「安楽死の許可がおりましたよ」
「先生、そんなもん申請した覚えはありませんが」
「おばあちゃんが代わりに申請してくれたんですよ」
2025年、増えすぎた高齢者を減らすため与党の強硬採決で可決された「いつまで生きてんだ安楽死促進法案」が施行された。
「これを飲めば楽に死ねますよ」お医者さんは、薬をおじいちゃんが好きだったワイングラスに入れてかき混ぜた。
「先生、死ぬ前に婆さんと二人っきりで話がしたいんじゃが」
「いいでしょ」、医者は部屋にお婆さんを招き入れた。
おじいちゃんは、新たにおばあちゃんの好きだったシャンパングラスに水を注ぎベッドの脇においた。
おばあちゃんが入ってきた。
「婆さんや、これでやっとわしも楽に死ねる。さあわしが死ぬ前に乾杯しよう」
おじいちゃんは、薬の入ったワイングラスをおばあちゃんに渡した。