髭を剃るとT字カミソリに詰まる 「髭人ブログ」

「口の周りに毛が生える」という呪いを受けたオッサンがファミコンレビューやら小説やら好きな事をほざくしょ―――もないブログ

(小説)美月リバーシブル ~その13~

2012-11-30 18:40:50 | 美月リバーシブル (小説)
2010年12月13日 (月曜日)

採点日。期末テストの答案が全教科返却される。誰もがハラハラドキドキの瞬間である。普段であれば赤点ギリギリで、補習により休みの有無が決まる彼にとってはまた別の緊張感があるものだが今の彼にとってそんな事は些末な問題であった。
『非処女って・・・非処女って・・・』
朝、夢を見ていた。自分から見て夜の美月が走っていた。美月は追われていたのだ。背後に迫る無数の真っ黒い手から逃げていた。自分は叫んでも何も出来ずただ見ているだけであった。必死に逃げる美月であったがやがてその手が追いつかれ多くの黒い手に手や足や体などをつかまれ『倉石さん助けて』と自分に助けを呼びながら黒い影に引きずりこまれるという悪夢だった。朝、思わず叫んでしまった。今まで生きてきた中で最悪の目覚めだった。食欲は殆どなく、パン1枚食べるのが精一杯だった。
「おはようっと」
「よぉ」
いつもの3人に声をかけたら岸がとても乾いた返事をして、すぐに自分達の輪で話をしていた。殆どスルーされるような形であった。だが、そんな事、気にならず自分の席について重いため息を吐いた。
「冬休み、やっぱコミケ行くかぁ?」
普段の岸ならば光輝がこんな様子なら何かしらこちらにアクションしてくるはずなのだがそれもなく背を向けて話をしていた。
「これもまた思い出作りの一つでしょう!」
本島は岸と意気投合しているようであった。糸居はちょっと目を合ったがそれ以上、何も言ってくれなかった。やがて、美月がやって来た。即座に思ったのが
『あ、非処女ビッチ』
何ととんでもない下劣な発想だろうか。すぐに視線を外して自分の顔を覆うと、今朝の夢の映像が再生された。
『待てよ。あっちがビッチでも夜の美月さんの方は無事か。でも、あっちのビッチと美月さんは二心同体。いやいや、そこを考えたらダメだ。そこを考えたら、俺はもう死ぬ!』
一人、脳内で壮絶な戦いを行っていた。夜の美月についてどう捉えるのか?同じ体だから非処女と考えるのか精神は違うのだから別であって処女と考えるのか。その二つの発想が激しくぶつかり合っていた。『ドラゴンリング』のように格闘マンガと考えれば空を飛び、お互い譲らぬ血なまぐさい殴り合い。傷つき、血を吐き、ボロボロになりながらも相手が倒れるまで続く。
思考はギンギンに高まり、歯を食いしばっていた。頭を覆っていたので誰も気付きはしない。そうしてようやく担任が現れた。といっても、光輝はそれどころじゃなかった。
「おい。岸、そこの寝ている倉石を起こせ」
「はーい」
机に伏していたので近くの岸が仕方なさそうに背を揺さぶった。
「ハッ!な、何!?」
光輝は目が充血していて、歯を食いしばって、顔は赤くなって、汗をかき、鼻水も出ていた。
「お、お前、どうした?」
「べ、別に。ハハッ。大丈夫ですよ」
「そうか・・・ちゃんと起きておけよ・・・これから答案の返却だぞ」
担任は気にせずホームルームを開始するが光輝は何も聞こえてはいなかった。今でも思考の戦闘は続いている。1時限目に一斉に各教科返却される。補習などがある際は、答案に何らかの指示が書かれている。大体が、何時に職員室に来いという物である。
12教科中4教科が補習で、数は減っていた。
それでその日は終了で、呼び出しを食らった先生の所にはしごする事になる。意識を何とか保たせてその先生の元へと行く。補習をしたくない先生は大体、課題を出すぐらいなものだ。わざわざ補習をする先生であったとしても態々休みに学校に来させて教室に縛り付けるという半ば嫌がらせみたいな事をさせるぐらいだ。
その帰りに事件があった。全部の先生の所に行ってから戻って来ると教室内で数人が大きな声で話していた。
「良かったね。みっちゃん。アイツと一緒じゃん」
「だから違うって!何度言わせる気?」
日中の美月が何人かの友達とちょっとからかい合っている様子であった。自分には関係ないと、教室内に入ると、一斉に美月以外がこちらを見てニヤニヤしていた。逆ににらみつけて来たのが美月であった。
『何を怒っているんだよ。ビッチが・・・』
「前の補習の日に何かされたの?」
「だから、違うって!」
「それともみっちゃんの方からアタックしたとか?」
「だから~!」
するとクラスの女子の一人がこちらに近付いてきて、話しかけてきた。
「ねぇ。倉石君さ。期末テスト最終日に虹の花パークでみっちゃんと一緒だったらしいけど何で?」
「!?」
『そうか。クラスの人たちにバレていたのか・・・』
朝、少し岸達の様子も変だった理由がそれだろう。
「それは・・・それは私じゃなくて私のいとこ!」
咄嗟に美月は嘘をついた。
