから!
本の神:そうか…それは結構な事だ。
ベル:私、絶対にこのことを忘れませんからッ!
私を活かした事をいずれあなたに後悔させてあげますから!!
本の神:ああ…楽しみに待っているよ。
ベルは即座に本の神の元から飛び去った。
本の神:ほ…
何とか…やり過ごした…肝を冷やしたな…
ナウシカのごとく、両手を広げて近づけば心優しい『ベル』の事だから指輪の力を使わんと思っていたが…
事故というのは起こり得る事だからな…
おっと、安心している場合ではない。急がねば…
『ベル』は映像の神の神殿に着いた。
ベル:ダメね。怒っていていい顔が出来ない…
ペシペシ!両手で頬を叩く。
ベル:今は心機一転でやらなくっちゃいけないわ。今だけは…
『映像の神』の部屋のドアを叩く。
????:ドウゾ―――
外人っぽいイントネーションの声が扉の裏から聞こえる。
ベル:??
失礼します。
不穏な感じを察知しつつ、扉を開けて中に入った。
映像の神:君ガ本ノ神ノ所デ仕事ヲコナシテイタ妖精カ~イ?
そこに立っていたのは胡散臭いサングラスをかけた男だったが
それは誰がどう見ても『本の神』がサングラスをしているだけのように見えた。
あまりに突然な事態に一瞬怒りを忘れた。だが、再び燃え盛る怒りが湧きたってきた。
ベル:あ…何であなたが!
映像の神:私ハ本ノ神ノ双子ノ弟、『映像ノ神』デ~ス。アナタノ活躍ハ聞イテイマ~ス。ヨロシクデ~ス。
ベル:やめましょうよ。そんな見え見えの演技。寒いですよ。
映像の神:ダカラ私ハ~
ベル:…。(冷たい視線)
映像の神:はぁ…
静かに映像の神はサングラスを置いた。やはり『本の神』そのものだった。
本の神:折角の私の気遣いを無駄にしおって…
ベル:そんな気遣いは無用です!バカバカしい!
本の神:…。人材不足でな…『本の神』でもある私が『映像』の方も兼務しているのだ。
というより私は大元はな。『創作の神』という事でな。
本や映像や絵、様々な創作の分野を取り仕切っている訳なのだ。
ベル:だから、私が赴くたびにアニメの名場面の再現をしていたんですね。
ってそんな事はどーでもいいです!あなたが『映像の神』でもあるのであれば仕事をやめます!
本の神:待て待て。そう焦る事はなかろう。まず仕事の内容を聞くぐらいは…
ベル:あなたの顔を見るのも嫌なんです!ですから、やめさせてください!
本の神:いいのか?そんな事を言って…
ベル:私を脅迫したところで何にもなりませんよ。今の私に怖い物なんてないんですから!
本の神:ああ~。あんな凄い事を知らないでいいなんて人生損するな~。
ベル:そんな気を引くような事を言ったからって…
本の神:お前にとって人生を左右する事なのにな~。
聞きもしないのか~。いや~残念無念。
ベル:どーせ口から出まかせでしょ。
本の神:それを棒に振るなんてな~。
ベル:だから…あなたの言う事なんて聞くつもりはないって!!
本の神:神に対してそれぐらい言えば少しは気分も晴れただろう。
少し聞いていてくれ。
それからの判断はお前に任せる。
ベル:なら初めから自分で言いたいだけなら早く言ってください。
あ!く!ま!で!
仕事の内容を聞くだけですよ。
本の神:はいはい。
でな…単純に映像世界について調査を行ってもらいたいのだ。
ベル:調査?
本の神:どうも最近、映像界で不穏な動きがみられるのでな。
先ほどの『ドリームデストロイヤー』のような存在がまた現れても困る。
その芽があるのなら早急に摘んでおきたいと思ったのだ。
ベル:はぁ…
本の神:その調査に伴いパートナーを付ける事を許そう。コレを持て
手渡されたのは薄っぺらい板状のものだった。
ベル:何です。これ?
