仮にAさんとしよう。彼女は私の担当する利用者さんのお一人。九十歳近いので身体はあちこち痛いところだらけだが、頭の方はいたってしっかりしておられる。
「あんた~、先週休みやったなぁ。確かその前には休むとか言うてなかったから、どないしたんやろって思っててんで!」
それくらいしっかりしたお姉様である。
今日も世間話をしながらお姉様のリハビリをしていると、しみじみとこうおっしゃるのだ。
「最近なぁ、 . . . 本文を読む
最近の私、どうも仕事絡みで毒を吐くようである。内容はいずれも許しがたいと思われるような愚行に対する告発であり、抗議であるのだが、周囲から見ると「……よくもまあ、そこまでズケズケと(汗」と思われているらしい。普段が能天気でお気楽なウカレポンチなだけに、そのギャップが強烈なのだろう。
先日も上司から、見学に来た相談員と称する人達へのフィードバックを依頼された。それはいいのだが、一言注釈付き……。
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仕事が始まりました。お昼から訪問リハビリ三件です。本日の利用者さんの平均年齢は約九十二歳といったところでしょうか。三人ともそこそこ長いお付き合いになってきています。六年、三年、三年くらいかなぁ……。大きな機能低下を招くことなく今年もそれぞれお正月を迎えることが出来ました。
しかしながら、どの方も大変な高齢者。来年の正月を一緒に過ごせるかどうかはわからない……。そういう思いを毎年切実に感じます。 . . . 本文を読む
新年度が始まって今年もやって参りました、職場のオリエンテーション。今年から現任者研修会と名前が変わり、会場も市民会館からホテル(!)で開催されました。
さてさて、私が就職(と言うか、非常勤として登録)した当初は療法士が十人くらいのこじんまりした、アットホームな訪問看護ステーションでした。上も下もなく、誰もが知り合いでのんびりと動いていました。
それから早、八年という月日が流れ……。今年の療 . . . 本文を読む
最近よく聞く言葉がある。「早いことアッチに行きたいわ」仕事でお付き合いのある利用者さん達の言葉だ。体調が悪いという事もない。勿論、九十歳前後の高齢の方ばかりなので、あちこちちょこちょこと具合の悪いところはある。認知症の方もある。でもどなたも致命的というようなレベルの不調ではない。
長生きをするという事はめでたい事だと思う。世の中には生きたくても生きられない人も少なくないし、不慮の事故で突然亡く . . . 本文を読む
毎年この時期になるとやってくるのが職場であるデイサービスの「新春かくし芸大会」なのであります。これはですね、あくまで利用者さんを楽しませるための企画であり、職員の娯楽ではない事を最初に明言しておきます、念のため(笑)。
さて、このかくし芸大会、利用者さん達はだいたいカラオケとか詩吟とか、弁の立つ方はご自分の経験談とか、まあ、そういった感じになります。でもこれだけではそうそう盛り上がらない。で、 . . . 本文を読む
突然ですが、カラオケが嫌いです。歌は大好きなので、掃除中もお風呂の中でも、果てはトイレの中でもいつでもなにかしら歌っていますが、カラオケでマイク持って歌うのは嫌いなのです。
何が嫌いかって言うと、だいたい歌える歌がない。流行物にはあまり興味がないため、普段はジャズ、ゴスペル、クラシック、ついでに子供の歌、仕事がらみで懐メロ、唱歌と言ったところでしょうか。そんなだからカラオケに行っても歌える歌が . . . 本文を読む
毎年恒例、職場の敬老お月見コンサート週間です。例によって例の如く、私と相方であるピアノ弾きR女史の担当は水曜日でした。
水曜日は高齢とは言え、非常にしっかりしたお姉様方が多く、唱歌と懐メロだけでは物足りない! で、今年は下記のようなラインナップにしたのでした。
①砂山
②ラストダンスは私に
③東京ブギウギ
④蘇州夜曲
⑤童神
⑥赤とんぼ
アンコールがかかれば
千の風になって
一人で七曲 . . . 本文を読む
職場であるデイ・サービスでは只今盆踊り週間の真っ最中である。毎年、利用者さんに浴衣を着てもらって記念撮影したり、職員が浴衣を着て河内音頭や江州音頭、ご当地音頭を踊ったりするのだ。私もいつもなら浴衣を着て、たおやかに、優雅に河内音頭を踊るのだけれど……。
今年はうちのイベント企画部長の陰謀で、安来節をすることになった。安来節という事は、イコール「どじょうすくい」やないかい!
「安来まで行って、ひ . . . 本文を読む
「売れてますか、本」
たま~に会う人は皆示し合わせたようにこう言うのです。二月に出版した「薔薇の紋章」の事です。
その度に苦笑いしながら、
「いいえ、ちっともダメダメみたいです~」
と、正直に答えてしまう私。
そんなん、あぁた、売れる訳がないじゃないですか。大きな賞を取った訳でもなく、本当にたまたま、降って湧いたような出版話ですから……。前評判もクソもあったもんじゃなくて……。
な . . . 本文を読む
「寂しいねん。甘えたいねんけど、甘える人もおらんねん……」
彼女はそう言いながら、子供みたいに私にもたれてくる。
九十歳をとっくに越えた彼女はとても気丈で、元気な女性だ。それでも年々少しずつ、身体は弱ってくる。思い通りにならない身体と生活に、いつもイライラしている。風邪で寝込んだ後、元気になったがまた少し気弱になったように思う。
週に一回、たかだか三十分ほどの付き合いだが、彼女は私が来るの . . . 本文を読む
それはそれは怖い夢を見た。
利用者さん(実際に担当しているオバアチャマ)の手の指を
一本ずつ動かす訓練をしていると、ぽろっと関節から指がもげて
落っこちた……。
「わあああああああああああああああ」
もげた指持って、オバアチャマをつれて病院に駆け込んだトコロで
目が覚めた。
あ~~~~~~。怖かった。夢で良かった。正夢になりませんように~。
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訪問先のお姉様、御歳九十ン歳。身体の方は九十年も使っていればアチコチ不都合が出てくるものの、頭と心は極めてしっかりすっきり、カクシャクとしておられる。週に一度お部屋にお伺いして、ベッドの上でストレッチや筋力増強訓練なんかをしながら、世間話や昔話(彼女のですよ、私じゃないですよ)で盛り上がる。
さて本日の話題は「最近のニュース」。一日テレビの前にいる彼女は時事にもなかなか精通している。
「ワイ . . . 本文を読む