「瓜二つって言われるほどそっくりのいとこ。だから、そこのオタのアイツなんかと遊園地なんかに行っている訳だし、私が何度言っても聞かないんだから」
「え?そうなの?倉石」
クラスメートからそのように振られて、美月の方を見てみると物凄い剣幕で睨まれた。口裏合わせをしろというのが明確であった。本当の事を言ったら何をされるか分からないほどの鬼の形相を一瞬送ってきた。
「そ、そうだよ」
一体どこまで知られているのか分からなかったので迂闊なことは答えられない。ダブルデートという事は知られているのかどこを目撃されたのか。それによって答えは変わってくる。
『くそぉ・・・何で俺をトコトン嫌う奴の為になんか・・・』
沸々と怒りが湧いてきた。だが、別の思考も沸いてきた。
『そうだ。コイツと美月さんは別なのだ。別人。双子みたいなもんだ。そうなのだ』
怒りは湧いてくるが、ここで押さえらなければ何もかもおしまいだろう。ここで他の奴らを騙しきれれば日中の美月も少しは見直してくれるかもしれない。そう思うことで、怒りを堪えた。
「へぇ。そうなんだ。みっちゃんのいとことどこで知り合ったの?」
「ただ、ただの偶然だよ。ちょっと前に道を聞かれて。比留間さんと似た顔をしているのに態度が違うから変だなって思ったんだけど、良く聞いたらいとこだって話でさ」
「それで付き合う事にしたんだ?倉石がねぇ。」
「ま、まだ、付き合うってほどじゃ・・・ないよ」
別人扱いにしてしまえば大した問題ではなくなってきていた。
「だったらどうして虹の花パークに一緒に行っていた訳?それってどう考えたってデートじゃない」
「だ、だから、付き添いみたいなもんだって・・・彼女は普段外を出歩かないから、行ってみたいって・・・元々、村川さんとその彼氏と行くって話らしくて俺はそのついでだよ」
「ふ~ん。じゃぁ、倉石は親戚のお姉さんにも少しは好かれておかないとね」
『それは難しい事だなぁ・・・』
その直後、光輝がホラね。といいたくなるような発言を美月がした。
「好きになるわけないでしょ!もう!コイツの顔を見ているとイライラしてくるの!いい加減帰ってよ!アンタ!それにうちにも来ないで!」
「え?倉石君、みっちゃんの家に行っているんだ」
美月がしまったという顔をした。だが、言葉を続ける。
「そう!いとこが家に来るところを付けてうちの場所を知ったらしい!本当、ストーカー!」
『ストーカーか。村川さんの言葉が効いているなぁ・・・俺、犯罪者予備軍じゃん』
「それ、マジなの?」
皆から明らかに気持ち悪がっているようだった。
「付けたって、家の途中までで帰ろうと思ったらその時、そのいとこのお父さんに会って、ちょっとうちに・・・」
「ええ!?両親公認なの?」
「う!?」
周りの反応は明らかに、付き合っているというムードになってしまっていた。光輝はしまったと思いつつ恐る恐る美月の方を見ると再び、鬼のような形相になっていたが、何とも思わなかった。
「ホント、次、あの子に近付いたら殺すから!アンタなんか早く家に帰って大好きなアニメでも見てなさいよ!」
「どうしたの?みっちゃん。これから話が面白くなるところじゃない。普段、ゲームやアニメの事ばっかのオタクの倉石君がみっちゃんのいとこと付き合っている。何か興味ない?」
「だから、あの子に変態的な事をされるんじゃないかって考えただけで鳥肌よ。もうされたかもしれない。ああ!気持ち悪くて仕方ない!」
「親戚のお姉さんからそのように言われているけどそれについてはどう思うの?」
「ああ!もういい!私、帰る!アンタも帰りなさい!」
そのように言って、美月はそそくさと帰っていった。周りの視線は光輝に残り続けた。
「そ、そうだな。俺も・・・帰ろうかな。お姉さんにこれ以上怒られるわけいかないし」
「いいじゃない。みっちゃんのいとこの事をもっと聞かせてよ。そんなに似ているの?」
「いや、だから、本当にマズイから。んじゃ俺も・・・」
バッグを掴み、逃げるようにその場から立ち去った。
『クラス中に知れ渡っていたとはなぁ・・・岸達には裏切ったみたいな形になっているしな・・・それに、好感度ダウンだな』
家に帰って、日が暮れてから電話を入れてみようと思ったが、携帯で『比留間 美月 自宅』という文字を見て固まった。後、指一本、一動作で美月のうちとつながるのだが・・・
『美月さんか・・・だが、ここで立ち止まれるか!』
意を決し、ボタンを押すと短いコール音の後
「倉石ですが、美月さんはご在宅でしょうか?」
「倉石君?悪いんだけど今日は遠慮してくれない?」
「美月、とっても体調が悪いみたいなのよ」
「そうなんですか。お見舞いって訳には行きませんよね?でしたら、ゆっくりしてくださいって言っておいてください」
「分かった。そう伝えておくわ」
母親が出て切った。
『やっぱり、クラスの人にバレたって事が響いているのかな』
少し強引にでもお見舞いに行くって言った方が良かったのかもしれなかった。