本の神:魔法のスマホだ。
このスマホの検索アプリを使う事で次の最適なパートナーの所に連れて行ってくれるだろう。
ベル:前のしおりから何か急にデジタル化していますね。
本の神:道具というのは変わるもんだ。
ベル:でも、コレのアプリでパートナーを決めるって…
それってまさか?
本の神:さぁ?
後はこのアプリによって導いてもらうのだな…
誰になるかは私が知り及ぶことではない。
ベル:そ、そうですよね…私が全く知らない人を選んでしまう事も…ありえ…る。
本の神:そうだ…
だが、今のお前にとって最適な者を選び出してくれるはずだ。
ベル:…
本の神:魔法のアプリと言えど機械的選ぶものではない。
妖精とエスパーとのその精神、気持ち、様々な要因によって相性を決め選び出すものだからな。
何かつながっている者がいるのなら想いが相手を手繰り寄せることも出来るかもしれん。
ベル:想いが相手を手繰り寄せる?
本の神:おっと…今の余計な一言だったかもしれん…
で、この仕事を受けるのか?断るのか?
ベル:やります…
本の神:それは良かった。本当に…
ベル:では…
震える手でアプリを起動する。検索中という文字が出る。
ベル:(お願い…)
アプリ:検索終了しました。
矢印が表示された。
ベル:矢印だけ?住所とか表示されないで非常にアバウトですね。
本の神:さぁ行ってくるのだ!『ベル』よ!映像の世界を平和の為に!
ベル:はい。
飛び立った直後に、ベルはすぐに止まり振り返った。
本の神:どうした?
ベル:本の神様、ありがとうございました。
ペコリを頭を下げた。
本の神:ふ…何を礼など述べているのか。仕事前だぞ。
これからどうなるか分からん。仕事が今まで以上にしんどいかもしれんし
案外、先ほどのアプリが狂っていて最低なパートナーを選び出すかもしれん。
ベル:分かります。
でも、やっておきたかったんです。
後、すみませんでした。
後悔させるような事をするだなんてついさっき…
本の神:後悔はしている。
あれこれ苦労した事が骨折り損にしか思えなくてな。
『アマリ』の記憶など消さずそのまま終わらせてやるのが優しさではなかったのかとな…
ベル:それは本当にありがとうございまず。
しかも今回またチャンスを与えて下さるだなんて…
本の神:もう良い。
私はお前が嫌いなのだ。
あれこれ私がやってきたことを気に入らんと憎み
今となっては『ありがとう』などと手のひら返しをするような気分屋の妖精なんてものはな。
これで暫くお前の顔を見ずに済むと思うと清々しているぐらいだ。
ベル:はい。
では…
再び『ベル』は頭を深々と下げ、柔らかに微笑みながら飛び立っていった。
本の神:ふっ…
調査中に次の妖精を見つけねばならんな。
恋に現を抜かさない仕事に忠実な優秀な妖精をな…
しかし実に回りくどい事をした…肩が凝ったな…
暫く休暇でも取って
良いアニメでも見て良い再現でもしようか…
本の神もまた柔らかな微笑みを浮かべたのであった。
ベルは飛び立ち、アプリの矢印に従う。
それは見覚えのある地域だった。
ベル:まさか?まさか?でも、前の図書館の場所じゃない…どこなの?
すると矢印が差し示したのはマンションの一室であった。
窓が少し空いていたおかげですんなり入れた。
すると、そこにいたのは…
ベル:(ああ…こ、こういう時は、前と同じよう行く方がより感動的になるのよね…えっと…)
少女のサイズになった。
ベル:「映像の世界を調査をするために、あなたの力が必要なのです。さあこれをどうぞ」
『妖精の弓』と『普通のスーツ』を取りだした。
言い終わるとベルは妖精サイズに戻った。
少年:勝手に決めているけど、誰、君?
