思考を促す社会科授業(1)

2011-08-02 | 思考を促す社会科授業
「思考を促す授業」というのは、教師になって十数年
自分が追究している永遠のテーマです。

昨年このテーマについて、メルマガの原稿を書く機会をいただきました。
そして、5回の連載で自分の実践の一部をまとめることができました。

実践の整理という意味も含めて、
(拙い文章ですが)ブログにまとめておこうと思います。



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┃┃ 思考を促す社会科授業(1)
   ー思考を促すとは?ー
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 今夏、新潟県十日町市へ旅する機会がありました。そこでとて
も驚いた事がありました。何と殆どの信号機が縦型だったのです。
 豪雪地帯の信号機はみんな縦型。社会科教師であれば常識の事象
ではありますが、やはり実物に接すれば感動するものです。
 すぐにデジカメで撮影し、「授業でどのように提示すれば、児童
の思考を促すことができるか?」と、教材化に思いを馳せました。
 
 本稿の題にも掲げた「思考を促す」とは、「なぜ?どのように?」
という思考を児童に強く持たせることです。これは、「思考力・判
断力・表現力等の育成」に直結していく大切な要素だと考えます。
 そこで、まずは指導言の吟味から授業を構想していきました。

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「先生は新潟県に旅行してきました。新潟県は雪の重みで信号機が
壊れないように、縦型になっていたのでした。」
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これでは講義型の授業になってしまいます。思考を促すとは言い難
い、単なる説明です。そこで説明から発問に変えることにしました。

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「先生は、新潟県に旅行してきました。新潟県の信号機の多くが縦
型になっていました。どうして縦型なのでしょう?」
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この発問だと、児童に「なぜだろう?」という思考が働きます。し
かし、それでもまだ思考を促すには弱いと感じました。そこで、

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「先生は今夏、ある県へ旅行しました。そこではこの縦型信号機が
数多く設置してありました。さて、何県へ旅行したのでしょう?」
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この発問は、児童に「判断」と「根拠」という二重の思考を促しま
す。実際児童は、信号機の形から「雪国」ということまでは予想し
ました。しかし新潟以外でも雪が多い県は存在します。児童は、言
語活動を通して、降雪量の多い都道府県について議論を始めました。
 そこで、ご当地マーク(今回は「米」という文字)が入ったマン
ホールの写真や県章を提示します。これらの資料を比較・関連づけ・
総合させ、児童の思考を「新潟県」へ収斂させていきました。

 このように指導言の一部を変えるだけで、児童の言語活動も大き
く変化します。「児童の思考を促す」ためには、様々な要素が考え
られますが、今回の例は「発問の工夫」によるものでした。そこで
次回は、「思考を促す発問の条件」について改めて考えてみます。