12月14日(火曜日)
その日は休みで補習は明日から2日間である。しかし、家での課題は出されたからそれをちゃんとこなさなくてはならない。と言っても、教科書の内容をレポート用紙に写す程度の簡単なものだ。机に向かいレポートを書きつつボーッとしていると何度も日中の美月の睨みが思い出された。ビクッと震えた。昼過ぎに古本屋でようやく『ドラゴンリング』の最新刊まで辿り着いた。
『確かに色々と目を瞑れば面白いマンガじゃないか。これでDRの話題が来ても対応できるな・・・』
魅力や見所の要点を語るのであればネットの掲示板を開けば後は簡単にまとめることが出来るだろう。『話題が来る可能性があるから読む』テスト勉強をしているようで不純に思えた。
家に帰り、夕方に美月のうちに電話をかけると体調が持ち直したという事で行ってみる事にした。玄関のドアを開けると美月がいたのだが、今まで印象が違って見えた。何か一瞬、暗いオーラのようなものが漂っていたようなそんな感じ。
『ぐっ・・・夜の美月さんの方でさえ軽く不潔に見ているな。俺』
「どうかしましたか?」
「いやいや、昨日、調子が悪かったのなら今日も無理しているんじゃないかって思えて」
「今日は元気ですよ」
「本当に?なら良かった。でも、無理はしないでね」
あまりおかしな挙動を取ると勘付かれる恐れがあると緊張した。
「そうだ。昨日の学校での話は日中の比留間さんから聞いた?」
「昨日、アミちゃんはいつもの動画は撮っていなかったので分かりませんし、今日もそんな事言っていませんでしたよ」
「え?」
ショックが大きくて言わなかったのかと思った。黙っておいた方が賢明かもしれないと思ったが口に出してしまった以上、誤魔化すのはかえって不自然だろう。日中の美月が大変だったという事だけを言っておいた。
「私が親戚のいとこで妹みたいな存在ですか」
「どうしても、みんなに秘密を話したくないみたいだね」
「今日もその事は言っていませんでしたし、動画でとっても上機嫌だったんですよ。何かあったんでしょうか?」
「さぁ?それは俺も分からないな」
検討もつかなかった。自分を貶める計画を思いついたなどとは思いたくなかった。
「私が妹みたいな存在」
「そのように言うしかなかったと思うよ。俺が日中の比留間さんの立場ならそうしていたと思うもの」
「どうしてですか?」
それは嫌っているからだと言おうかと思ったが流石に避けた。
「まだ、秘密を話すには早いってね。いきなり、夜の状態の比留間さんをみんなの前に出すのは抵抗があったんじゃないかな。比留間さんが外にあまり出たことがないから可哀想というのもあるのかもしれないし」
言ってみて上手く纏められたと思った。本当はそのような事を考えているのかもしれないとも少しは考えた。
「みんな受け入れてくれると思うんだけどね。俺みたいに」
「そうですよね」
「子供のうちはからかったりいじめたりもあるかもしれないけど、もう高校生だし。後はタイミングだと思うよ。それを迷っているんじゃないかな。いとこのお姉さんは・・・で、良いのかな?」
敢えてお姉さんと言う言葉で美月を区別する事にしてみた。ただ『いとこ』だけでは小春と同じになってしまうからだ。凄く言いやすいし言葉も自然だと思えた。
「お姉さん。アミちゃんがお姉さんですか・・・でも、本当は違うんですよ」
「違う?」