ベル:私は…(前の私は名前を決めてもらったのよね…けど…)ベルよ。良い名前でしょ?ふふふ~。
少年:いや、『ティンカーベル』から考えれば普通でしょ。
ベル:え?
まぁ…『ベルク・カッツェ』とか言い出さないでよね。
少年:それにしても何で君、そんなに馴れ馴れしいの?初対面でしょ?
ベル:え?あ…
(ま…まさか…本の神が守君の記憶を奪ったと…か?)
それは…守君?
守:ボクの名前を何で知っているの?
ベル:…。
(やっぱり…)
守:って~嘘~!!ベル。お帰り~!!
ベル:!!
(じわ…)
バカバカバカ~!!何でそうやってしらばっくれたのよ――――!(涙)
ドカドカドカ
守:痛い!痛い!痛い!ごめんごめんごめん!
ちょっとした冗談のつもりだったんだよ~。
ベル:こんな時に冗談だなんて酷すぎ!信じられない!!最低―――!!
ドカドカ
ベル:やって良い事と悪い事があるわよ!
守:本当悪かったよ…それに、こういう時はポカポカ殴るもんでしょ。
普通にストレート放ってくるとか…
しかも鼻骨を殴るなんていくら妖精サイズでもすっごい痛いよ…
ベル:ふん!
当然の報いよ!!
守:だからゴメンって…
それにしても、どうしたの?ベル。
『本の神様』から追放されたとか?
ベル:違うわ。私は『本の妖精』から『映像の妖精』になったのよ。
守:はぁ?どういう事?
ベル:私、『本の妖精』から『映像の妖精』に配置替えされたの。
で、その調査でまた私が来て、そのパートナーに守君が選ばれた訳。
守:へぇ~。
守:じゃ、もし、映像の世界がおかしくなったら映像が見れなくなっちゃうわけ?
ベル:そうよ。
守:じゃぁHな映像も?
ベル:ま…まぁ…
守:卑猥な映像も?
ベル:い、一応…
守:いやらしい映像も?
ベル:その流れは必須なの?
守:ゆ゛る゛せ゛ん゛!!
ベル:はいはい…
出来て良かったわね。
守:釣れない言い方だな~。
それにしても現れた時、何で妖精サイズで飛んでないの?
前は飛んでいたじゃない?
ベル:下から覗こうとする人がいるからよ。
守:そういう再現は大事でしょ―が!これから行う冒険でのモチベ―ションが違うんだよ!
ベル:相変わらずのスケベ心ね。
でも、凄く生き生きしてるわね…
守:気のせい気のせい。
でも、ベルも生き生きしてない?
ベル:私は普通よ。寧ろ呆れているぐらいだし
守:本当にそう?何かニコニコが溢れている気がするんだけど
ベル:また、前の苦労をさせられると思ったら疲れから来て顔が緩んでいるだけよ…
ベル:さてっと…
ずっと飛んでいるのも疲れたからいつものフードで休ませてね。
守:いいよ。って、あ…
ベルがフードに入ると何やらムニョっと不思議な感覚があった。
???:いてッ!!
ベル:な、な、何!?フードの中、何かいる!
フードの中を見ると体長10cmぐらいのトカゲのような生き物がいた。
ベル:な、何!この気色悪いの~。守君こんなの飼い始めた訳ぇ?
趣味悪いわよ!
守:あ、そいつは『ギーラサウザン』
ベル:はぁぁぁぁ!?
ベル:ええッ!?どういう事?どうして『ギーラサウザン』が生きているの?
守:僕も『ドリームデストロイヤー』ともどもやっつけちゃったと思ったんだけどさ…
『ドリームデストロイヤー』に攻撃が当たった瞬間に体を小さくして爆風から難を逃れたんだって…
ベル:そうなんだ…
あなたもしぶといわねぇ…
ギーラ:俺様は不死身だ。あの程度で死ぬか。
ベル:でも、体は小さくても『ギーラサウザン』でしょ?
大丈夫なの?危ないんじゃない?
守:あの時、急に体を小さくしたことによって力を失っちゃって
今じゃ、喋る事しか出来ないんだって…
ベル:でも、何をたくらんでいるか分からないから
守君の体の大きさなら踏んづけちゃっても良かったんじゃない?
ギーラ:!?
お前、カワイイ顔してサラリと恐ろしい事を言うんだな。
ベル:それだけの事をやって来たからでしょ。
ギーラ:…。
守:僕も踏んづける事は考えたんだけどさ…
ベル:だったら…
守:いや、ギーラサウザンを生かしていたら、
その内、本の世界の関係者か何かが『ギーラ』を捕まえに来るんじゃないかって思って…
そうしたらベルに会える糸口を探る事が出来る。だから、『ギーラサウザン』を踏めなかったんだ。
ベル:そ、そうなの。私と会う為の糸口ね。///
ベル:だ、だから、会った時そんなに驚かなかったんだ。
守:そういう事。ベルが来た時コイツのおかげかなってちょっと思ったんだよ。
ギーラ:ふん!お前達、俺様に感謝するが良い!
俺様のおかげでお前らは再会できたんだからな!
ベル:でも、態々守君の所に来るなんて…
いい度胸しているわね。
守:エスパーであるボクにくっついていた方がパワーアップするチャンスがありそうだって…
互いの利害が一致していたわけ…
ギーラ:フフフ…妖精が来てまたどこかに行くのだろう?
やはり俺様、考えは正しかったな!俺はツイてる!!
ベル:体が小さいからか声が甲高いのね。目玉の親父みたい…
ギーラ:それを言うな―――!
フン。腹立たしいが仕方あるまい…
だが、いずれ世界は俺様のものになる!
ベル:言っている事は恐ろしくても見た目からして何だか可愛らしいわね。
幼い子供が夢を語るみたいに…
ギーラ:そうそうそう。
ボクの将来の夢はサッカー選手になる事です!
ってなめとんのかワレ――――!!
守&ベル:あ、ノリツッコミした。
ギーラ:う、うるさいな。
お前らの低次元に俺様が敢えて合わせてやったんだ。
あ、ありがたく思え。
ベル:あなた、そういう属性なのね。
ギーラ:属性言うな!
全く…不愉快だ。
貴様ら、俺様が力を手に入れた時は真っ先に消してやる。
ベル:とか言っているけど守君。どうする?
守:僕としては『ベル』と会えたからは『ギーラサウザン』はもう用済みなんだけどね。
ギーラ:え?
ベル:そうね。私も同意見。
派手にやっちゃったら?
ギーラ:待て待て待て待て―――い!
恩人は大切にせんといかんだろ!
『ドリームデストロイヤー』を倒せたの俺様のおかげだぞ…
守:僕あんまり過去の事は振り返らないタイプなんだよね。
ベル:私も~。
ギーラ:やめろ!やめろ!やめろったらやめろ!
守:どーしよーかな~。
ベル:ふふふ…。何かもう『ギーラサウザン』って言うよりギラちゃんよね。
守:いいね!その名前。何だかシリーズで消滅しそうな系統な呪文みたいで…
ギラ:そうそう。『ギラ』はグループ攻撃で最初の方だから使いやすいけど
最強の『べギラゴン』は他の使い勝手の良い魔法に埋もれちゃって見向きもされないから
その内消滅されるという…
ドラクエのギラ系みたいに言うな―――。
2人:ハハハ!!(ふふふ~)
守:そうだ。ベル、その調査をやり遂げたらまた願いを1つ叶えてくれるのかな?
ベル:そうよ。
守:じゃ、予め言っておこうかな?今回はとんでもない奴ですぐには叶えられないから事前予約。
ベル:どんなのを予約するの?
守:じゃ…。う~む…
考え込む守。
守:…。
ベル:どうしたの?急に黙っちゃって…
あの時、言ってくれたじゃないの?それでいいじゃない。
守:願いはそれでいいんだけどさ…
何かね…
あ!!
一緒に言おうか?
ベル:守君の願いでしょ。どうして私が?