「私、夜に産まれたんですよ。その時、窓の外を見たときに月がとっても綺麗だったからってお父さんが『美月』って名づけてくれたんです。ですから産まれた時間で言えばお姉さんは私の方なんです。それで、私は産まれたときにあまり泣かなかったらしくてお母さん達を不安にさせたらしいですけど、朝になってから元気に大泣きして『ちょっと変わった子なんだろう』って思っていたたらしくて」
「産まれたときからもう違っていたんだ」
「そうみたいですね。朝やお昼ではとっても元気で大変だったけど、夜は大人しかったって長い間、何とも思ってなかったらしいです。夜は日中元気だった分、夜疲れたんだろうって」
何となく、当時の様子がイメージ出来た。前からずっと同じだったのだろうと。
「幼いとき、親戚のおじさんおばさん達が集まって昼から夜まで話をしていたんですが親戚の皆さんにしきりに言われました。あれ?昼の元気はどうしたのって?」
「知らなければそうなっちゃうだろうね」
「子供の頃はずっとそれが辛かったです。皆さん、アミちゃんしか知らないので私になるとみんな大丈夫とか疲れているのって心配して・・・私は元気なのに・・・」
「それは、みんな比留間さんの事を気にかけてくれている証拠だよ。当時は嫌だったかもしれないけど、今はその気持ち、分かるんでしょ?」
「ちょっとですけど」
「それだけ成長したって事だね。さすがお姉さんって所かな?」
「お姉さん・・・ですか」
「この言い方嫌い?」
「嫌いというほどではないですけど倉石さんとは同い年なのにお姉さんって呼ばれ方はちょっと・・・」
「じゃぁ・・・」
迷う。非常に迷う。だが、ここで思い切って一歩踏み込むべきだろう。
「名前で呼ぶのはどうかな?村川さんが言ったようにヨミさんとか場合によっては美月さんってのはどうかな?」
「そ、そうですね。私もそっちの方がいいです」
「じゃ、じゃぁ、俺も苗字でなくて名前で呼ぶのはどうかな?」
「は、はい。私もそっちの方がいいです」
普段よりも力が入っているようであった。美月自身も言い方を変えるタイミングをうかがっていたのかもしれない。
『よっしッ!上手く行ったぁ!とても自然な感じで美月さんの事を名前で呼べるようになったぞ!本当は、諏訪って人が言っていたようにちゃん付けとかで呼ぶのが理想なんだけどな。でも、これは良い前進だ!』
頭の中でファンファーレが鳴った。だが、喜んだのも束の間、急に頭がキンと冷えてくるのを実感した。
『でも、美月さんのこの体に触れまくった奴がいるって事だよな・・・』
心は違えど体は一緒。昨日の悪夢が再生された。
「どうかしました?」
「補習の事、少し考えちゃってさ」
それからはテストの事を話した。自分の成績が悪い事は既に聞いているだろうから見栄を張らず正直に話した。テストや補習の事について認識があまりにも軽いのだろう。彼女は嫌な顔をしなかった。何も知らないだけのようなのでそれはそれでつらいのだが・・・
帰り道で、メールの通知があったので見てみると珍しく糸居からだった。アドレスを聞いていたものの、最初、数回のやり取りと待ち合わせぐらいしか使っていなかったから意外だった。見てみると
『比留間との事。バレたが、平気か?』
無駄も飾りも無い実に彼らしい文章だ。自転車に乗っていたし、帰ったら風呂に入って返信するのを忘れてしまった。