守:いいからいいから~。一緒言おうよ。
分かっているんでしょ~。ボクが何を望んでいるのか。
ベル:た、多分…
守:まぁ、違ってもいいからさ。一緒に言おうよ。
守:じゃ、『いっせーの』で言うからね。
ベル:うん…
守&ベル:いっせー…
ギラ:この『ギーラサウザン』を最強にしろ―――!
守:!?
ベル:残念ね。ギラちゃん。
これは事前確認だし、仮に本番だったとしてもエスパーである守君の本当に願いじゃなければダメなのよね。
あなたがいくら横から『ドラゴンボール』の『ウーロン』みたいにギャルの下着おくれ!
って言っても無駄なの。
ギラ:なに――――――!
守:あ、焦った~。これでダメかと思ったよ…
ベル:守君が焦った顔。面白かったわよ。この世の終わりみたいな感じで…
スホマで撮っておけば良かったと思ったぐらい。
ふふふ…
守:これは大事な事だったんだぞ!とても大事な事なんだ!
こんなボクでさえ真剣になるぐらいね!
ベル:こんなボクって…そこまで卑屈になる事もないと思うけど
守:何にしてもそれをそんな風にふざけるなんて…
『ベル』と言えど、酷いよ。
ベル:何、言っているの。
さっき私に酷過ぎる嘘をついたばかりじゃない。
少しぐらい意地悪させてくれたっていいんじゃないの?
守:それはまぁ…本当にごめんなさい。
ベル:本当傷ついたんだからね~。
守:返す言葉もございません。
ベル:ふっふっふ~。(暫く使えそうね)
ギラ:お前、良い性格してんな。俺が言うのも何だがな。
ベル:な、何よ。
ギラ:そんな事でずっとそいつをゆすり続けるのか?
陰湿だな。まさに陰湿。
ベル:陰湿だなんて…
そ、そこまではしないわよ。ちょっとからかっただけ。
それだけよ。それだけ。
守:本当に?ちょっとからかっただけ?
ベル:そうに決まっているじゃない。私だってそこまで鬼じゃないわよ。
守:良かった~。
私を泣かせたんだからお前、一生、奴隷になれとか言い出すかと思ったんだよ。
ベル:…。
私をどれだけ悪魔だと思っている訳よ。
守:妖精じゃなくて天使とか女神ぐらいは思っているよ。
ベル:もー。嘘ばっか~。
守:嘘じゃないって~
…。
ってあれ?何を言うんだっけ?
ベル:お願いを一緒にいうんでしょ。
大事なことじゃなかったの?
ホント、守君ってダメダメね~。
守:そういうボクの至らない所は『ベル』がしっかり修正してよ。
ベル:はいはい。分かりました。お世話させていただきますよ~。
守:じゃ、気を取り直して言おうよ!
ベル:うん。
守:いっせーの…
守&ベル:
2人のまた『新たなる戦い』がここから始まったのです。
それは1人のエスパーと1匹の妖精の夢を叶える為の旅。
あ、更に1匹、新しい仲間みたいな奇妙な生き物が増えたようですが…
[「エスパードリーム2」日記 by 髭人 ~アドバイザー『ベル』の悩み相談日誌~]
完
目次 (リスト)
コメントさんきゅーです。
読んでいただきありがとうございます。
ご覧になっていたのですね。
一覧の方にコメントがあってそれから音沙汰がないので挫折したのかと思っておりましたよ(酷い)
『本の神様』はネタ重視にした結果
あまり仕事をしてないただの偉そうな老害みたいな感じになってしまいましたねぇ…
反省すべき点ですね。ハイ…
後日、この日記の感想について書こうと思いますのでかぶる部分があると思いますのでこの辺で…
前回の「マザー」日記の ウザかったw“ファザー”も良かったけど
今回も威厳があるのか ただのアニメオタクなのか よく分からん“本の神”も最後は恋のキューピッドの様で良かったですw
また次回のプレイ日記楽しみに待ってますよ