12月15日(水曜日)
その日から補習開始だった。学校に着くとお馴染みの面々がいる。社交的で誰でも気楽に話しかけてくるチャラチャラした奴。簡単に言えば不良と呼ばれる者。倉石のように無口で何を考えているか分からないといわれている奴。後はテスト中、調子が悪かったのか、勉強して山が完全に外れた奴。その中で不良の奴が近付いてきた。
「おい。倉石~。お前、比留間のいとこと付き合ってんだって?」
男女の交際などという話は高校生ともなれば比較的、違和など無く受け入れられるべき話題であるがオタクであると有名な光輝ならば別の話だろう。
「付き合っているってほどではないけど」
「そうなのか?だったら俺の事を紹介してくれよ。可愛いんだろ?すっげー似ているって話じゃん。前、比留間の方は話しかけたらすげぇやな顔されたんだけど、お前と上手く行っている子なら俺と付き合えるべ?な?いいだろ?」
「いや、そういう物でもないと思うから・・・」
「何でだよ。お前、付き合ってないんだろ?だったら何の問題があるんだよ。ひょっとしたら俺のことが好みかもしれないだろ?だからよ~」
「だから駄目だって」
「だから、何で駄目なんだよ。理由を言えよ」
『分かれよ。これだからDQNは・・・』
鬱陶しく無神経に聞いてくるこの男に苛立ちを覚えた。この男もハッキリ言ってこないであろう光輝に対してそれが狙いなのだが。
「ったくよ。冗談で言ってんのによぉ。面白くねぇの。にしたって断るならちゃんと断れよな」
光輝が少しムッとしている様子を見て鼻で笑っているように見えた。その直後に話の中心にいる子が現れた。
「お!比留間~。いとこはあのパッとしないオタ野郎と付き合っているみたいだから俺は・・・」
「付き合ってないし!」
「だったら試しに俺と付き合ってみるのはどうだ?アイツよりも頼りになるぜ!いとこも安心!」
「う~ん。あのへなへな君よりも頼りになっても軽いのよね」
「軽いかどうかなんてのは実際に付き合ってみないと分かんないだろ?何なら試しにいとことではなく俺とお前、付き合ってみるか?そうすれば俺の懐の深さを実感・・・」
「残念でした。私、もう付き合っている人いるんですよ~」
「はぁ?付き合っているって何?誰だよそれ」
光輝は話しかけているDQN野郎以上に驚いた。ガタッと机が震えた。二人が振り返って来た。美月の方はニヤリと笑っていた。
「教えな~い」
「教えないって?それって俺が知っている奴かよ!」
「んふふふ~」
こちらを見ようとしないがわざと聞こえるように言っているのだろう。
ガラッと教室のドアが開いた。
「うるさいぞ。赤点者共、少しは恥ずかしい点を取ったと自覚して萎縮していたらどうだ?」
先生が入ってきてまず、説教。15分間。毎学期同じような事を延々と言い続ける。社会はこんなに甘くないとかこんな事では生きていけないと将来の事を言って最終的にコレはお前達の事を想って心を鬼にして言っているのだとこの話は叱咤激励という事を強調して終わるのがいつも通りである。
「んじゃ、これから課題を配る。終わったら見せに来い」
そう言って先生はプリント2枚教卓の椅子に座って目を瞑った。1枚は日本の年表が書かれておりもう1枚は白紙である。これを書き写せという事が課題である。普段なら、こういった作業は早いのだが、光輝は動揺していて、手に付かなかった。
『まさかそいつが処女を奪った犯人?そうだ。そうに違いない。一体、誰なんだ』
特に悪い事でもないのだが、知らない相手を心の中で悪者と仕立て上げていた。
『で、その彼氏って奴がもし、ヨミちゃんに気に入られたら・・・』
日中の美月もその彼氏を猛プッシュする事は考えられる。となれば、押しに弱そうに見える夜の美月は自分を乗り換えてその彼氏に心変わりするという最悪のシナリオも浮かんだ。
そんな事を考えているうちに続々と課題終了者が出てくる。ハッとして再開すると彼はまだ半分も終わっていなかった。
『長すぎなんだよ日本の歴史~。俺の歴史なんてもう直、終了かもしれないのに~』


NEXT→→→→→→→→→2012.12.07


最新の画像もっと見る

コメントを投稿